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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
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リーダーの実力

 猿は片手で木にぶら下がり、器用に行動できる程度には全身の筋肉が発達している。

 そもそも猿に限らず、野生生物は皆、知能を進化させた人類とは隔絶された運動能力を持っている。

 基本的に、動物に対する素手の攻撃は、無意味と割り切った方が賢明なのだ。

 もちろん例外はある。サグやエボットの攻撃などがそれだ。

 しかし野生生物の身体構造は頑丈。人間としか戦闘経験のない二人は、それを見誤っていた。


((なんだ!?))


 二人が同時に感じた違和感、手応えの無さ。

 猿の体に確実に入れたはずの打撃は、どことなく手応えのない、柔らかいものを全力で押したかのような意味のなさを感じていた。

 実際には固かったのだが、空中で柔らかく衝撃をいなした猿。

 そしてそのまま、相手の攻撃を自分の力に変えて拳を当てる。

 エボットの顔面に拳が命中し、強烈なダメージが顔を貫くかのように響いた。

 

「ぐおっ!!」


 エボットが後ろに倒れる。つまり、地面に対して平行になる方へ仰け反った。

 猿はエボットの胸を思いっきり蹴り、肋にダメージを与えながら空中に飛び出した。

 サグは自分の方へ飛んできた猿への警戒度を上げる。


(この猿、頭がいいだけじゃなく瞬間的な判断力も桁違いだ!!)


 サグは腕に電気を発生させる。魔法ではなく、解放させた魔力に攻撃性を与えた、非常に荒い物であった。

 その力は側から見れば音も弾ける電気も、かなりの高威力に見えたのだが、ディオブとイリエルの見解は違っていた。


(あの魔力の集約! なんて荒いの!?)


 二人から見れば、サグの手に宿った電気はひどく荒々しく、通常よりも魔力を多く消費してしまっているのが目に見えてわかる。

 サグの魔力コントロール技術は成長しているが、初めての野生生物との戦闘、そしてエボットがやられている現状。サグの心は平常を保てなくなっている。

 猿に対し、なんとか体を捻って蹴りを繰り出すが躱され、足に取り憑かれてしまう。

 さらに指を足に食い込ませ、めりめりと足を砕こうとしてきた。


「ぐっぐ!!」

(このクソ猿!!)


 サグの体はまだ後ろに流れている。

 そのまま背中から木に激突してしまう。

 衝撃に咳き込むが、それだけでは終わらず、指先に魔力を集め木の幹を掴んだ。

 両手の指で体を支え、全力で足を木に叩きつける。

 木をへし折る程のその一撃の衝撃は、全て猿の体に注がれた。

 太い木の幹の一部を貫通し、猿は手を思わずサグの足を離してしまう。


(ここ!!)


 サグは木を蹴り、猿に向かって全速で飛び出した。

 だが猿は、それを完全に読み切り、飛んできたサグの顎に一撃を入れる。

 サグの脳はそれにより、激しく揺らされて、視界や意識がフラフラしてしまう。

 ぼんやりしたサグの体に、猿は両手を握った一撃を叩き込み、地面へと叩き落とした。

 地面に落ちたサグは、完全に気絶してしまっていた。


「サグ!!」


 テリンが叫ぶ。

 その瞬間にテリンは襲いかかってきた猿を蹴り飛ばした。

 しかしさらにそこへ猿が襲いかかってくる。

 猿は増え続け、仲間たちは襲われ続けて対応に追われ、リーダーらしき猿へ対処する事ができない。

 リーダーらしき猿が、戦う全員を見下ろして、明らかに嘲笑った。


「腹立つ猿ね……」


 イリエルが拳を握り、猿と向かい合う。

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