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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
255/304

猿と人

 現代の科学で理解されている事実。猿と人は祖先を同じとする種である。

 生物研究の過程で、座学を学び始めたイリエルがほとんど初めの頃に知った、間違いのない事実だった。

 そして猿は高い知性を持っている。子供でも知っている常識的な部分。

 まさかそれが、自分たちの敵になるとは思わなかったが。

 リーダーらしき猿と、サグが向かい合った。猿は拳を握りながら歩き、サグの動きをじろじろ観察している。

 サグの方も多少警戒心をあらわにはしているものの、どうにも一歩踏み込みきれずにいた。

 サグは猿の警戒を外さず、チラリと蹴り飛ばされたテリンの方を見る。

 テリンは頭を抑えながらゆっくり起き上がり、腕を振って無事を確認しているところだった。


(テリンは一応大丈夫そう、ガードが間に合ったのと猿も体勢不十分か)


 サグはテリンの無事を確認し、一度胸を撫で下ろした。

 だがその瞬間、視界に捉えていたはずの猿が消えた。

 サグは頭に残っていた心配の感情を全て消し、猿がどこに消えたのかと、頭と目を必死に動かす。

 

(どこへ!!!)


 目と耳、全ての感覚が猿を捉えようとしたその時、後ろから吐きそうな程の強烈な衝撃が襲いかかってきた。


(なっ……後ろ!!?)

 

 動揺しながらも、自分の背を攻撃する猿を、視界のずっと端に捉えていた。

 猿はそのまま、前のめりに倒れるサグの背中を殴り続ける。倒れるたったそれだけの間に。

 サグが攻撃しようと体を捻ろうとすると、それを察知した猿が、サグの肩を踏み台にして空中へ飛び出した。

 魔力を解放し、サグは自身の体を強化。ジャンプで猿を追いかける。

 空中でサグの拳と猿の足がぶつかり合った。体格の違いを最大限に利用し、サグは腕力で猿を押し飛ばす。流石の猿も不完全な体勢で背から木に叩きつけられた。

 

(追撃!!)


 勢い任せにサグは特攻する。そもそも空中に飛び上がっている以上サグにはそれ以外の選択肢がない。

 しかし猿はそれを読んでいたようで、木をするすると滑るように登り、木の枝をサグに投げつけた。

 当然サグはそれを手で弾くが、ブラインド代わりに枝を使ったらしく、猿は一瞬でサグの目の前に接近していた。

 サグの体に取り付き、肩に噛みつこうと大口を開けた。


「きしょいんだよ!!」


 サグは空中で猿を力づくで投げ捨て、体を捻り蹴りを喰らわせる。

 サグの想像以上に綺麗に決まった蹴りで、猿は地面へと再び叩き落とされる。

 その瞬間を狙っていたのはエボットだ。

 猿が地面に落ちた瞬間、その場所をめがけてジャンプし、全力で踵落としを放った。

 ギリギリのところで躱されてしまったものの、地面に跡を残す程度には強力な蹴り。

 猿は空中に逃げてしまったのだが、エボットはそれを完璧に読んでいた。


「おりゃあ!!」


 エボットは空中に逃げた猿にジャンプした。

 サグもその時、同時に木を蹴って地上へとジャンプする。

 二人を直線で結びちょうど中点、それが猿の居る場所だった。

 サグの蹴りと、エボットのパンチが、猿の前後に同時に命中した。


「ギギィ!」

「どうだクソ猿!!」


 エボットは完璧に決まったと確信できる一撃に、思わず粋がるような言葉が出る。

 だが猿はただエボットを見つめていた。

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