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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
232/304

求めていた鍵

 二人が手合わせをした時間は三分程度に過ぎない。

 だがたった三分間にぶつけ合った互いの拳は、体に響いた痛みと衝撃は、お互いの実力と才能を確信するには十分な要素だった。

 立ち上がってから二人は木を背もたれにして座り込む。

 息は上がっていないが、座って落ち着くと攻撃を受けた箇所がさらにじんじん痛くなる。

 腕で主張する痛みに導かれるように自然と横を向く。するとグリアと視線が合って、二人は同時に笑った。


「良い動きですね、本当にただの旅人ですか?」

「いやあ、これでもまあまあ戦ってて、ってかそっちも謙遜の割に実力あるし」

「いえいえ、自分はこれでもまだまだですよ」


 グリアの言っている事は恐らく真実なのだろう。サグもまだまだであることをむざむざと見せつけられたような気分だ。

 しかし伸びを確信したのも確かだった。

 今までであれば対応しきれなかったであろうグリアの連撃も、今の自分ならば捌き切る事ができる。必要な確信はそれだけだ。


「そんなに謙遜してるけど、王兵隊の先輩ってそんなに強いの?」

「ええ、先輩方の攻撃速には手も足も」


 恐らくディオブが今教えてくれている反射の応用だろうとサグは予想した。

 あの日見た王兵隊の動きこそ、今の自分が追うべき存在。今の及ばない壁を破るヒントがあるかもしれないのだ。

 サグの実力は十分であると言える。だが壁を破るためのヒントが見つからない。

 そのために今手合わせに誘ったのだが。もちろん満足いく手合わせだったと言える。だがヒントらしきものは一切見つからなかった。

 

「その人たちに手も足も出ないのはなんでさ」

「まず攻撃速度が全然違います、確か反射の応用……とかなんとか」

(キタ!!)


 サグは心の中で歓喜の叫びを上げた。まさに欲していた情報が来てくれたのだ、喜ばない訳がない。


「それってどういう事?」


 あえて知らないふりをして話を繋ぐ。

 必要のない工作かもしれないが、一応や念の為、というイメージが強い。

 グリアは頭に手を当てて、少し眉間に皺を寄せた。


「え〜と確か……全身に巡らせた魔力……それを使うのだとか」

「魔力を?」

「体をめぐっている魔力そのものに、体が緊張した時に反応するイメージを持たせる、そうする事で体の魔力が相手の攻撃などの緊張に反応し、自在に速度を出してくれる……確かこんな感じだったかと」


 言われてサグも考え込んでしまった。

 グリアはサグがどういう事なのかを理解するために考え始めたのかと思ったが、実際は違う。

 サグはすでに魔力を利用することを掴んでいる。掴めていないのはイメージの方だ。

 どういうイメージを使えば体の緊張に反応してくれるようになるのか、またそれはどういうタイミングで発動すれば良いのか、なまじ魔力コントロールを学んでいるからこそ分かりにくい事だ。


(領域的には魔法じゃなく魔力コントロール……つまり魔力コントロールにイメージを乗せる事で新技法を得るって感じか)


 新しい技法に気づく事が精一杯、今はまだイメージの発言までには至れなかった。

 ふと空を見上げると、空がすでに真っ赤に染まっている。もう日が傾く夕方の時間だ。

 二人は立ち上がり、お互いを見た。


「今日はありがとう、せっかくの休日に」

「いえ、こちらもありがたい学びを得ました」


 二人はそのまま振り返り、お互いの帰るべき方向へと歩いていった。

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