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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
223/304

施設の値段

 雑貨屋を出てからさらに道を島の奥へ奥へと進んだ。

 地図に記されている位置は、観光用に紹介していると思えないほど港から離れていたのだ。

 道中暇そうにしていた島の人間に聞いたので間違いない。

 パンフレットに書いているというのに、三人は最初の数倍は疲れていた。


「はあ……はあ……なんでこんなに離れてるんだ?」


 サグから思わず口がこぼれた。

 何も言わなかったが、二人も全く同じことを思っている。

 奥へ奥へと進んだが、島そのものが今までにないほど広いため島の真ん中から奥へと進んでいるわけでは無い。

 しかし島の中心は高く盛り上がり、従って周囲もまあまあの斜面になってしまって、三人の体力は自然と奪われてしまったのだ。

 体力切れとはいえこの疲れ具合。三人は剥製資料館で働く人たちをある意味尊敬し始めていた。


「ん? あれは……」

 

 少し離れた場所にさ知っている背中を見つけた。

 見て分かるくらい筋骨隆々な背中と、対照的に華奢でありながら高めの身長をした白衣の女性。


「ディオブ! イリエル!!」


 呼ばれた二人は振り返り、三人の存在に気づいてからニッと嬉しそうに小さく笑った。

 

「お前ら! お前らも剥製資料館か?」

「うん!」


 ミラが二人よりも何ほか早く合流した。まだまだ幼いからか、子供の体力というものは際限がなくて恐ろしい。

 二人と合流してからすぐに『剥製資料館』とデカデカと看板を掲げた建物にたどり着いた。

 そして近づいて行った五人は、建物の前に置かれている立て看板を見て、同時に眉間に皺を寄せた。


「「「「「たっか」」」」」


 看板には大人一人5000、子供3000と書かれている。

 建物が一つしかない上に、それほどの展示をできるほど展示物があるとは思えない広さ、眉間に皺を寄せてしまうのも無理ない高さだ。

 

「テリン……今持ってる?」

「全員分お金あるけど……それにしても高い……」


 顎に手を当て立て看板を睨むテリン。

 おそらく頭の中で値段の計算をしているのだろうが、その微妙な顔と少しばかり流れている変な汗が、値段に苦しんでいることを分かりやすいほどに表していた。

 テリンが全員で使う用の財布を取り出し、その中にある札を数え始めた。


「ん? お前さんら客か?」


 後ろの方から声をかけられた。そこには腰が完全に曲がった婆さんと、それの側に立つミラよりも少しだけ年下程度の少女。


「客……ではまあ」


 ものすごく微妙な顔をしてディオブが言った。正直帰ろうかとさえ思っていたところだったので、サグからしても気まずい。

 サグの位置では全員の顔を見ることはできなかったが、多分全員見事に苦笑いをしているだろうことは分かった。

 全員の苦笑いを見た時、婆さんは残念そうな顔をして、下を向いてしまった。


「悩んどるなら入るが吉じゃ」


 杖をつき、五人の真ん中を通って中へと入って行った。

 サグは仲間たちを顔を見合わせた。仲間たちも全員ばあさんの妙な態度が気になったようで、不思議そうな顔をしている。


「あのね……本当に入った方がいいと思うよ?」


 少女が恐る恐るといった様子で言った。

 年上に囲まれれば怖いだろう。


「もうすぐ、ここ閉館しちゃうかもしれないんだ」

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