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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
220/304

雑貨屋で出会う

「あ〜きっつ」


 サグは体を海老のように折った状態で歩きながらそう言った。

 その言葉と姿に、数歩後ろを歩いていたテリンは苦笑いをしてしまった。

 ここ最近はフィジカルを鍛えるための基礎的なトレーニングとフィジカルを応用するための戦闘訓練を繰り返していた。

 午前中に集中的に行われるそれの後は、街に繰り出して世間勉強と観光をしている。

 というよりもさせられている。

 「いろんなものを見るのはいずれ力になる」とのディオブの教育方針? 的な物だ。

 だがただでさえ午前中でハードメニューをこなしているというのに、午後から慣れない場所で観光なんてする気力は無かった。


「しかたないじゃん、経験は力ってのは間違ってないし」


 テリンは少しだけ笑って言った。

 経験が力というのはサグも頭では理解しているが、それでも許容しがたい程に体力の消費が大きい。

 

「運動後にぐったり休むんじゃなく、ある程度動いた方が体に負担かからないらしいよ?」

「にしたってだろ、島自体が相当広いから普通に疲れるってのに」

「それは確かに」


 今度は、同意と疲れの苦笑いを浮かべた。

 ラウドベリオスは今まで訪れた島の中で一番広い。その上で全体を発展させていて、パンフレットにある情報だけでも見れる場所が広く分布していて大変だ。各場所ごとに発展した要素があるのもまた魅力だ。


「エボットは?」

「あの通りより品揃えの良い大きな工具店に行った」

「そのバイタリティ見習いたいな」


 同じトレーニングをこなしているはずなのに、このバイタリティの差は何なのだろうか。

 サグはその正体が趣味への熱量の差だと理解できているが、自分が無趣味なことを暗に認める事になってしまうため気づかないふりをすることにした。

 だが無趣味寄りなのはテリンも同じで、暇人な二人は同じく暇をしていたミラを連れて適当に街を散策している。

 疲れ切った二人と違い、元々お転婆で、子供らしい好奇心に溢れた性格をしているミラには、見る物全てが新しくて面白いらしい。何度も何度も店を覗き込み、覗き込むたびに必死にコチラを呼んでいる。


「二人とも! 見て見て! 面白いの売ってる!!」


 二人の位置からでは、その面白いの、が見えなかったが、はしゃぐミラが可愛かったので少しだけ早く歩いてしまった。

 ミラが見ていたの雑貨屋だった。中には雑貨屋らしく統一性の無い多種多様な物が売られていた。


「何かあるかね」

「さあ、でも悪く無いんじゃない? 雑貨屋だし」


 二人も興味本位に雑貨屋に入って行った。

 中には外から見る以上にさまざまな雑貨があった。

 置かれている物はどう見ても本当に統一性は無いが、それでも混沌というほどめちゃくちゃで無いのが逆に混乱する。

 一応サグも目を引かれるが、疲れのせいか、いつもはミラ以上に旺盛な好奇心を全くと言って良い程刺激されない。

 サグとは対照的に女子二人はキラキラしていた。

 雑貨の中には化粧品もあり、サグからすれば異様な匂いでしか無いが、女子たちからすればテンションの上がる良い匂いらしく、二人はきゃっきゃしながら一つ一つ手にとっていた。

 見ていて微笑ましくはあったのだが、サグの興味は流石に満たされない。

 少し移動して、キョロキョロと辺りを見回す。そして本棚の中に、ある本を見つけた。


「星降る夜の魔法?」


 手に取ったそれは、普段なら興味を持たない絵本だった。

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