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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
211/304

入港手続き

 エボットの操舵技術は一級品にまで成長し、ラウドベリオスへの接岸は想像以上に簡単に成功した。

 もちろん島の保安局の職員による案内もあったのだが、それでもエボットの操舵技術が優秀だったという部分は大きい。

 島の桟橋にサグが降り立ち、新しい船の受付をしている保安局の職員に話しかけた。


「ども」

「船旅お疲れ様です、こちらにサインお願いします」


 保安局の職員からまず渡されたのは誓約書と制約にかかる条件のような物が書かれた紙だった。

 内容は以前アクマンスやエストリテでエボットが書いていたような物とほぼ同じだった。

 一応条件の一つ一つに目を通し、何か怪しい物がないかと確認しておく。

 見れば見るほど”鍵のかけ忘れなど、所有者の責任で船が盗まれた場合港はその責任を一切負わない”だとか”港の使用量を請求する権利が港にはあり、船の停泊者には時間に応じた使用量を払う義務がある”など船を島に止めるための最低条件のような文章で、特にサグが気にするような部分はなかった。

 その中の一文に”犯罪者は停泊する権利を失う”とあった。


(なんだこりゃ、当たり前じゃん)


 サグは常識的すぎる文章に心の中で苦笑いをしながら次の文章を確認した。

 文章を全て見終わり、一番下の部分にサグ・スウィトという名前でサインを書いた。

 一応偽名を使用している。

 職員が名前を確認し、別にある職員欄に自分の名前を書いた。


「はい、これで入港手続き完了です、ラウドベリオスへようこそ」

「どうも」


 職員が人当たりの良い笑顔をして手を出してきたので、サグも同じように人当たりの良い笑顔を浮かべて握手をした。

 

「この島には船がよく来るんですか?」


 サグは港を見渡しながら言った。

 ラウドベリオスの港は島の大きさに見あった規模をしていて、ひっきりなしに船が出ては入ってきている。

 船の豪華さや停泊しているようなデザインから二、三隻島の船が出ているようだったが、それ以外にもデザインがまちまちの船が入港、出港している事から島以外の船も出入りしている事がよくわかった。

 港から見える程度の島の様子も、木々や丘ばかりだったリリオウドとは違い、石造りの家や綺麗な装飾が施された島の様子が見てとれた。

 

「そうですね、自慢になるかもしれませんが、ラウドベリオスはこの近辺の島の中でもだいぶ栄えた島です、そのため観光や、近くの島から遊びに来る人も多いんですよ」

 

 職員が少し照れたようにぽりぽりと頬を掻いていた。

 

(へえ、良い島なんだなここ)


 島の様子からだけでなく、一島民に過ぎないはずの職員の表情から、サグはラウドベリオスの良さを感じていた。

 旅の大きな目的は”果て”に辿り着く事だが、島そのものに対する目的は今大して無かった。

 サグはそういった意味で、これから見るラウドベリオスの街にワクワクした感情を抱いていた。

 職員と話を終えると、船からリエロス号の五人が降りてきた。

 職員はそれに気づくと、愛想よく手を振り、歓迎の言葉をかける。


「ラウドベリオスへようこそ! 皆様を歓迎いたします!」

「すまん!! こっちヘルプきてくれ!!」


 サグ達の対応をした職員が、少し離れた位置にいる職員に呼ばれている。

 どうやら十を超える船を持つ船団に対応し手続きにだいぶ手こずっているらしかった。

 その様子を見た職員は焦り顔で、肩から下げているバッグから急いで地図と、ラウドベリオスの観光案内をまとめたマップを取りだした。


「ではこちらを! ラウドベリオスをお楽しみください! では!!」


 焦った早口で言ってから、職員は素早く走り去ってしまった。

 取り残されたサグ達は、サグが地図を、エボットが観光パンフレットを開いた。


「どこいく?」

「そうだな……まずメインストリートってとこ行ってみるか、一番プッシュされてるとこだし」


 ディオブが少し離れている道を指差した。

 全員がそれにうなづき、港を出ようとして歩き出した。

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