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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
210/304

到着 ラウドベリオス

 武器を手に入れてから三日、リエロス号は空をまっすぐに進み続けていた。

 旅は恐ろしいほどに順調で、気流はじめ、天空生物、空の生き物、小型の浮岩など、様々あるトラブルの要因にすら直面せず、ここまで旅を進める事ができた。

 ある意味警戒してしまうほどの順調さで、船全体を形容し難い緊張感が覆っていた。

 甲板で双眼鏡を握り、サグが遠くを見渡そうとしていた。

 そんなサグにテリンが近づいてくる。


「どう?」

「だめだ、流石に見えないや」


 サグがため息を吐きながら双眼鏡を外した。

 それもそのはずだ。

 朝早いこの時間、少し低い気温の中で、広範囲を覆うほどの真っ白い霧が発生し、リエロス号は寝ている間に霧の中へ入ってしまったのだ。

 その上霧はどこまで行っても濃く、双眼鏡を使っても遠くまで見渡せないのが現状であった。


「あとどれくらいだっけ?」


 完全にダレてしまったサグはしゃがみながらテリンにと言いかけた。


「イリエルの話だと、もう見えてるはずだって」


 食堂から持ってきた袋から豆を一粒取り出し口に放り込みながら言う。そしてサグの視線に気付き、テリンは豆を一粒サグに放り投げた。

 全く見えない現状に少しだけイライラしていると、突然目の前の霧が薄くなっていった。

 サグは勢いよく立ち上がり、テリンはまた豆をつまみながら一歩前に出た。


「「でっか……」」


 唐突に霧が晴れた先にあったのは、今までに見た事が無いほど巨大な島であった。

 今までの島は全て大きさに大差が無く、島の大きさの平均値程度の大きさだと、一般常識を学んだ本の中で知った。

 だが目の前にある島は今まで見てきた物と比べものにならないほど大きう。

 その比率を例えるならば、サグが見上げているディオブと、サグのへその少し上程度に頭のてっぺんがくるミラぐらいの差はある。

 

「呼んでくる!」

「うん」


 テリンが素早く船内に戻り、操縦中のエボット以外のメンバーを呼んだ。

 イリエル意外はその大きさに、二人とほぼ同じようなリアクションを返したのだった。


「すごいな、でかいでかいとは聞いていたがまさかここまでとは」

「リリオウドの何倍だろう……」


 ディオブは想像を遥かに超えていたその大きさに笑い、故郷であるリリオウドしか知らないミラはポカンと比べものになるはずもない故郷と比べている。

 全員が目の前の島ラウドベリオスの大きさに驚きを隠せない中、サグはなんとなく後ろを向いた。

 その時、イリエルがひどく苦々しげな、ある意味恨みさえ感じるような顔をしている事に気づいた。

 サグの視線に気づいたのか気づいていないのか、パッとその表情は消え、みんなに向けるいつもの優しい顔に切り替わった。


「オッケー、じゃみんな、接岸の準備をしよう」


 落ち着き払ったその声は、サグが一瞬だけ見た表情と全く合わず、夢だったのではないかと誤解してしまうほどには遠く離れていた。

 その後、それぞれが武器やらリュックやらの荷物を持ち、エボット以外が集結していた。

 サグは新しい島を前に、好奇心が刺激するワクワクした感情を抑える事ができなかった。


「あっみんな、ラウドベリオスでは絶対に守って欲しいルールがあるんだけど」


 イリエルが全体に呼びかけた。

 ラウドベリオスを見ていた全員は振り返り、イリエルの方を向いた。


「ラウドベリオスに居る間、絶対に生き物を傷つけないで」


 そのイリエルの表情は、戦っている時よりも恐ろしかった。

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