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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
209/304

武器を好み

 フランゴが浮島を去ってから、残された仲間達は手に入れた武器を確認していた。

 昼食を食べてから少しだけ修行をして旅を再開する。スケジュールに従い、リエロス号の六人は甲板に立っていた。

 それぞれの武器がそれぞれの属性をイメージさせる色を薄く光らせ、自分たちの魔力から作り出した武器であることを色で教えている。

 サグは不思議に感じながら自分の剣を手に取った。

 

「えっ……」


 思わず声が漏れてしまった。まるで生まれた時から持っていたのではないかと錯覚する程に手に馴染む剣だった。

 他の仲間達もそうだった。銃を持ったテリンは信じられないという顔をし、エボットは棒だけの槍を持ちながらそれをぽかんと見つめ、ミラは初めての武器である鉤爪をつけて少しだけ腕を振っている。

 武器に対しとてもピュアな反応をしている四人を見て、少し離れた位置に立っている二人は微笑ましくなって笑ってしまった。


「その武器はお前らの魔力から作られた、気持ち悪いほど馴染むだろ?」


 ディオブの冗談めかした言葉に、サグは小さくうなづいた。

 ディオブの言うことが正しいのは怖いほどにわかる。自分の体と変わらない感覚を武器から感じていた。

 

「んじゃ、三十分程度武器ありで動きのシミュレーション、その後本格的に対戦式のトレーニングだ」


 ディオブの指示により、それぞれが武器ありのトレーニングを個人で開始した。

 そして新しい武器を用いたトレーニングに、三十分は短すぎた。

 テリンのまったく見たことの無い形状の武器に、ミラに関しては初めての武器で慣れるまで随分と時間がかかると思っていたが、初めて触った時の手に馴染む感覚に間違いは無く、たった十分でそれぞれが武器の使用に慣れてしまったのだ。

 もちろんフィジカル的な部分が急速に伸びたわけでは無いのだが、武器を持つ事に対する違和感や、緊張感のような物は一切無くなり、自然体で武器を使えるようになっていたのだ。

 ある意味その事自体に違和感があった。

 

「それじゃ、サグとエボット、テリンとミラでトレーニングだ、実践形式でやってみろ」


 向かい合う二人はいつも通り、ただテリンにはある程度制約が儲けられる事は間違いなかった。

 今回の目的は武器を使った戦闘に慣れる事、だがこんな事で怪我をしても仕方ないので、ある程度スローペースでの戦闘、そして魔力禁止のルールが設けられた。


「開始!!」


 合図と共に戦闘を開始し、サグの剣とエボットの槍がぶつかった。

 金属同士がぶつかった甲高い音が響く。そして両者の武器は何度もぶつかり合い、その旅に甲高い音を響かせていた。

 

(凄い……剣を振る行為が日常生活の一部みたいに違和感が無い、重量だってあんまり感じないし!!)

(やべえ、最高だ!! 魔力も節約できるし最高に扱いやすい!! なんだこの最高の武器!!)


 武器をぶつけ合う内に、二人の攻撃速度は徐々に上がり始めていた。

 それに比例するかのように、二人は好戦的かつ楽しそうな顔をし始めていた。

 イリエルはその様子を、お互いにどう扱うか様子を見ながら戦っていたテリン、ミラコンビを見つめながら見ていた。

 イリエルは少しだけ微笑ましそうだったが、ディオブは二人の動きに違和感を感じていた。

 その違和感通りというべきか、徐々に二人の動きは激しさを増し、ついに武器を振る風切り音がした。

 

「まずいな」

「えっ?」


 思わずディオブは立ち上がり、隣に座っていたイリエルを驚かせる。

 ディオブの感じた違和感は正解で、サグの剣からは小さな電気、エボットの槍からは僅かな冷気が漏れ出ていた。

 つまり高揚する気分に比例し、二人の魔力が漏れ出始めていたのだ。

 二人の攻撃がぶつかり合い、動きが止まりかけた二人は一度後ろに飛び退き、最大の一撃を構えたまま走り出した。

 攻撃がぶつかろうとした瞬間、ディオブはその間に割って入り、体を硬化して攻撃を受け止めた。


「ストップだ馬鹿ども、二度目だぞ」


 ディオブの介入で冷静になった二人は魔力を納め、お互いの武器を下げた。


「ほんっと馬鹿だなお前ら、いい加減にしねえとお互いに痛い目みるぞ」


 ディオブは軽い口調で注意していたが、その目は真剣な怒りを内包していて、楽しんでいた二人は流石に反省せざるを得なかった。

 二人の停止に伴い、トレーニングを続けていたテリンとミラも動きを止めた。


「ったく、あとは基礎トレだ、おまえら今日は武器禁止!!」

『えええ〜!!!!』


 ディオブは叫び、四人それぞれの武器を全部回収してしまった。

 そして片付けるために中にイリエルと入った時、表情をひどく真剣な物に切り替えた。


「俺らも強くなるぞ、このままじゃ越される」

「うん」


 真剣な顔の中に、耐え難いほどの焦りを隠していた。

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