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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
205/304

できれば会いたくない。

 修行メニューをこなし、各人で思いつくままトレーニングをこなし、ラウドベリオス到着まであと三日の段階まで旅は進んでいた。

 それぞれの修行はあまり進まなかったものの、それぞれが新しい課題に向かって努力し始め、立ち止まることは無かった。

 そしてこの朝、リエロス号はある程度大きな浮島の前に辿り着いていた。

 よくある岩ばかりでなんの色気も無い浮島で、ディオブの指示の元修行を開始することになった。


「ったく、なんでここで修行しにゃならねんだ」


 エボットが靴紐を結びながらブスくれた顔で言った。

 その言葉に、思わずサグも苦笑いをしてしまう。

 ラウドベリオスへは、今日含め三日で辿り着ける予定だった。だというのにディオブの指示で最低一日は浮島で修行する事になったのだ。不満に思うのもわかる。

 

「しょうがないだろ? やらせたい修行があるって言ったし、イリエルも同意したんだ」

「そーそー、やるっきゃ無いって」


 サグとテリンも準備完了し船室を出た。

 外ではすでに準備を終えた三人が待っていて、ディオブとイリエルは修行の流れを確認しているようだった。

 

「来たか、じゃあ始めよう」


 ディオブの宣言と共に、少し遅れたエボットも含めて浮島へと降り立った。

 まずはウォームアップもかねて、ミラ含めた四人は島の外周を走っていた。走る様子を見ていた二人は全体的な能力の伸びを感じていた。

 そしてただ見ているだけでは無い。ディオブは体内で魔力コントロールを行い、イリエルは大概に出した魔力を自在コントロールできるように操っていた。

 二人のフィジカルとパワー自体は問題ない。だからこそスキルの方をひたすら磨き上げる事にしたのだ。

 イリエルは地面の小石を同時に二つ念属性の魔法で持ち上げ、片方はクルクル回しながら、もう片方は円の動きで回転させ、定期的にそれを入れ替えてコントロールの訓練をしている。

 ディオブの方はまだイリエルほどの魔力コントロールを完成させられていないため、魔力をコントロールして新しく魔法を作ったり、そもそもの魔力ロスを減らそうと努力している。

 

「ねえ、ディオブ」

「ん?」

「来るかな」

「さあな、とりあえず一日居て会えなきゃそこまでだ」


 二人には修行以上に気になる事があった。それは探していた例の商人、フランゴとちょうどよくここで会えるかどうかという問題だった。

 フランゴに絶対的に会う必要は無いものの、空の旅では資材の余裕が必要不可欠、そういう意味でフランゴに会っておきたいというのが二人の考えだった。

 しかし面倒なのでできるだけ会いたく無いというのも本音だった。


「なんか話してんな」

「別に気にする必要ないって、とりあえず鍛えておけば」

「でも気になるだろ?」

「はひ……なんで……そんなに余裕なの」

「が、がんばれー」


 ランニングの後、用意されたメニューに従い、腕立て伏せを開始しながら二人は会話をしていた。

 だがすでに大分走って体力を消費している上での腕立て伏せだ。体力に余裕がある二人と違い、体力が限界を迎えていたテリンは、二人に比べ腕立て伏せのスピードが遅くリズムがバラバラだった。

 そんな三人を、腕立て伏せがトレーニングメニューから外されていたミラが気まずそうに言った。

 筋トレを終えた三人は立ち上がり、息を整えながら次のメニューに備えた。

 そんな時だ。エボットは青い空の少し離れた場所に、妙に目立つ紫色の船を発見した。


「んだあれ」

「どしたの?」

「いやあれ、なんか紫っぽいやつ」


 エボットが少し離れた位置を指差した。三人が同じようにそこを見てみると、確かに妙に目立つ紫色の何かを発見した。


「生き物じゃないの?」

「あんな紫の生き物僕知らない」

「俺も、イリエルに聞けばわかるかな」

「お〜いイリエル!! ちょっときてクレェ!!」


 エボットに呼ばれイリエルが軽く走ってきた。

 イリエルが来る前から指差していたため、イリエルは合流する前から何を指していたのか察することができた。そのせいで気づいてしまったのだ。最悪なものを指差していることに。

 そして見えなくてもわかってしまった、船に乗っている人物が、気持ち悪く笑っているだろうことに。

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