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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
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復讐の始まり

 アリオットは、未だ爽快感に満たされずにいた。

 拳の一撃は恐ろしいほどに完璧に決まった。しかしそこにあるはずの圧倒的な爽快感が無かったのだ。

 今までの戦いの中で、その爽快感を感じなかった事は無い。強者との戦いであれば余計にだ。

 自分の拳を見つめ、地面で寝そべるサグを見つめた。

 そこにある確信に身を委ね、再び拳を硬くした。


「アリオットさん?」

「アルト、警戒を止めるな」


 サグに対し最大限の警戒で応じる。

 攻撃に即座に対応できるような体勢を整え、拳をぐっと握った。

 ピリついた空気にアルトも状況を察し、地面に手を着いて備える。

 二人は恐らく、サグの次の、どんな動きにも対応できる状況であった。

 しかしそれは、盤上の外からは関係ないのだ。

 二人は何かが擦れる様な、違和感しかない音を聞いた。

 アルトが反射的に振り向いた時、自分の首のすぐそこに、まるで刃のような氷を纏ったエボットの蹴りが襲いかかったのだ。

 アルトは同じ様に反射で分厚い土壁を自分と蹴りの間に召喚した。アルトの魔力を複合し強度を高めてある特別性だ。

 しかしエボットにはそんなものは土塊同然だった。簡単にそれを蹴り砕き、裏側にいたアルトに全力の蹴りを食らわせた。

 あまりに重い蹴りに、アルトはそのまま吹っ飛ばされる。

 壁に激突し、壁を砕きながら床に転がった。


(なんだ? 雰囲気が違う……)


 アリオットは瞬時にその異常な雰囲気を感じ取り、警戒対象をサグからエボットに変えた。

 その瞬間だった。

 身体強化を発動したサグはアリオットの背後に一瞬で接近し、納刀体勢からの高速抜剣、居合の構えを作った。

 一切のお手本無し。サグが勘任せに導き出した一番早い技がこれだったのだ。

 身体強化に加えて剣に雷属性の魔力を纏わせ、全力の抜刀を放つのだ。


(まずいな……属性相性、鉄に電気はキツすぎる)


 アリオットは受け切るという選択肢を捨て、小さなジャンプで抜刀を回避した。

 だが空中に浮いた時、アリオットには逃げるための足場が無かった。

 エボットは両腕に纏った氷柱を、全力でアリオットに叩き込む。

 アリオットは硬化した体でその攻撃を受けたが、すぐにその違和感に気づいた。


(何だ!? 一撃の重さが違いすぎる!!)


 体を回転させ威力を逃し、アルトほど吹っ飛ばされる事は無かった。

 しかし硬化させていたはずの鉄の体にビリビリ響くダメージがあったのだ。

 両足での着地に失敗し片膝と片手を地面に突いてしまう。

 ディオブの一撃に迫るほどの会心の一撃。アルトの心は高鳴っていた。


「いいよぉ! 来い!」


 着地した瞬間のアリオットを、サグはソバットで狙う。

 だがアリオットは片手でサグの足を掴み、思いっきり投げ飛ばした。

 投げられたサグはエボットとぶつかる。アリオットはそう思っていた。

 しかしエボットは完全に狙いを見切り、低い体勢から回転し、足を払うかのような動きでアリオットを狙った。

 アリオットは硬化した体で蹴りを受け、エボットの動きが止まった瞬間に立ち上がった。

 まるでボールを蹴るかの様な綺麗なフォームの蹴りがエボットの顔面に迫る。

 だがエボットは両腕でアリオットの蹴りを受け止め、全力で抑え込んだ。


「サグ!!」

(このパワー……やはりエボットも!!)


 投げ飛ばされた後から体勢を立て直したサグは、もう一度、防がれ用の無い速度でソバットを胸に当てた。

 アリオットは立ったままの体勢で後ろに押し飛ばされた。

 痛む胸に手を当て、ニヤリと笑うアリオット。


「楽しいねぇ、身体強化かける2とは」


 目の前に立つ二人が、見たこともない化け物に見えた。

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