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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
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地下道を行く二人

 イリエルとミラは地上の様子を全く知らず、二人で地下を進んでいた。

 すべての民家の地下室はノアガリにより繋げられていたようで、単純なパワーで壁を破壊し進んでいた。

 しかし二人の想像に反し地下の通路は圧倒的に広く、何枚の壁を破壊しようとも道は終わらなかった。

 薄暗い地下の道でイリエルの光属性魔法を使い進んでいる。しかし流石に先の方まで見通す事はできず、警戒に震えていた。

 しばらく走った後、また土の壁を発見した。

 イリエルがそれを叩くとまた空間のある音がした。


「くそっまたか……下がってて」

「うん」


 イリエルが拳を握ると同時にミラは後ろに下がる。

 身体強化を拳に集中させ、足を開いて力を十全に発揮できるように構える。

 そして完璧に体勢を整えて放つ正拳は、土の壁を簡単にバラバラにした。

 細かい破片が周囲に飛ぶ。それはパラパラとイリエルの肌を叩いたが痛みは無い。危険なのは大きなカケラだ。

 大きなかけらはズシンと音を立てて倒れる。幼く身長も低いミラでは潰されかねないほどの大きさだ。


(鬱陶しい、もう5枚目よ……集落の方向からもそこそこ外れてる……)


 イリエルは敵意を全開にしてゆっくり振り返った。

 見つめる先は土の向こうに居るであろうアリオット達だ。


(私たちを離す事が目的? けどこれじゃディオブの解放に対応できない)


 考えを巡らすが合理的な答えは見つからなかった。

 イリエルは気にしなかったが、自分が睨まれたかもしれないと思ったミラは体をびくりと震わせた。イリエルはまだミラを警戒しているのだ。

 狭い空間でイリエルと二人きり。ミラは島に来る直前に聞いていた言葉を思い出していた。

 ”怖い、そして信用できない”

 その言葉からどれだけのショックを受けたか。最悪の記憶としてまるで今聞いたばかりかのように思い出していた。

 

(でも……イリエルお姉ちゃんと仲良くなりたい)


 自分をどれだけ嫌っていようとも、イリエルが自分を助けてくれた恩人の一人には間違い無かった。

 だからこそ、自分が警戒対象で無い事を伝えたかった。ミラに自分を信じて欲しかったのだ。


「行こうミラ」

「うん」


 会話は最低限、両方面への警戒と嫌悪を感じさせる態度だ。

 ミラはちょっと傷ついたが、その心に気づかないふりをしてイリエルに続いた。

 薄暗い地下道はまだまだ続いていた。光属性の魔法を常に使用しなくてはならず、魔力をどんどん消費してしまっている。

 身体強化を並行している事もあってその消費速度は普段と比べ物にならない。


(面倒だ、早く見つけないと)


 イリエルの焦りが強くなっていく。

 そしてしばらく走った時、イリエルは突然体を震わせた。

 ピタリとその場に止まり、壁をコンコンと叩いた。


「ここだ……ここに空間がある」


 イリエルは壁に触れ、ディオブの魔力を感じ取ったのだ。

 ミラは魔力探知を知らずその光景をぽかんとしながら見ていたが、空間があるという言葉から戦闘を警戒する。

 極限状態で自分の力を知ったミラは確実に強くなっていた。

 しかしイリエルはそれを知らない。だからこそ警戒を含めた目線でミラを見て、覚悟を固めるように深呼吸をした。


「ミラ、多分この向こうにはノアガリが居る、戦うことになる、さっきみたいに離れるだけじゃだめだよ……」

「うん、分かってる」

「戦える?」

「頑張る」


 肯定にも否定にもならない努力します宣言。

 限りなく意味のない言葉だったが、実力を示せていないミラからすればそれが最善の言葉だった。

 イリエルはそれに応え、拳を握りさっきと同じ正拳の体制を作った。


「行くよ」


 ミラのうなづきとほぼ同時に拳が壁に炸裂した。

 同じように砕けた先の空間に、お目当ての人物は居た。


「ディオブ」


 そしてその空間に居た男達が、気持ちの悪い視線を、現れた女の子達に向けていた。

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