表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
147/304

新しい銃弾

 サグは剣に電気を纏わせ、全力のダッシュで攻撃を仕掛ける。

 振り下ろした剣をアリオットは腕で受け止めた。鉄属性の魔力で硬化させた腕だ。

 しかしサグの魔力はアリオットの腕を伝い、全身に流れた。鉄は電気を通す。属性相性の問題だった。


「くっ」


 電流を受けたアリオットは、反射的にサグに蹴りを放つ。ギリギリ腕でのガードが間に合ったもの、サグは凄まじい威力に押され、テリンとエボットの元へ戻されてしまった。

 肌に残る赤い蹴りの跡を見て、サグはお互いの力の差を悟ってしまった。


(俺どころか、エボットですらアリオットのパワーには負けてる……けどディオブに比べればなんて事も……)


 ディオブと比べ、力の差を誤魔化そうとしたが、腕の痛みがそれを許さない。

 一連を見ていたテリンとエボットは、アリオットのパワーに驚きながらも、自分たちのやるべき事を理解し始めていた。

 おそらく三人合わせてもアリオットには勝てない。ならば戦える仲間が必要である。勇み足気味のサグを抑えるためにも。

 二人はうなづき合い、すぐに動き出した。


「サグ! スイッチ!」


 エボットはサグの方を掴み、思いっきり後ろに引っ張った。すれ違いざま驚いた顔が見えたが関係ない、腕を氷で覆い、アリオットへ迫る。


「俺が相手ダァァァァ!!!」


 素早さと柔軟性のサグからパワーファイトと防御力のエボットに。

 まっすぐ繰り出された拳はアリオットの硬化された肘に衝突する。

 氷は鉄と肘の威力に負け、ひび割れてしまった。ニヤつくアリオットに、エボットは「それが狙いだ」とばかりに笑いかける。ヒビの修復のためにアリオットの肘ごと氷を張り、アリオットを捕らえた。

 

「ほぉ?」


 サグの時と違い、アリオットは少し面白そうにするだけで、その態度がエボットには面白くない。

 苛立ちを一切隠さず、鳩尾を狙って全力で膝蹴りを繰り出した。しかし想像よりも硬い衝撃が足に響く。服で見えなかったが、腹が硬化した事をエボットは理解した。


「どうだい?」

「小手先!」


 エボットは叫ぶと同時に腕の氷を解除し、全力の回し蹴りを放つ。

 想像外のスピードにアリオットの腕は対処しきれず、こめかみを硬化させてギリギリガードするのが精一杯だった。

 回し蹴りは炸裂し、硬化させたアリオットのこめかみを、エボットの踵は蹴り飛ばした。

 体の端っこにかかった衝撃をいなしきれず、アリオットはごろごろと転がりながら甲板の縁に衝突した。

 全てを見ていたサグは、なぜ自分と交代したのか理解しきれず、次にテリンを見る。


「サグ! 今から新しい技使う! ちょっと時間稼いで!」


 テリンの言葉で状況を察し、サグは周囲のチンピラ達に飛び出した。

 テリンは己の銃を見つめ、改めて自分が得意とする魔法を思い出す。

 銃弾へ魔力をチャージし、そこで自分の属性である火属性でブーストをかける。それだけでは単発の威力しか確保できなかったという事で、蹴り用の魔法を開発するつもりだった。

 しかし今はそうではない。純粋に高めた一発の威力、銃弾の持つ傷つけるのみの力ではなく、破壊を追い求めた魔法らしい力。


(イメージは爆弾……エストリテで見た爆発の魔法)


 ゆっくりと魔力を送り込みながら、記憶にある恐怖をゆっくり思い出す。

 自分が恐れた技だからこそ、最大の威力、その効果性をよく覚えている。


(着弾した場所で爆発するように、全てを吹っ飛ばせる様に)

「死ねやぁ!」

「お前がな!」


 テリンを殺そうとしたノアガリがナイフで迫った。サグはそのナイフを電気を通した剣の腹で受け止める。

 電気がナイフを伝い体に流れ、その瞬間にサグの拳が顔面を砕いた。

 ナイフで迫ったノアガリは鼻血を流しながら倒れ込む。


「テリン! !!」


 迫られた事で集中が乱されたのでないかとテリンを見る。しかしテリンは目を閉じ、自分の魔力とイメージに集中していた。

 自分にかけられた信頼を感じたサグは、ニッと笑いながら走り出した。


(魔力を惜しみはしない……破壊さえできればそれでいい)


 だんだんと魔力が飲み込まれているのを感じた。そしてイメージが形になる感覚も。

 銃口を向ける先はアリオットが指した部屋、両手で銃を支え、自分の魔力に負けない様に構える。


「ああああああああ!!!」


 叫びと共に放たれた弾丸はまっすぐに空を進み、壁へと着弾した。

 着弾の瞬間に、テリンの予想通り爆発が起こり、木片をあたりへ吹っ飛ばす。


「ゴホッゴホッ! なっ何!?」


 爆発の煙の中から、腕に手錠をつけたイリエルが現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ