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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
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潜入作戦

 サグとテリンは木から静かに降りて、下からノアガリ達の様子を確認した。

 上から見た時よりも細かく状況を見渡せたが、対して警戒すべきポイントは無い。見る限りの実力では蹴散らせる程度の実力差も見切っている。

 だが二人の警戒心は少しも緩まない。何故なら数の暴力という物を知ってしまったからだ。サグの方は特に。

 下っ端のノアガリが二人、銃を持ちながらも一切の警戒無くこちらへと歩いてくる。なんと好都合な事に、二人とも帽子を深く被り、髪の毛の色も顔も隠れている。


「やるぞ」


 サグは両手に魔力を集中させ、相手を気絶させられる程度の電気を流した。

 サグの行動に、テリンは一度うなづいて同意を示す。サポートに回るため、足のみに身体強化用の魔力を回した。

 下っ端達が道に入り、船から見えにくい位置に入り込んだ時にテリンが身体強化したスピードで飛び出し、一気に二人を森へと押し込んだ。

 二人は突然の状況に一言も発せず倒れ込み、そこにいたサグに首を掴まれてしまった。


「ぐわっ! ばばばばばばば…………!!!」

「ばばばばばばば…………!!!」


 電気のせいで叫びそうになったが、テリンが咄嗟に二人の口を塞ぎ音を抑える。すぐに二人は気絶した。

 

「ごめんテリン、助かった」

「こっちも予想外だったから結構雑にやっちゃった、大丈夫かな」


 男達は苦しんだままの顔で眠っていた。誰がどう見ても明らかに大丈夫では無い。


「さあ? 気にしてやる必要も無いでしょ」


 サグはドライにその感情を消して、淡々とその言葉だけを語った。

 二人は男達から服を剥ぎ取り、自分の服の上から着込んでいく。気絶させた二人の体格はサグ、テリンとほぼ一緒だったが、わざわざ脱ぐ時間も面倒だ。

 いくら懐を漁っても、個人の名前を特定できる物が無かったのが唯一の不安要素だったが、二人の変装は意外と雰囲気を崩さず完成していた。

 ほぼ同じポーズで銃を構え、お互いに格好を確認した。テリンが少し細身だったのが不安だったが、服の上から服を着たおかげである程度体格が大きく見える。誤魔化しは完璧だ。

 サグは地面に転がっていた石を拾い木の上に放り投げた。投げられた石はちょうど枝に当たり、エボットとミラの意識をこちらに向ける事に成功した。

 エボットはミラを背中に乗せて、大きくジャンプし、サグの元へと降りてきた。

 

「なんっだそのかっこ」


 降りてくるなり二人を指差して爆笑し、草の上を転がっていた。

 二人は自分たちがおかしいことを知っていたので何も言わず、ミラは「あはは」と苦笑いをする程度だった。


「とりあえずこれで潜入する、状況を見てお前も入るか外部で対応を続けるか決めてくれ」

「わかった、俺らは待機だろう、アリオットがくりゃ全力で合流を目指す」


 二人はうなづき、別れて行動を開始した。

 小回りの効く戦闘に優れたサグとテリンは潜入を開始する。

 帽子を深く被り、ノアガリ達の戦艦に近づく。一歩ごとに心臓の鼓動が強くなり、緊張が全身の筋肉を支配していく。

 ちら、と船の周囲を警戒していたノアガリの顔が二人に向いた。二人は自然に頭を小さく下げた。何も問題は無かった様で、二人を見たノアガリは顔を逸らした。

 近づいてみてわかったが、ノアガリ達に会話は無かった。時折業務的な会話は聞こえてくるものの、あまり日常的な、雑談に分類される会話は無かったのだ。


「ノアガリ達って同じ組織に所属してるんじゃないの?」

「さあ……お互いに警戒してるって感じだ……」


 テリンがサグに耳打ちした。それに対する回答がサグの素直な感想だ。

 ノアガリ達は仲間としてお互いに気を許している様には見えず、むしろ緊張しながら接しているようにさえ見えた。会話をしていたメンバーも居たのでその限りでは無い様だが。


「おいお前ら」


 船の入り口を守っていたノアガリから声をかけられた。

 ドキ、と鳴る心臓を無視し、少し俯き気味に声をかけた男を見た。


「なんだ?」


 意識して低い声を出す。これが正解なのか分からなかったが、なんとか誤魔化すしか無い。


「なんだじゃねえ、次はお前らが船の内部の警戒担当だろうが」


 二人は目だけを合わせた。

 なんと幸運だろうか、偶然にも中に入り込めるノアガリを襲撃した様だ。


「悪かった」


 小さく低く答えてその男の隣を通った。

 不審に思われたかもしれないが、入り込めばこちらの物だ。

 二人は船に乗るための階段に辿り着き、甲板へと乗り込んだ。

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