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ゴミ94 達人、次へ向かう

 3月16日。

 ゴッドアで流行している「馬だけ死ぬ病気」への対策として、俺たちはドワーフの少女クと一緒に自動車を開発していた。現代の地球で走っている自動車と比べると、だいぶクラシックというか、単純化しまくった劣化版なのだが、重要なことは病気にかからず運搬能力を維持できることだ。

 小型の試作品での実験と改良を繰り返したあと、荷馬車と同じサイズで作り直してさらに実験したところ、パワー不足や強度不足などの問題が起きたため、タービンエンジンに圧縮機をつけたり、車体強度を上げるために素材を変更したり……そんな工夫を続けること1週間、とうとう車が完成した。


「やったわ! 荷物満載でもちゃんと走る! ちゃんと止まる! 完成ね!」

「これなら馬車の代わりに馬車と同じ仕事をこなせるな。」


 はしゃぐクとアロー。

 だが俺は次の課題に気づいて、慎重に考えていた。


「病気が落ち着いて馬車の利用が再開されるまでの、つなぎとしては十分だろうな。」

「いやいや、それどころか馬車に取って代わるんじゃないか?」

「これなら、それもあり得るわよね。」

「壊れなければ、な。」


 馬車にだって車体には故障がつきものだ。馬にさえ怪我や病気があり得る。当然それは車も同じだ。つまり耐用年数とか経年劣化とかの問題である。

 そうなったときに、誰が修理するのか。そうなる前に、誰が点検・整備するのか。それが次の課題だ。その前に量産しないと普及しないという問題も残っているが、量産できても修理できなければ、壊れるたびに買い直すことになる。それは高く付くから、最初は売れてもすぐに買い手がつかなくなる。


「点検や整備、修理ができる人材の確保か……確かにそうね。」

「なるほど……作って終わりというわけではないな。」

「そういうこと。

 まあ、そのあたりは俺よりも学校の仕事だろう。人材育成のための組織なんだから。」


 クが通っているルマスキー学園は、クの同級生に車の開発を目標として授業をしているという。元々は魔道具の開発者を育てるための学校だが、今年はゴッドアからの要請を受けて馬車に代わるものを開発しているのだそうだ。事実、クが作ったタービンエンジンは風魔法でタービンを回す魔道具である。それ以外は機械仕掛けだが、動力源が魔法なので車全体が魔道具といっていい。動力源が電気なら「電化製品」と言えるのと同じだ。


「ゴミの処理と馬の死体の処理も順調だし、ゴッドアで俺にできる事は済んだな。」

「次へ行くのか?」

「ああ。病気は病気の専門家に任せて、俺はゴミを片付ける。」


 王様から貰った地図を広げて、次の都市を確認する。

 全国20都市を巡り、そのゴミ処理を引き受ける。それが今の俺がやるべき事だ。そういう仕事内容で王様に雇われたのだから。


「次はヒルテンだな。」

「ヒルテンというと、クが通っているルマスキー学園がある都市だったか?」

「そうね。

 私も学園に帰るつもりだし、一緒に行くのはどうかしら?」


 クも、車が完成した報告に戻らなくてはならない。

 というか、そもそも学園の生徒なのだから、本来はヒルテンにいるはずの人物だ。ゴッドアに来ていることが一時的なことなのだ。


「ああ、そうしよう。

 車はクが運転してくれ。操縦になれておくといい。

 俺は俺で別の車を試す。長距離走行に耐えられるかどうか見ておきたいし。

 アローは、どっちに乗るか任せる。」

「浩尉の護衛なんだから、浩尉と同じほうに乗るに決まってるだろ。」


 あ、そういえば、それがあった。


「1ヶ月契約だから、10日で期限切れだ。

 今日は……?」

「16日ね。」

「もう期限切れてるじゃないか。」

「冒険者ギルドで更新してこよう。」


 俺たちは慌てて冒険者ギルドへ向かった。

 そして手続きを済ませて護衛契約を更新したあと、よく考えたら別に慌てることはなかったんじゃないかと気づいて、お互いの顔を見合わせてため息をついた。無駄に慌ててしまった。

 まあ、そんなこんなでヒルテンに向けて出発だ。

5章 完!


明日はキャラクター紹介です。

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