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ゴミ91 達人、エコに再会する

 3月4日、午前9時。

 全国20都市のゴミ処理を請け負うために各地を巡る俺たちは、ゴッドアで「馬だけ死ぬ病気」に対抗するため、ドワーフの少女クとともに馬なしで走る車を作ろうとした。実際に作るのは専門外なので、クに助言という名の知識チートをかましていたら、ゴミ拾いスキルがLV7になった。

 その効果は、収納しているゴミを素材別に融合できる。布きれを1枚の大きな布にしたり、革の切れ端を1枚の大きな革にしたり、くず鉄を集めて鉄のインゴットにしたり。残念ながら形状は選べないようだが、ゴミが一気に資源に変わった瞬間である。

 これを利用して、ゴミとして捨てられた馬車を取り出し、修理して車にする事ができた。馬に接続する部分に布を巻いて、ゴミ拾い用具をサイコキネシスみたいに動かせるスキルを発動。布は雑巾として使えるので動かせる。そして車体は元々ゴミなので、重さを無視できる。そこに俺やアローが乗っても、車輪がついているから回転摩擦は小さい。結果、馬車を馬なしで動かすことができた。

 そして、その翌朝である。食事を済ませた俺たちは、宿を出た。


「どこへ行くんだ?」


 アローが尋ねた。

 クはまだ俺が与えた助言に従って試作品を改造している最中だ。領主にはすでに会って、ゴミ処理場と馬の死体の処理場には手を回してある。つまり、ゴッドアで手を出せることはもうない。


「ダイハーンだ。

 試乗をかねて、エコさんに会いに行こう。」


 徒歩だと7時間かかるが、この車を使えば半分以下で行けるはずだ。





 しばらく走って、ゴッドアから出ると、ダイハーンに入る前のわずかな田舎道で、ゴミを探知した。

 俺のスキルで、俺自身とゴミ拾い用具から半径1km以内のゴミは探知できる。ただし、どんなゴミなのかは分からない。


「アロー。何か落ちているようだが、見えるか?」

「どれ……ああ、倒木だな。

 盗賊の待ち伏せかもしれない。もう少し進んでくれれば……ああ、見えた。やはり盗賊だな。

 止まってくれ。」

「了解。」


 俺は倒木から800mの位置で馬車を止めた。

 アローが車体の屋根に上り、コンパウンドボウを取り出す。

 俺は七味唐子さんから貰った鉢植えを屋根の上へ送った。アローがその枝をむしって、弓につがえると……狙いを定めて発射した。

 遠くで破裂音と悲鳴が聞こえ、白い粒が飛び散った。その白い粒は米なのだが、爆発の威力は普通に殺傷力がある。むしった枝はたちまち再生するから、いくらでも使える。


「……よし、もういいだろう。」


 数回矢を放ったアローは、馬車の屋根から降りてきた。

 念のため手袋を先行させて、倒木をどかし、馬車で一気に通り抜ける。通り抜けるついでにロープを出して、盗賊を縛り上げるように命令しておく。あとは自動操縦だ。

 事なきを得たが……準備しないで出発したときに限って何か起きる。このジンクスは異世界でも共通らしい。やれやれだ。





 そんなこんなでダイハーンに到着。

 時刻は正午。徒歩7時間の距離を3時間で走破した。やはり便利だ。

 招き猫の看板を掲げた猫耳商会へ入る。


「これはこれは、大使様。ようこそのお越しを頂きまして。」


 店長が挨拶に出てきた。


「エコさんは居ますか?」


 ダイハーンの猫耳商会に来るのは、1月27日以来だ。その時は、エコさんがリサイクル業のための拠点探しに出かけていて不在だった。ちなみにバリアという街に拠点を用意する予定らしい。位置的にはメイゴーヤの北だ。


「はい、ちょうど来ておりますので、どうぞこちらへ。」


 と奥の応接室へ通されて、待つ事しばし、エコさんがやってきた。


「お待たせしましたにゃ。なんだか久しぶりですにゃ。」

「そうですね。元気でしたか?」

「おかげさまで元気にやってますにゃ。」

「オーレさんは、その後どうですか?」


 Aランク冒険者オーレ・ツエー・ブーン。剣豪として知られ、最もSランクに近い人物と言われながら、対応できない状況が多くて昇格できないでいた。猫耳商会で魔道具を買って、対応できる状況を増やそうとしていたが……。


「無事にSランクに昇格して、元気にやってますにゃ。猫耳商会もひいきにしてもらってますにゃ。」

「それはよかった。」


 Sランクになるのは、あの人の悲願だったからな。


「依頼をお待ちしてます、との事でしたにゃ。

 せっかくだからSランクでやってるうちに何か依頼するといいですにゃ。」


 オーレさんももうそれほど若くない。Sランクなんて超一流の領域でやっていけるのは、あと1年ぐらいが限度だろう。


「そうですね。ディバイドの時に呼べれば良かったのですが……。」


 あのときは対応を急いでいたから、オーレさんを呼んでいる暇はなかった。


「考えてみれば、これからどんどんダイハーンから離れていくわけだから、あのときに呼べなかったのは大きなチャンスを逃がしたかもしれないな。」


 アローが言う。

 全くその通りだ。


「あとは折り返して北へ向かう時に何かあれば、だな。」

「それで、今日はどのような用件ですにゃ?」

「ああ、それですが――」


 俺は新しいスキルに目覚め、リサイクル技術を代行できるようになった事を説明した。


「素晴らしいですにゃ!

 それなら技術開発を待たずに、先に販路を拡大しておけますにゃ。技術開発に回した資金が、もう回収を始められるなんて、思ってもみませんでしたにゃ。」

「それで、どこに出しましょうか?」

「そうですにゃ……海運業のほうの倉庫へお願いしますにゃ。

 全国の支部にも通達を出しておきますにゃ。どこの支部でも構いませんにゃ。あとはこっちの船で運びますにゃ。」


 そういう事になった。

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