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ゴミ87 達人、ちょっと迷う

 3月3日、午前10時。

 ゴッドアの領主に面会した俺たちは、ゴッドアを襲う疫病について聞いた。馬だけが感染する病気で、感染した馬は死ぬらしい。

 そういうわけで馬車が使えず、メイドの案内で徒歩にて移動。ゴミ処理場と、馬の処分場へ案内して貰った。

 その道中に、メイドとの雑談が始まる。


「馬が使えないとなると、色々困るでしょうね。」

「そうですね。ゴッドアは観光地ですから、街中を走る乗合馬車もありましたし、荷馬車もたくさん走っていました。」

「街の中を、乗合馬車が?」


 アローが驚く。

 乗合馬車といえば、イコール駅馬車と考えるのが一般的だ。街と街とをつなぐ駅馬車。しかし、同じ馬車でも街の中を巡回する辻馬車は、この国では珍しい。


「そういえば、街の中を走る辻馬車は、ここまでには見なかったな。」

「そうですか? 観光に力を入れる領地では、そう珍しくないと聞いていますが。

 いずれにしても、観光客の方々にも住民の皆さんにも、ご不便をおかけしています。とりわけゴッドア以外から陸路で来られる方は、知らずに馬車で来てしまって馬が死んでしまうという事も起きています。領主様も、王城へお呼び出しでもかかったら、どうされるのか……。」

「ダイハーンでは普通に馬車が走っていましたから、ゴッドアを出れば、そこからは馬車が使えると思いますよ。貴族用の馬車を領地の外で保管するのは、大変かもしれませんが。」

「そうでしたか。それならば、とりあえずは安心ですね。

 でも、それ以外にも大変なんです。馬を失った所有者に、新しい馬の購入助成金を計画されていますが、新しい馬まで病気になったら意味がないので……正直不安だという声が、買う側からも売る側からも出ています。

 病気を治療したり予防したりという事も必要ですが、馬を使わずに馬車に代わるものを作れないかという計画もありまして、どちらも西の学術都市ヒルテンに応援をお願いしている状況です。」


 これを聞いて、俺とアローは顔を見合わせた。


「あの少女……。」

「そういう事か。」


 ゴッドアに到着して領主の屋敷へ行く前にぶつかってきた少女、試作品だと言っていた車は、そういう事か。だから自動車より農機に近かったのだ。作ろうとしているものが、トラックではなく運搬車というわけだ。

 だが、そうだとするとタービンを動力機に使うのは、ちょっとパワー不足になるかもしれない。圧縮機もなかったし。あの少女は自分が乗ることで重量物を積載した場合を想定しているつもりだろうが、少女自身がかなり小柄だったからな……実際に荷物を満載したら、動かないかもしれない。現に、俺にぶつかっただけで壊れてしまったし。


「どうする? あの少女を手伝うのか?」

「うーん……俺の知識がどこまで役立つか分からないし……。」


 そもそも俺の領分なのか、という問題もある。俺はゴミ専門の大使なのであって、病気対策や技術開発は専門外だ。あまり出しゃばると、この世界の専門家たちからの反発を生むだろう。とはいえ、すでに実物を知っているというのは、大きなアドバンテージだ。地球の車とこの世界の車を比べれば、その違いから、どのような問題が起きるかを予想できるはずだ。走行テストなんかをやる前に、である。問題が起きる前にそれを察知して対策を提言できるというのが、いかに大きなアドバンテージなのか、社会人なら分かるだろう。ひょっとすると学生でも「先に知っていれば」と思うような経験をしているかもしれないが。


「そうだな、ちょっと王様に聞いてみよう。」


 王様が許可とか命令とかをくれるなら、それを盾にして専門家たちに物申すこともできる。王様に言われたからという建前があれば、少々偏屈で頑固な技術者でも、少しは聞く耳を持つだろう。とりあえず王様に反対意見を述べるために「1回はやってみたけどダメだった」という事実が欲しくなるはずだ。つまり1回は試してくれるはずである。

 逆に王様が許可・命令をくれないのなら、それは俺の領分ではないと割り切ることができる。見捨てる口実を探しているみたいで情けないが。





 ゴミ拾いスキルの効果で、容器をゴミ袋やゴミ箱として使用できる。そしてゴミ袋やゴミ箱は、その機能が絶対化され、絶対にゴミを収納する。すなわちゴミ専門の無限収納だ。そして、収納したゴミは別の容器から取り出すことができる。

 これを利用すれば、手紙を書き損じたかのようにゴミとして捨てる事で、ゴッドアに居ながらにして王都に飛ばしてあるゴミ袋から取り出し、瞬時に王様に手紙を届けることが可能となる。俺専用のホットラインというわけだ。

 この方法はすでに実績があり、王様に手紙を送ると、すぐに返事が来た。


「任せる……か。」

「王様からの返事か?」

「ああ。

 ゴミ処理は俺のスキルを利用したものだから、力が及ぶなら手を貸しても構わないそうだ。」

「なるほど。

 それで、どうするのだ?」

「まあ、貸せるだけの手を貸してみよう。」


 俺たちは、例の少女を探すことにした。

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