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ゴミ83 達人、報告を聞く

 1月30日、午前10時。

 歩き回ること4時間。マッピングが正しければ、すべての魔法陣を破壊した。

 一旦外に出て、状況を確認すると、しばらく前からアンデッドの増援が止まっていたらしい。


「一旦休みましょう。

 見張りを立てておく必要はありますが、遺跡内の調査はまた後日という事で。

 さすがにもう限界です。」


 団長は「人目がなければ今すぐ座り込んでそのまま眠ってしまいたい」といわんばかりの疲れ切った顔で、肩をすくめる動作にさえ失敗してちょっと小首をかしげたような仕草をする。すくめるはずの肩が持ち上がらなかったのだ。


「では、一旦解散ということで。」

「ええ、お疲れ様でした。」


 という事で、事件は一応の落着となった。

 俺はアローの見舞いに出向いた。





 2月10日。

 今日でアローを護衛に雇う契約が満了する。契約更新のために冒険者ギルドに出向き、手続きを済ませる。アローの腕は、もう日常生活に使えるほど治っている。

 まだ完治ではないとのことで、重たい物を持ったり、強い弓を引いたりすると痛いらしい。


「領主にも呼ばれている。このまま屋敷へ行くが、いいか?」

「構わないとも。私は護衛だからな。」


 というわけで領主の屋敷へ。


「このたびのお2人の貢献に、深く感謝します。

 おかげでディバイドの民は、大勢の命が救われました。

 こちらは、些少ではございますが、お礼でございます。」


 と礼金をもらった。

 持ち歩くには大きすぎる金額だったので、猫耳商会に預けることにした。


「ところで、その後の調査はどうなりましたか?」


 尋ねてみると、兵士たちはグレミット遺跡の内部を調査し終わっていた。魔法陣を見て回り、すべて機能停止していることを確認したそうだ。見落としもなかったらしい。


「しかし、魔法陣を仕掛けたのは誰なのか……。

 自然に発生するものではありませんから、犯人が居ることは間違いないのですが、調査結果は『手がかりなし』という事で、犯人について分かることは『あれだけの事をしても手がかりを残さない腕前がある』という事だけなのです。」


 なお、競技場の爆発の調査には、もう少し時間がかかるらしい。破片や瓦礫を1つずつ調べているが、数が膨大で調査が終わらないそうだ。






 3月1日。

 アローの腕はすっかり治って、リハビリも終わり、元通りの筋力を取り戻していた。弓矢の腕前も元通りだ。練習場がないから、海岸から海へ向かって練習して貰った。的は、俺が舟をゴミとして扱い、ゴミ拾い用具で運んで、その上へゴミで作った的を立ててやった。

 この時になって、わざわざオールで漕いで進まなくても、棒なり手袋なりで掴んで運べば自動操縦みたいにできると気づいた。もっと早く気づいていたら、ニアベイで川を渡るときだって、漕がなくて済んだのに。けどまあ、それ以来出番がなかったから、ここで気づいたのは早いほうだと思っておこう。


「もうお2人ともすっかり我が家の一員ですが、この報告を伝えたら次の街へ出て行ってしまうのでしょうな。」


 と、この1ヶ月ほど世話になり続けた領主が、ちょっと寂しそうに言う。

 宿代や食事代が浮いたし、アローにも毎日回復魔法をかけてもらって、とても助かった。

 で、その領主の報告というのが、競技場の爆発についてだ。

 調査の結果、ある選手が不正を企み、中古の樽を使ったらしい。つまり俺が見た「急に光り出した樽」のことだ。破片を調べたところ、大手の酒屋で使われていたものだったと判明した。要するに、過去の優勝者の作品をそのまま今回の自分の作品として出してしまおうという不正だったようだ。

 だが、爆発の原因は、中古品だったからという事ではない。たとえ付着していた中身に引火したとしても、酒に含まれるアルコールが炎色反応を起こして青い炎が出るだけ。そもそも付着程度の量で競技場が吹っ飛ぶほどの威力は、どんな爆薬を使ったって出ないそうだ。


「あの巨大な競技場を木っ端微塵にするほどの威力ですからね……。」

「ええ。おそらく爆発する魔法の罠が仕掛けられていたのだと思います。

 それにしても、あの威力というのは、並大抵の術者ではありませんが。」

「並ならぬ術者……遺跡に魔法陣を設置したのも、痕跡を残さない並ならぬ術者でしたね。」


 同じ「並ならぬ術者」が、同じ時期に2人いっぺんに同じ都市で破壊活動を起こすなんて偶然があるだろうか。同一犯。あるいは仲間同士として結束している複数犯だろう。


「推測ですが、不正を企んでこの中古の樽を使った選手というのも、樽を爆発させるための捨て駒として使われただけではないかと思います。

 つまり、アンデッドの発生と合わせて、ディバイドに対する2重のテロ攻撃ということです。実際、大使殿がたまたま来ている時でなければ、ディバイドは陥落していたでしょう。」


 領主も俺と同じ考えのようだ。

 事件は未だにスッキリ解決とはいかないが、ここから先は俺の領分ではない。それに、俺は俺で次の街へ向かうべき仕事がある。アローもすっかり回復し、受けた影響をとりあえず分かるところまで知った以上、もうディバイドにとどまる理由はない。

 つまりは、領主が言ったとおり、この報告を聞いたら街を出るのだ。

 長く世話になったので、念入りにお礼を言って出て行くことにした。

第4部 完!


明日はキャラクター紹介です。

明後日から第5部を始めます。

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