表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/245

ゴミ08 達人、とりあえずゴミで検証する

 街の外、川の近くのキャンプ地へ戻る。

 キャンプに使った道具を取り出して、検証してみることにした。とりあえずナイフだ。これがチート化されたら、他の道具のチート化から考えて「絶対に切れる」とかだろうな。革の鉄格子に引っかかっていたゴミ――植物の束を取り出して、それをナイフで切断してみる。


「んんっ……!? むむむっ……! ……あれ?」


 切れなかった。

 植物の束まで道具扱いになっているのだろうか? でも植物の束が道具扱いになっても……あ、ロープの親戚みたいに判定されていたら「絶対にちぎれない」とかのチートになっているかもしれないな。

 体から離すとチートが解除されるみたいだから、生えている木に切りつけてみよう。


「こいつにするか。むうっ……!」


 適当な木を見つけて、幹にナイフを押しつけてみる。

 だが、全く切れなかった。

 どうやらナイフはチート化していないようだ。


「……ん~……? チート化する物としない物がある……? それともチート化する条件があるのか?」


 そういえば、手作りの着火装置は着火するのに2時間かかったな。まったくチート化していない。チート化していたら、すぐに着火してもよさそうじゃないか。

 それに、釣り竿もだ。1匹釣るのに1時間かかった。チート化していない。チート化していたら、もっと入れ食い状態になってもよさそうなものだ。


「……逆に、これはどうなんだ?」


 火ばさみを手に取る。この火ばさみはすでにチート化していて、火の玉を掴めることが分かっている。ならば別のものは掴めるのか? そう、たとえば、川の水とか。


「ええっ!? こ、こうなるのか……。」


 川の水を、1本の紐のように持ち上げてしまった。重力を無視して川の流れが空中を通り、火ばさみに挟まれて持ち上げられた部分を頂点にして、再び川へ戻っていく。

 火ばさみから力を抜くと、川の流れが重力に従って地面へ落ちた。


「マジかよ……。」


 信じられない光景だったが、おかげで逆にちょっと冷静になれた。

 それに、今ので分かった事もある。

 チート化するのに条件は必要ない。チート化する物は持っていれば常にチート化するし、チート化しない物は持っていてもチート化しない。考えてみれば、ゴミ袋はずーっとチート化したままなのだから、やっぱりそういう事なのだろう。

 という事は、次に、チート化する物としない物との境界線をハッキリさせる必要がある。

 でも、これは予想がついた。ゴミ拾いLV2の効果でチート化するのだから、ゴミ拾いに関係した物しかチート化しないのだろう。作業服はちょっと関係ない気もするが、20年近く作業服でゴミ拾いをしてきた俺からすれば、「作業服=ゴミ拾いの正装」である。ゴミ収集業者も作業服なんだから間違いない。

 そうすると、タオルがどうしてチート化したのか分からない。ゴミ拾いには関係なさそうな道具だ。まあ、敢えて言うなら転移前から使っていたゴミ拾いのときの装備ではある。他にも、マスク代わりに使えば細かいゴミを拾えるし……と、そうか。タオルは汗と一緒に体についた汚れも拭き取る。汗は体から出てしまえば汚れの一種に過ぎない。そして汚れとは、ゴミの1つである。つまりタオルはゴミ拾いの道具だ。

 しかし、さすがに水筒はチート化しないだろう。水分補給は体調管理に必要だが、直接的にはゴミ拾いには関係ない。靴がチート化するかどうか微妙なところだ。長靴だったらチート化するかもしれないが、今履いているのはスニーカーだ。このほうが動きやすいからな。

 それに、火ばさみの効果は「絶対に挟む」だけでなく、「絶対に持ち上げる」とか「絶対に拾い上げる」とかの効果もあるようだ。そうでなければ、川の水なんか重くて持ち上がらないだろう。それが全く重さを感じないで持ち上がったのだから、そういう事だ。

 だとすると、これは結構強いのではなかろうか? 無敵状態に加えて、魔法でも何でも掴んで投げられる。攻撃力に若干の不足はありそうだが、弱点の頭部だけ守れば負けはしない。


「……いやいや……。」


 ため息をつき、首を振る。

 何を考えているんだ、俺は。これはゲームではない。死んだら本当に死んでしまう。頭さえ攻撃されなかったら無敵だからといって、紛争地帯へ行ってみようとかフランス外人部隊に入ってみようとか、そんな事は思わない。異世界だって同じことだ。わざわざ危険を冒す必要はない。


「……とはいえ……。」


 冒険者らしき連中がいることは確認している。言葉さえ通じれば、現金収入を得るために冒険者をやってみるというのも、1つの手ではある。まあ、そう簡単に冒険者になれるかどうか分からないが。日本では猟師になるのに罠や銃の免許をとらないといけない。この世界だって、冒険者になるのに何か試験とかあっても不思議ではない。


「……いよいよ言葉が問題だな。」


 結局そこだ。言葉さえ解決すれば、危険を冒して冒険者になるまでもなく、どこかの店で安全に働くことだってできるはずだ。逆に、言葉が分からないままでは、冒険者にもなれない。せいぜい自分で狩った獣を自分の食糧にするぐらいだが、それだって日本のように無免許でやったらダメみたいなルールがあったら大変だ。

 そういう意味では、釣りだって本当は危ない。釣ってはいけない時期だったり、釣ってはいけない川だったり、釣ってはいけない魚だったり、そういうのがあるかもしれない。そもそも釣りに免許とか納税とか手数料とかが必要な可能性だってある。


「ままならねぇな……。」


 やはり安全を確保するためにも、言葉を覚えるのが重要課題だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくれてありがとうございます。
楽しんでいただけたら、幸いです。

「楽しめた」と思っていただけたら、上の☆☆☆☆☆をポチっと押していただきますと、作者が気も狂わんばかりに喜びます。
バンザ━━━┌(。A。┌ )┐━━━イ!!

「続きが気になる」と思っていただけたら、ブクマして追いかけていただけると、作者が喜びのあまり踊りだします。
ヽ(▽`)ノワーイ♪ヽ(´▽`)ノワーイ♪ヽ( ´▽)ノ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ