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ゴミ65 閑話 領主の弟

今回は短めです

 私は領主の弟。64歳。

 ダイハーンの現状を憂慮している。なぜなら、ダイハーンでは汚職がものすごいのだ。

 たとえば天下り。

 天下りの始まりは、とある外郭団体が定年退職した文官を幹部職員として迎え入れた事だった。その効果は絶大だった。監査員は領主の下にいる文官だから、天下った文官は監査員の先輩だ。その外郭団体に問題があっても、先輩が幹部職員になっているとあまり強く言えない。少々の事は見逃して貰える。たとえば1つ1つの小さな記録ミス。だが数が多ければ合計金額は大きくなる。

 そうやって不正にもうけた金の一部を、天下った幹部職員に謝礼として与えると、この幹部職員はその意を汲んで次の監査員にも見逃しを要求する。飴と鞭というか、幹部職員から監査員に「お土産」を持たせる事があったようだ。

 こうして悪のサイクルが始まった。もちろん、これを知った別の外郭団体も真似をする。商業都市としてダイハーンは多くの優秀な商人を呼び込んできたが、その金儲けの才能は、よくない方向にも成長してしまったようだ。


「兄上も、最初はあんなに熱心だったのに……。」


 天下りの実態を知った当初は、兄上も正義に燃えていた。このまま監査が機能しなくなっていくと、ダイハーンは腐敗してしまう。いや、すでにだいぶ腐敗している。ダイハーンを浄化するのは自分たちだ。兄上とそんなふうに語り合った頃が懐かしい。

 それがいつから、こうなってしまったのだろう? 今や兄上は腐敗した側に回ってしまった。


「はぁ……。」


 ため息しか出ない。

 ……と、廊下から足音が聞こえてきた。この歩き方は、執事の……えーと、名前はなんだっけ? この国の人々は本当に名前が長い。たぶん執事も私の名前を覚えきれていないのではないだろうか。

 間もなく足音はドアの前で立ち止まり、ノックが聞こえてくる。


「入れ。」

「失礼します。」


 執事はいつも通りに入ってきてドアを閉め、それから慎重に周囲を探るように視線を動かした。

 この部屋にも監視がついているか、気配を探っているのだろう。私もそのあたりは気を遣っている。屋根裏などの人が入り込めそうな隙間には、紙を丸めて大量に詰め込んである。無理に押し入ればガサガサと物音がするし、音を立てないように慎重に取り除くとしたら時間がかかるから、毎日チェックさせているが、今日も異常なしだ。


「どうした?」

「旦那様、新しい情報が入りました。

 廃棄物処理特務大使の五味浩尉騎士爵が、ダイハーンに入り、領主と面会したとの事です。

 現在は廃棄物処理センターへ向かっていると。」


 ああ、半月ほど前に国王陛下が新しく任命して作った役職だったな。


「その大使は、たしか近衛騎士団と同等の扱いという……?」

「はい、その大使でございます。」


 であれば、国王陛下に直接報告できる立場ということだ。


「チャンスだな。

 接触を図れ。」

「大使にはおそらく監視がついていると思われますが?」

「構わん。それで終わればそこまでの人物……だが、そうはなるまい。」


 例の大使は、キオートでスタンピードに対処した。数百の魔物を1人で葬り去る戦力だ。10人かそこらの諜報部隊に襲われた程度でどうにかなる相手ではあるまい。


「かしこまりました。」


 執事が一礼して部屋を出て行く。


「……兄上。あなたの政権はもう終わりだ。」


 私が引導を渡す。

 私が、間違った道へ進んでしまった兄上を救うのだ。

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