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ゴミ62 達人、川を下る

 1月18日。チョーオーカーを出発した。次に目指すのは、商業都市ダイハーンだ。商業港として発展した港を有する巨大な港町であり、王様にゴミ処理を頼まれた全国20都市の1つでもある。そして、オーレさんが魔道具を買うために目指している目的地でもあり、さらにもう1つ。


「猫耳商会の本店がありますにゃ。

 チョーオーカーからは、ダイハーンまで続く川が流れていますにゃから、猫耳商会の船に乗って川を下っていくと楽ちんで早いですにゃ。」

「なるほど。それはいいですね。

 ちなみに徒歩だと……?」


 オーレさんを見ると、オーレさんは深くうなずいた。


「30km以上ありますからな。7時間……休憩を含めて8~9時間かかるでしょうな。」


 なるほど、遠い。


「陸路でも川沿いを進むことに変わりはないはずだ。」


 アローが言う。

 確かに、川沿いには道があるものだ。水を確保しやすいし、魚をとって食糧にもできるし、川沿いには自然と道ができる。その川を下ればダイハーンへ行けるというのだから、陸路でも同じ川の川沿いを通ることになるわけだ。

 ニアベイで手に入れた小舟を使う手もあるが、手こぎで数時間もかかるとなれば、水流に従って流されるままに進むだけといえども、徒歩と変わらないほど疲れるだろう。


「よし、猫耳商会のお世話になろう。」





「これは会頭! ようこそお越しを。どうされましたか?」

「本店へ戻る途中にゃ。荷物のついでに乗せてほしいにゃ。」

「どうぞどうぞ。そちらのお連れ様も?」

「「よろしくお願いします(する)(ぞ)。」」

「客船ではありませんので、乗り心地はアレですが、どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい。」


 と、そんな感じで猫耳商会の貨物船に乗せてもらう事になった。

 その貨物船は、竿で川底を突いて船を押し進めるタイプで、人間なら詰めれば20~30人乗れそうな大きさだったが、帆などはなく、従って「船」というより「舟」といったほうが正しい印象だ。時代劇で江戸市中の川を往来する舟、あれを数倍大きくして何十人か乗れるようにした感じである。

 そして、竿で川底を突いて進めるということは、この川の流れというのが、非常に遅くて、ほとんど流れていないようにさえ見えるものだ。マジで自分の小舟で漕いで行こうとか思わなくてよかった。川の流れに任せていても、あまり進めなさそうだ。


「平たい地形のせいか、流れが非常に穏やかですね。」

フローレス(ながれない)川なんて呼ばれているぐらいですからにゃ。」





 昼近くになり、船員が急に慌ただしくなった。

 昼飯の準備かと思ったが、そうではなく、水面が波立っている。


「魔物だ!」


 船員たちは弓矢を手にして配置につく。

 弓矢ならば、と俺とアローも戦線に加わる。

 アローは相手が動いていると命中精度がゼロになるが、今回は七味さんからもらった爆発する矢がある。手持ちぶさたになるオーレさんに、鉢植えから矢を収穫してもらうことにした。


「そこっ!」


 アローが狙いを定めて発射。矢は魔物を外れたが、水面に命中した瞬間に爆裂し、米が破片手榴弾のごとく飛び散る。この飛び散った米を、ほとんど至近距離で喰らって、魔物は撃沈した。


「おお! これはいいな!」


 動く標的にもダメージが入る。汚名返上できそうな予感に、アローが興奮している。

 俺も弾倉に矢を補充して、連射式ボウガンに装填した。弾倉に矢を補充するところまでは先に済ませておいた分もあるが、それはもう撃ち尽くした。ちなみに爆発しなかった。植物だから鮮度が重要なのだろう。収穫してから時間がたったものは、着弾しても爆発しないらしい。

 だが新しく収穫した矢は、撃つたびに爆発し、次々と魔物を倒していく。


「うははは!」


 ちょっと力に酔っています。

 グレネードランチャーを連射する感覚だ。FPS・TPS系のゲームでは、どうしてもこの脳筋スタイルが好きでたまらない。遮蔽物に身を隠している敵へ、その遮蔽物のすぐ横を狙って吹き飛ばした時など、思わずガッツポーズしてしまうほどだ。これがあるからマシンガンやガドリングより、グレネードランチャーが好きなのだ。

 気がつくと、船員たちが手を止めてポカーンとしていた。

 魔物? なんか死んだ魚みたいにプカプカ浮いて流れていきましたが? 緑色の魚に手足が生えたような奇妙な姿のやつだった。放っておけば死体は魚の餌になるらしいが、人間にとっては利用価値がないとのことだ。ゴブリンもそうだが、利用価値のない魔物って、どうして緑色なんだろう?





 午後になると、フローレス側の河川敷の向こうに建物が見えるようになってきた。


「このあたりから、いよいよダイハーンですにゃ。」

「河川敷が広いですね。」

「堤防もあるな。街まで見通せない。」

「このあたりは平坦な土地ですからな。」


 そこからさらに2時間近く川を下っていくと、左手に城が見えてきた。

 また左手方向にフローレス川の分流が見えてきた。ちなみに、流れ込んで合流する川を支流といい、流れ出て枝分かれしていく川を分流という。支流から水をもらって分流へ水を流す本体の川を、本流という。フローレス川はチョーオーカーの南あたりで3つの支流が合流している地点から始まり、海へ注ぐ河口で終わる。

 スタート地点よりも上流は、3つとも別の名前で呼ばれている。一番西側を流れる川はキオートの北西にあるゴミ処理場の盆地のほうから流れてきて、キオート西を通っていく。よく川の上流にゴミを捨てようと思ったものだ。

 中央の川は、キオートの北の山(スタンピードで魔物が出てきた山)から流れてきている。キオートの東を通ってフローレス川へ合流する。結局この川の上流にもゴミが捨てられていたわけだから、キオートの水はだいぶ汚染されていたことだろう。

 一番東側の川は、リュート湖から流れ出る唯一の川だ。リュート湖に流れ込む川は複数あるが、リュート湖から流れ出る川はそれ1つしかない。そしてこの川も、キオート北の山に捨てられたゴミが魔物に運ばれてリュート湖に捨てられ、そのゴミで汚染されていたわけだ。

 改めて、ろくな事してなかったな、あの領主は。


「会頭。この舟はグレート川へ行きますが、どうしますか?

 本店へ行くなら途中で降りるほうが早いかと思いますが。」

「構わないにゃ。城にも用があるから、先にそっちから済ませることにするにゃ。」

「分かりました。」


 と、そんな船員とのやりとりがあって、舟はフローレス川から分流へ進む。


「グレート川?」


 サイズ的にグレートなのは本流のフローレス川なのだが……。


「グレート川は、あの城へ物資を運ぶのに使われていますにゃ。」

「なるほど。そういう意味でグレートと……。」

「ていうか、このまま舟で城まで行けるのか?」

「五味殿のお役目からすると、このまま城まで行けるのはありがたいですな。」


 言ってる間にも、ぐんぐん城が迫ってくる。

 水面に座ったような高さから見上げる形になるわけだ。このローアングル……迫力がすごい。

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