ゴミ60 達人、計画する
説明長いからカットしてあとがきへ、とか書いたまま編集せずに投稿して、しかも気づかないまま2か月も放置していた……。なんてこった。
11月11日に気づいて修正しました。
考えはしたが、技術的困難のために断念していたリサイクル業。
2000年前の達人、七味唐子さんは、それを「やればできそう」と言う。
「まずは五味さんができる事を確認しましょう。
五味さんができる事は、イコール、猫耳商会が省略できる部分ですからね。それはつまり、コストカットできる部分という事になり、それだけ利益率が上がることになります。」
「そうですね。」
というわけで、今までに分かっている技能の効果や制限について説明する。
※説明が長くなるのでカット。全文はあとがきへ。
◇
「と、こんなところです。」
説明が長くなったことを謝罪する。
「思った以上の能力ですね。
リサイクル技術の開発は猫耳商会に任せるとして、五味さんが国中からゴミを大量に集めてくれるのなら、仕入れはほとんどタダで始められるという事です。
あとは売り物になるリサイクル品を生産できるようになれば、猫耳商会の販売ルートを使って売るだけです。加工にかかるコストと、需要に見合う値段設定のバランス次第ですが、仕入れがほとんどタダという時点で、かなり儲かると思いますよ。」
なるほど、言われてみればその通りだ。
さすがに2000年も生きていると知恵が違う。
と思ったら、エコさんがすかさず口を挟んできた。
「ゴミを受け取ったあとの事は、すべて猫耳商会にお任せ頂けるという事ですにゃ?
だったら、大使様と猫耳商会とは別の業者ですにゃ。リサイクル業の従業員として給料を支払うのではなく、ゴミを素材として適正価格で買い取りますにゃ。そのほうが大使様の手取りは多くなるはずですにゃ。それに、猫耳商会がリサイクル業でコケても大使様には関係ない話になりますにゃ。」
「その代わり、リサイクル業で大もうけできても、俺には追加で金を払うことはない、というわけですね。」
「その通りですにゃ。」
さすがは商売人。
俺との間でハイリスク・ハイリターンを狙っているが、決してギャンブルではない。技術開発は、諦めなければいつか可能になるはずだ。まして地球ではリサイクル品の販売までが成功しているのだから、猫耳商会でも成功するのは確実だろう。
「しかし、実際問題、リサイクル技術の開発なんて、できるものでしょうか? つまり、開発コストが大きくなりすぎて頓挫するという可能性も……。」
あるのではないだろうか。
しかし、七味さんもエコさんも首を横に振った。
「醤油や味噌のときも、最初はそんな感じでしたから、何とかなると思いますにゃ。」
「地球人にできた事が、こっちの世界では失敗するなんて思うのは、この世界の人々に対して失礼ではありませんか? むしろ魔法という、地球にはなかった技術がある分、こっちの世界の人々のほうが有利だと思いますよ。少なくとも、この2000年、この世界の文明はゆっくりと確実に進歩してきましたから。」
なるほど。ずっと文明が停滞し続けるという事はあるまい。
現代の地球の先進国みたいに、技術力が加速度的に開発されていくというのは、さすがに望みすぎだろうが、ゆっくりとでも前進するのは道理だ。
「さて、初期段階ではそんな感じでいいとして、将来的には五味さんの技能に頼らないでリサイクル業の全工程を回せるようにならなくてはいけませんね。」
「ああ、それはそうですね。」
俺が居なくても、というのは激しく同意だ。
病気や怪我で死ぬ可能性はあるし、何も無くても達人という種族の寿命は不明だ。たとえば七味さんは自分のスキルで作ったものを食べているから、その作物の効果によって不老長寿になっているという可能性もある。つまり同じ達人でも、俺は普通に100歳ぐらいで死ぬかもしれない。
そうなったら、リサイクル業だけでなくゴミ処理の業務も止まってしまう。前の状態に戻すとまた周辺に健康被害が出るだろうし、俺としても後釜を用意しておきたい。猫耳商会がどんな組織力で来ても、人件費や輸送コストがゼロになる俺と全く同じ事ができるわけではないが、だがだからこそ猫耳商会が俺の代替要員として組織力を拡大していっても、俺が仕事を失うような事にはならない。
「すでにキオートでは領主に嫌われたようですし、王城でやりこめた相手ともこの先どこかで出会うはずですから、悪くすると命を狙われる可能性もありますね。」
「猫耳商会で全工程を請け負えるようになるまでは、何としても生き延びて頂きたいですにゃ。
大使様、専属の護衛を雇うことをおすすめしますにゃ。」
専属の護衛は、アローを予約している状態だ。アローは汚名を返上してからでなければ、専属の護衛にはならないと言っている。逃げたみたいで嫌だと。
「そうですね……。」
と、俺はオーレさんを見た。
Sランクに最も近いと言われるAランク冒険者。剣の腕はすでにSランクと評されながらも、剣では対処できない場面で無力という尖りすぎた性能ゆえにSランクに昇格できないでいる。
「私ですかな? ん~……ダイハーンでの買い物をしてから考える、という事では?」
「ダイハーンでは魔道具を買う予定でしたね?」
「ええ。魔道具で遠距離に対応しようかと。
それでもSランクになれないようなら、冒険者の中から見合う仲間を探すのは難しいでしょうから、五味殿にご厄介になります。」
「Sランクになれたら?」
「もちろんSランク冒険者として活動しますな。引退後にでも拾って頂ければ……私ももう41歳ですから、ピークは過ぎています。冒険者稼業も、あと10年から15年ぐらいが限度でしょうな。ましてSランクでの活動となれば、すぐに昇格できても1年か2年といったところでしょうな。」
オーレさんは、寂しそうに笑った。
カットした説明部分です
まず、ゴミ拾いLV1。ゴミが光って見える。この光は、俺にしか見えない。また、この光によって周囲が照らされる事はない。つまり俺がゴミを懐中電灯の代わりに使うことはできない。単にゴミを発見しやすいというだけの能力だ。それに、この光は気づきやすい程度に光るだけなので、ゴミそのものが発光している場合、たとえば燃えているとか、太陽光を反射しているとか。そういう場合には、紛れてしまって光っているかどうか分からない。まあ、ゴミ処理場から拾っている分には、この能力が役立つ場面はないと考えてもいいだろう。せいぜい取りこぼしを発見しやすい程度だ。
次に、ゴミ拾いLV2。道具がチート化する。チートの内容は、道具本来の機能を「絶対に**する」という感じで強化するものだ。ゴミ袋なら「絶対に収納する」ようになり、容量不明の収納魔法的な効果がつく。リサイクル業を考える上では、この収納効果が最も重要だろう。他にも、火ばさみなら「絶対に掴む」ようになり、明らかに火ばさみでは持ち上がらない重さのゴミをも掴んで拾い上げられるようになるほか、川の水や魔法さえも掴める。
よく分からないのは、角材が持ち上がらなかったことだ。ゴミでないものは持ち上がらないようだ。それにしては川の水とか魔法とか、どう考えてもゴミじゃないのだが……一応「無価値なもの」はゴミとして判定されるのではないか、と考えているが、その「無価値」の基準もよく分からない。利用価値がないものという意味では、川の水も魔法も無価値ではないし、金銭的な価値がないものという意味では、川の水はそうかもしれないが、魔法までそうなのかというと怪しい。たとえば「辻回復」という商売があって、回復魔法を使える人が靴磨きや占い師みたいに道端で露店を開き、有料で回復魔法をかけてやるという商売だ。それで言うと、魔法は金銭的な価値がある。
作業服や軍手はダメージが通らなくなり、スニーカーは足音がしなくなる。ランニングシューズでもあるためか、走るのが速くなる効果もあるようだ。ただ、これらの防御効果や加速効果は、達人という種族のステータスが高いせいかもしれない。服や靴を脱いで、攻撃を受けたり、走ったりしてみれば分かるだろう。ただ、脱いで過ごす場面がほとんどないために、わざわざ確認しようと思わない。
その次が、ゴミ拾いLV3。道具が破壊不能になる。ささいな傷もつかないところを見ると、おそらく摩耗もしないのだろう。完全なメンテナンスフリーだ。これもコスト削減の一助になるだろう。もっとも、容器型のゴミをゴミ袋の代わりに使ったり、棒状のゴミを火ばさみの代わりに使ったりできるので、この能力がなくても実質は困らないのかもしれない。
4つめは、ゴミ拾いLV4。収納したゴミが、自動で素材別に分類される。素材別に取り出すことで、分解や仕分けの手間を省けるが、もちろん分解しないでそのまま取り出すこともできる。リサイクル業に使うには、大きな能力だ。
5つめも大きい能力だが、ゴミ拾いLV5。サイコキネシスみたいに道具を触らずに動かせる。射程距離や持続時間、同時に操作できる数などには制限がないようで、複雑な命令でも問題なく実行できる。これによって、俺は全国20都市のゴミ処理を1人で同時並行的に実行できるようになった。
6つめ、最後の能力は、ゴミ拾いLV6。俺自身と道具を中心として、半径1km以内にあるゴミを探知できる。この能力に目覚めたことで、1つめのゴミ拾いLV1は死にスキルになった。ゴミを探すに当たっては人海戦術みたいな事ができるようになったが、それ以外の運用としてはLV5で触らずに動かしている道具がちゃんと機能しているか遠隔地から確認できるようになったのが大きい。
なお、この技能はゴミを拾うことで経験値的なものが獲得できるようだ。全国20都市のゴミ処理を順に実行していくことで、獲得できる経験値の量が増えていくと思われる。今後、LV7以上に目覚めることがあるかもしれない。




