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ゴミ46 達人、LV6に目覚める

 メイゴーヤからキオートを目指して移動中、峠でハーピーを倒した縁でニアベイの騎士団とともに領主のもとへ行くことになった。その領主から、リュート湖南岸に漂着するゴミがあると相談された。

 領主の家へ一泊して、翌日、俺たちは早速リュート湖のゴミが漂着しているという南岸へ向かった。

 その途中で、小判を持った猫が片手を上げている姿が描かれた看板を見た。つまり招き猫だ。こっちの世界にも招き猫なんてあったのか。というか、猫が持っているアレ、小判にしか見えないが、やっぱり小判なのだろうか? こっちの言葉で「千客万来」と書いてあるのも同じだ。


「あれは猫耳商会ですな。」

「猫耳商会?」

「運送会社です。

 辻馬車に乗ったことはありませんかな? 全国の辻馬車は、ほとんど猫耳商会が運営しておるのですぞ。まあ、どういうわけか辻馬車のステーションにあの看板は出しておりませんが。

 あの看板を見るのは、港町が多いような気がしますな。」


 メイゴーヤや王都も港が近いはずだが、あんな看板は見なかった。もっとも、メイゴーヤは港からは少し離れているし、王都は大都市で全部は見ていないから、俺が知らないだけだろう。

 と、そんな感じであからさまなフラグを立てながら南岸へ到着。

 そこはビーチだった。


「なるほど……これは、なかなかの量だな。」

「まさか、これほどとは……。」

「大量だな。」


 オーレさん、昨日から「まさかこれほどとは」が多くね?

 それはともかく、確かに大量だ。大量のゴミだ。湖岸を埋め尽くすほどの。海水浴場――いや、海じゃなくて湖だから、湖水浴場か? として使えるであろう砂浜だが、ゴミに占領されて景観が台なしだ。


「とりあえず回収するか。」


 ゴミ拾いLV5を発動し、手袋と容器のゴミを使って回収作業を自動化する。

 サイコキネシスみたいに宙を飛ぶ手袋と容器が、ゴミを回収してチート化した容器に収納していく。大半は流木や草などの植物だが、革製品や金属も混じっている。領主が言っていたとおりだ。


「このゴミの発生源を探すんだったな? ……どうやって探すんだ?」

「漂流しているゴミをたどって、船で遡っていくのはどうだろうか?」


 アローが確認すると、すぐにオーレさんがアイデアを出してくれるが、俺は首を横に振った。


「それは無駄でしょう。

 船でたどれるんだったら、ここの漁師がもうやっているはずです。」

「ふむ……たしかに。」


 それに、見ればゴミが漂流している様子がない。

 つまり、たどって遡上できるほどのゴミがないのだ。大雨のときに一気に流れてくるとか、湖面()見渡しても少量だが全体では大量とか、そういう事だろう。


「じゃあ、どうするんだ?」

「湖面()()見渡す限りゴミがほとんどない。ならば、()()()()()()()()()、もっと広い範囲を見渡すしかないだろうな。

 ……というわけで、まずは実験だ。」


 回収したゴミの中から、できるだけ長い棒を選ぶ。3mの流木があった。

 その先端に布きれを巻き付ける。

 棒の太さが太すぎて使いにくいが、これは「はたき」あるいは「モップ」だ。高い所を掃除するための、柄が長いやつである。本当は布きれじゃなくてモフモフのモップを取り付けるべきだが。

 これは「掃除道具=ゴミ拾い道具」でありながら同時に「ゴミ」である。ゴミである以上、ゴミ拾いのスキル効果で重量を無視して持ち上げられる。そしてゴミ拾い道具である以上、ゴミ拾いのスキル効果で破壊不能のチート効果が付与される。


「さて、アロー。君はとても目がいい。」

「え……まさか……。」

「ちょっとこの棒の先に掴まってくれないか?」

「そ、それを持ち上げるつもりか……!?」

「なるほど! それならば高い所から広い範囲を見渡せるな!」

「余計なことを言うな、オーレ殿ぉぉぉ!」

「なんだ? 高所恐怖症とかじゃないよな?」

「高いところが怖くて何が悪い!?」

「高いところは広範囲・遠距離を狙いやすい。偵察にも最適だ。

 なのに苦手だというのは、前哨狙撃兵としてはちょっと……。」

「悪かったな!?」

「しかも、たった3mだぞ?」

「本当に悪かったな!?」


 その後も何とかアローを説得しようと頑張ったが、絶対に嫌だと固辞するので、さすがに時間の無駄だと諦めざるを得なかった。

 勝った……とか言っているアローをジト目で睨んでしまったとしても、仕方がないだろう。





 さて、そうしたら、どうしようかな?

 効率的に広範囲を探す方法が必要だ。どうしようもなければ、この海と見間違えるほど広いリュート湖をひたすら岸に沿って歩き、探し回ることになるだろう。


「五味殿、さきほどの流木と布きれ……ゴミ拾いの道具を自作できれば、それもスキルの対象になるという事でよろしいか?」

「そうですが……?」

「ならば、漁師を探して小舟と網を借りましょう。

 小舟で網を引いて湖面を漂流するゴミを拾っていく……それもまた、ゴミ拾いの道具ではありませんか? それにスキルの効果が乗るのであれば、小舟の移動速度がチート化するかもしれませんぞ。」

「おお……!」


 なんというアイデアマン! さすがオーレさんだ。





 港で小舟と網を借りるように頼んで、運良く借りることができたので、さっそく湖に出てゴミ拾いを試してみた。

 結論から言えば、失敗した。

 たぶんゴミ拾いの道具として判定されるのが網だけなのだろう。小舟には何の影響もなかった。


「マジか……困ったな。」


 どうしたものか、と悩んでいると、急に頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。


「うお……!?」

「ど、どうした、浩尉!?」

「五味殿!?」


 これはゴミが漂着したリュート湖南岸の……こっちはメイゴーヤの処理場……!?

 な……なるほど……そういう事か……。


「ステータス。」


名前:五味浩尉ごみひろい

種族:達人

年齢:39

性別:男

技能:ゴミ拾いLV6


 やっぱりだ。レベルアップしている。

 なんかレベルアップのペースが急に早いな。そういえば、ゴミ拾いをするとレベルアップするんだっけ。……ということは、メイゴーヤの処理場やリュート湖南岸でのゴミ拾いからも経験値的なアレが獲得できるということか? それならレベルアップが早いはずだ。


「どうやら、ゴミ拾いの道具として使っているものの周辺にあるゴミを探知できるようになったようだ。範囲が広くて情報が膨大だからビックリした。」


 まるで何十年かぶりに故郷に戻ってきたときのような感覚だ。一気に大量に昔のことを思い出したときの感覚に似ている。頭痛とかの不調はないが、驚いた。

 探知範囲は、道具から半径1kmといったところか。これなら、2kmごとに道具を点在させることで、広範囲のゴミを探知できる。


「とりあえず、棒2本を1組として、火ばさみの代わりになる『道具』とする。

 そしてゴミ拾いLV5の効果で飛ばして移動させ、LV6の効果でその周辺を探知……と。」


 これなら100組ほど『道具』を飛ばすだけで、200kmの捜査線を構築できる。100組なんて、湖岸に漂着した植物ゴミを使えば簡単だ。

 ……あれ? そういえば、湖岸でゴミ拾いをさせている容器に収納したゴミが、手元のゴミ袋から取り出せる? 今頃気づいたが……これはけっこう便利だな。

 それなら、公園とかにゴミ箱を設置すれば、捨てられたゴミを収納して、手元のゴミ袋から取り出せるということか。今度から領主に掛け合ってみよう。


「……よし、どうやら発生源を見つけたぞ。」


 アローとオーレさんを見ると、2人ともポカーンとしていた。

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