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ゴミ42 達人、戦う

 池山の峠道、その山頂付近で……ん? 峠のてっぺんは「山頂」なのか? 稜線ではあるが……まあいいや。そんな細かい事にこだわっている場合ではない。ハーピーの、おそらく群が現れた。鳴き声は聞こえるが、姿は見えない。木々が邪魔だ。しかしアローだけはすでに敵の姿を捉えているらしく、弓矢を構えていた。相手が空を飛んで移動しているのでは当たらないだろうけども。

 もちろん剣も届かないので、オーレさんも戦力外だ。そして俺も……。


「騎士団、前へ!」


 中年から壮年ぐらいの男の号令が聞こえた。

 道が曲がったその先で、ガシャッと大量の金属音が響いた。


「目標、ハーピーの討伐!

 弓矢構え! 放て!」


 号令に続いて、ビュウ……! と風切り音が聞こえる。

 近づいてみると、鎧姿の集団が弓矢を放ったところだった。

 矢の雨。まさにそう呼ぶにふさわしい黒い塊が、空を飛ぶハーピーの群に襲いかかる。この位置からはハーピーの姿が見えていた。ちょうど木々の葉の切れ目に姿が見えている。


「「ギャア! ギャア!」」


 ハーピーたちが叫ぶと、矢の大半がハーピーを避けるように軌道を変えた。


「風の防壁……あれがあるからハーピーの相手は面倒ですな。」


 オーレさんが解説してくれる。


「どうすれば……?」

「威力で上回れば、風の防壁を突破できます。

 ただ、弓矢ではご覧の通り。アロー殿の弓ならあるいは……といった所ですな。

 威力が足りずとも対応できるのは、広範囲の炎の魔法です。風の防壁があれば炎は防がれてしまいますが、熱までは遮断できませんから、炎に包んでしまえば焼き鳥にならざるを得ないわけです。

 あるいは、もっと大勢で大量の矢を放ち、風の防壁があっても隣の矢が邪魔で軌道が曲がらないといった方法があります。人員と物資が大量に無駄になるので、誰もやりませんが。」

「……あの騎士団? の方々では対処できないと?」

「いえ、討伐はできないまでも、撃退はできるでしょう。

 ハーピーが風の防壁を出せなくなるまで、矢を撃ち続ければいいのです。あれは魔法ですから、魔力が尽きれば使えません。そうなれば、ハーピーもそれ以上の攻撃は防ぎきれないとみて、逃げていくでしょう。」


 なるほど、としばらく観戦してみると、


「次、構え! 放て!」


 騎士団はオーレさんが言った通り、次々と矢を放ってハーピーの魔力切れを狙うようだった。





 しばらくして、騎士団の矢がそろそろ尽きようかという頃に、ハーピーたちも魔力切れになったらしく、飛び去ろうとし始めた。


「くそっ……! またも討伐できぬままか……!」


 団長らしき壮年の男が、悔しそうに吐き捨てる。

 他の騎士の面々も同様の表情だ。


「ちょっとやってみるか。」

「何を?」

「たぶん地面に落とすことはできるはずだ。

 仕留めるのは無理だろうから、落ちてきたら後は頼む。」

「剣が届くなら、私も戦えますぞ。」


 作戦開始だ。

 腰のカラビナからゴミ袋を外し、手袋のゴミを大量に取り出す。手袋はゴミ拾いの道具だ。俺も軍手をはめている。ならば操れる。


「ゴミ拾いLV5。」


 ゴミ袋と手袋が空を飛ぶ。

 今やゴミ袋を手元から離しても、俺が能力を解除しない限り、ゴミが溢れ出てくる事はない。


「ハーピーを捕まえろ!」


 あっという間に木々の向こうへ飛び去ったゴミ袋と手袋。

 パワーは俺1人を持ち上げることもできないが、スピードは決して遅くない。そしてゴミ袋の中には今まで収納してきたゴミが入っている。そのゴミの中には、ボロボロの布や、古びたロープなどが入っている。手袋がそれらのゴミを取り出し、ハーピーに絡みつけたり巻き付けたりすれば、翼をまともに動かせなくなったハーピーは地面に落ちる。

 ハーピーの、ギャーギャーとカラスみたいな声が、次第に高度を下げていく。その姿が木々の葉の向こうへ消えていった。


「よし、行こう!

 アロー、どこに落ちたか分かるか?」

「300mほど先だ。」

「承知! 剣さえ届けば斬れる道理!」


 俺たちは走り出した。

 途中でアローが足を止めて射撃。矢が俺たちを追い抜いて飛んでいく。

 障害物が多い森の中では、あまり遠くまで射線が通らない。すでにハーピーの姿は俺たちにも見えていた。


「我が剣の冴えを見よ! ……って……これは……。」


 オーレさんが無双する。

 といっても、相手はほとんど動きを封じられた状態だから、一方的になるのは最初から決まっていたわけだが。


「……剣の冴えも何もありませんな。

 すでに息も絶え絶えの敵にトドメを刺して回るだけの作業だ。」

「そういう事ですね。

 ……といっても、どうやら俺の能力では、トドメさえ刺せないようですが。」


 錆びた包丁や折れたナイフなどを取り出してみるが、手袋に握らせてみてもハーピーの羽毛や皮をろくに傷つける事ができない。

 よく見れば、布やロープも「絡みついているだけ」で、縛り上げているわけではなかった。

 ゴミ以外にはまるきり非力のようだ。……いや、俺の体を押して山登りの助けになる程度のパワーはあるのだから、縛り上げられないのはハーピーのパワーがそれだけ凄いという事か。しかしそのパーピーも、布やロープをちぎれるほどのパワーはないと。


「いやいや、今回の功労賞は五味殿でしょう。」

「いやいや、騎士団こそ功労賞ですよ。

 風の防壁があっては、絡め取る事もできませんでした。」


 いやいや、いやいやいや……と遠慮し合っているところへ、アローがぼそっと――


「私の出番はなかったな……。」

「いやいや、アロー殿が居なければ、落ちたハーピーどもの所在が分からず、逃げられていたでしょう。」

「その通りだ。そういうサポートも立派な参戦だぞ。」


 そんな風に話しているところへ、(たぶん)騎士団長のおっさんがやってきた。


「いずれにせよ、お見事でした。」

五味「連射式ボウガンの出番がない件」

作者「あ……」

アロー「忘れてたな」

オーレ「忘れてたようですな」

作者「いや! しかし! 撃ってもろくに当たらないじゃん!?」

五味「うぐ……!」

アロー「ああ……浩尉は『分かる』だけだもんな。自分じゃ実践できないか。」

五味「うぐぐ……!」

オーレ「ん? 五味殿が使うのですか?」

作者「アローが使っても当たらないんだけどね。」

五味「…………。」うんうんニヤニヤ

アロー「そうだろうけど! やってみるって大事だと思うんだ!」

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