表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/245

ゴミ34 閑話 国王ナンテ・コッタ・ナーマエ・ナゲェヨ・(以下略)

 余は国王ナンテ・コッタ・ナーマエ・ナゲェヨ・アゼル・ファン・デン・オウヴェラント・トーチャン・ベンジャミン・トルーマン・カーチャン・キャスリーン・ハンフリー・ジーチャン・ネッド・ダウニング・バーチャン・ジェイニー・セッションズ・ジーチャン・ビヴァリー・ベイツ・バーチャン・ダニエル・ブライトマン・ソーソフ・イネス・ガワー・ソーソボ・シシリア・プライス・ソーソフ・ジェイコブ・ハースト・ソーソボ・オーガスタ・パウアー・ソーソフ・ダスティ・バラノフ・ソーソボ・イノーラ・コーエン・ソーソフ・ダスティン・ノードリー・ソーソボ・フェリシア・リード・オーサマ8世。

 名前が長すぎて、自分でも覚えるのに苦労した。今でも時々間違えてしまうが、どうせ誰も覚えていないからバレやしないだろう。

 西の地方都市メイゴーヤの領主……えーと、名前は何だったか……まあ、とにかく、その領主から、興味深い報告が届いたのだ。


 メイゴーヤ近くの村で、村人が病気がちである。その問題を解決した。

 かねてから、食糧不足や生活習慣など様々な原因を考え、対策をしてみたが、どれも成果が得られずに居たのだが、このたび、とある人物の進言を受けて、原因の特定に至った。その原因というのが、メイゴーヤから排出されるゴミだった。

 従来、メイゴーヤのゴミは、近くの平原へ集めて、燃やして埋める処理をしてきた。


 ……うむ。これは王都でも他の地方都市でも同様であるな。


 そのゴミから毒素が出ており、雨水などを介して村人の飲み水に入り込み、この毒素の影響で村人が体調を崩していた。


 ゴミから毒素とな……。であれば、王都や他の地方都市でも、同様の問題が起きる可能性があるではないか。いや、もうすでに起きているかもしれぬ。

 問題は、毒素の有無をどうやって調べるか。その毒素の発生源がゴミだと特定する方法はあるか。毒素を除去する方法はあるか。今後はゴミをどうやって処理するか。それに、ゴミからの毒素以外に、体調不良の原因はないのか。……といったあたりが課題になるか。


 毒素が混じっていることを確認する方法として、くだんの村から井戸水・畑の土・作物を採取し、これらに解毒魔法をかけた。従来、解毒魔法は生物にしか効果がないとされてきたが、進言してきた男は村の神父を連れてきて実演し、確かに解毒魔法の効果が出ていることが確認された。

 解毒魔法が効果を発揮するとき、毒素が黒い霧になって抜け出ていく様子が見てとれる。毒素がなければ、この黒い霧は発生しない。従って、井戸水・畑の土・作物から解毒魔法によって黒い霧が発生したことは、これらに毒素が含まれていることの証明となった。


 解毒魔法が生物以外にも効果を発揮するとは。これだけでも新しい発見であるな。

 これからは余ら王族の食事にも、毒味役のほかに解毒役を雇うとしよう。

 それに、王都や他の地方都市で同様の問題が起きているかどうか、確認する方法としても使える。しかも非常に簡便だ。解毒魔法が使えればいいのだから、教会から人員を借りる必要はない。軍にいる僧侶で十分だ。すぐに調査を指示しよう。

 だが、報告書には続きがある。


 ゴミによる汚染は、彼からの「報告」に過ぎなかった。

 彼は汚染の出ない方法で処理することを「進言」してきた。その方法とは、彼が持つ魔法の鞄にゴミをすべて収納することだった。彼には、これから出るゴミの処理と合わせて、すでに汚染源となっている処分済みのゴミを掘り起こして処理してもらうことになった。

 彼にゴミ処理を任せてから、しばらくすると村人の体調は回復に向かった。明らかに病気が減り、腹を下す者も激減した。これをもってメイゴーヤ近くの村における病気の原因は、ゴミから出る毒素だと断定した。


 面白い処分方法だ。魔法の鞄さえあれば代替可能ではあるが、魔法の鞄は非常に高価だ。そこにゴミを入れるというのは……。

 よし。この際、その男に他の都市のゴミ処理も任せてしまおう。もちろん王都のゴミもだ。

 あと、この報告をくれた領主の名前を調べておこう。周辺住民の体調回復が税収にまで影響するようなら、領主にも何らかの褒美を与えねばならぬ。





「ゴミヒロイとな。

 して、フルネームは何と申す?」

「五味浩尉です。」


 進言した男、ゴミヒロイを召喚した。

 随分短い名前だな。顔立ちからしても、この国や周辺国の人間ではないのだろう。


「貴様! 陛下が問うておられるのだぞ!? 名乗りを拒むとは、無礼討ちにしてくれる!」


 どこの国の者だろうか、と思っていたら、領主代理で来た若いやつが暴走した。狭い範囲しか知らないくせに、それが世界の全てだと思っているタイプだ。若いうちにはありがちな事とはいえ、この場でそんな振る舞いはマズイ。

 第一、余が用事があって呼び出したのに、勝手に無礼討ちにされては困る。


「陛下はフルネームをお尋ねになり、私はフルネームを答えました。貴国では長い名前をもつ文化があるようですが、我が国ではこの程度の長さが一般的なのですよ。いったい何をもって『名乗りを拒んだ』とおっしゃるのか、ご教授頂きたい。」


「……矛盾していますね。

 あなたは、陛下のご威光が矛盾したもので、本当はありもしないものをでっちあげただけだと、そうおっしゃるのですね。分かりました。」


 恐ろしく弁の立つ男だ。単なる無知と勘違いを、あっという間に王権批判の不敬罪にすり替えてしまった。だが、むしろそれこそが若き領主代理の問題の本質かもしれぬ。余が呼び出した、その用事も伝えぬうちに、勝手に無礼討ちにしようなどと、余の邪魔をする行為だ。理論展開は違っていても、結局のところ不敬であるという結論は変わらない。

 しかも彼は、祖国では統治者になる権利があるという。まさか王族だったとは。それも王位継承権を持っている人物となれば、庶子ではなく正統な王族の一員だ。むしろ弁が立つことについては納得だな。いや、「王族」とは限らないか。国家元首が皇帝を名乗っていたら皇族だし、共和国なら議長とかを名乗っているかもしれない。

 しかし、そんな人物がどうして他国で庶民に紛れて生活しているのか……。王位継承権を持っていることに嘘はなくとも、その順位はうんと低いのではないだろうか? あるいは、世界を見て回る教育プログラムがあるのだろうか。一応、我が国にも王子に従軍させる教育課程はある。戦争をゲームか何かのように考えてしまわないようにするための情操教育の一環だ。民間人として留学を経験させるという教育課程があっても不思議はないだろうが……安全性の確保とか、どうなっているのだろうか? 諜報部隊みたいな連中がこっそり警護しているとか? 一応、スパイ目的とかじゃないか確認のために調査させておこうかな……。

 あの若い領主代理は、謝罪することさえ許されず、青い顔をして鼻水やら涙やらヨダレやら騒々しい顔になっている。


「弁が立つのはよく分かった。

 そのぐらいで許してやってくれないかね?」

「陛下がそうおっしゃるなら。」


 借り1つか。

 恐ろしい男に借りを作ったものだ。任せる予定のゴミ処理、その代金を割り増しするぐらいで返した事にしてくれるといいが……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくれてありがとうございます。
楽しんでいただけたら、幸いです。

「楽しめた」と思っていただけたら、上の☆☆☆☆☆をポチっと押していただきますと、作者が気も狂わんばかりに喜びます。
バンザ━━━┌(。A。┌ )┐━━━イ!!

「続きが気になる」と思っていただけたら、ブクマして追いかけていただけると、作者が喜びのあまり踊りだします。
ヽ(▽`)ノワーイ♪ヽ(´▽`)ノワーイ♪ヽ( ´▽)ノ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ