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ゴミ33 達人、弁舌を振るう

 なんやかんやで王都に到着。謁見の2日前だ。

 1日休み、1日観光して、3日目に王城へ。なおアローには宿屋で待っていてもらっている。王様に呼ばれたのは俺だけだからね。

 ……ていうか、せっかく弓まで買ったのに、あれ以来、道中で戦闘にならなかった。魔物も盗賊も出ないのだ。まあ、考えてみたら当たり前だ。王都に近いほど人が多くなる。その中には冒険者や兵士だっているし、何なら兵士の定期巡回まである。

 そして、やたら豪華で広い城内を案内されて、謁見の間へ。玉座に座っている王様、左右に居並ぶ近衛兵、そして貴族っぽい格好のよく分からない連中が10人以上いた。


「よくぞ参った。

 余が、ナンテ・コッタ・ナーマエ・ナゲェヨ・アゼル・ファン・デン・オウヴェラント・トーチャン・ベンジャミン・トルーマン・カーチャン・キャスリーン・ハンフリー・ジーチャン・ネッド・ダウニング・バーチャン・ジェイニー・セッションズ・ジーチャン・ビヴァリー・ベイツ・バーチャン・ダニエル・ブライトマン・ソーソフ・イネス・ガワー・ソーソボ・シシリア・プライス・ソーソフ・ジェイコブ・ハースト・ソーソボ・オーガスタ・パウアー・ソーソフ・ダスティ・バラノフ・ソーソボ・イノーラ・コーエン・ソーソフ・ダスティン・ノードリー・ソーソボ・フェリシア・リード・オーサマ8世である。」


 長ぇよ! 覚えられるわけねえ。

 信じられるか? この国の人の名前って、だいたいこんな感じなんだぜ。

 ごめん。盛った。普通の人たちは、これの半分ぐらいの長さだ。


「直答を許そう。

 そなたの名は?」

「五味浩尉です。」

「ゴミヒロイとな。

 して、フルネームは何と申す?」

「五味浩尉です。」

「貴様! 陛下が問うておられるのだぞ!? 名乗りを拒むとは、無礼討ちにしてくれる!」


 よく分からない貴族っぽい奴らの中に、なんかいきり立っている奴がいるようだ。

 こういうところで文化の違いは面倒だな。

 よし。いっちょ、かましてやるか。

 俺は平伏するのをやめて、立ち上がる。


「陛下はフルネームをお尋ねになり、私はフルネームを答えました。貴国では長い名前をもつ文化があるようですが、我が国ではこの程度の長さが一般的なのですよ。いったい何をもって『名乗りを拒んだ』とおっしゃるのか、ご教授頂きたい。

 それと、無礼討ちだと言うのなら、こちらの方が身分は上ではありませんか? 俺はこれでも祖国の統治者になる権利を持っている。まだ『権利を持っている』だけで『統治者』ではないから、他国の統治者である国王陛下の前では平伏もしますが、あなたに無礼討ちされるいわれはない。違いますか?」


 選挙で立候補する権利はあるもんね。当選するわけないけども、権利だけはある。

 ということは、もし当選すれば、総理大臣になる可能性だってあるわけだ。なれるわけないけども、制度上は可能性がある。

 嘘は言ってない。ドヤッ。


「なんと……!」

「まさか、継承権をもつ王族とは……!」

「いったい、どこの国の……。」


 ほぉら、いい感じに勝手に勘違いして、ザワザワと驚きが広がっていく。

 いきり立っていた奴が、急に青ざめてきたぞ。


「もっ……申し訳……!」

「謝罪など求めていませんよ。

 質問をしているのです。

 名乗りを拒んだとおっしゃる根拠は何か?

 身分はどちらが上か?

 私があなたに無礼討ちされるいわれはあるのか?

 この3点について、お答え願いたい。」

「そ、それは……その……。」

「質問が3つでは答えにくいですか?

 では、1つずつ答えて下さい。

 まず、名乗りを拒んだとおっしゃる根拠は何ですか?」

「そ、その……名前が……あまりに短く……フルネームだとは……。」

「よろしい。

 あなたは国王陛下が招いた客の名前を勝手に勘違いし、国王陛下のご質問に答えなかったと勘違いした。

 なぜなら、もしも国王陛下のご威光があまねく民草を平伏させ、嘘や偽りを許さぬ完全なものであれば、私がどこの国の者でどんな短い名前であろうとも、この国の方々と同じぐらい長い名前を答えるべきで、私がそうしなかったのは、国王陛下のご威光などどこの馬の骨とも分からぬ輩に無視される程度のものでしかないからだ、とあなたは、そうおっしゃるわけですね。」

「そっ……! そんな事は……!」


 俺を無礼討ちにすると息巻いていた奴が、いきなり王権批判の槍玉に挙げられてうろたえる。

 だが、反論は許さない。テレビ中継される国会議員の「厳しい追及」シーンのように。


「しかし、おかしな話です!

 私の本名は短い。それでもこの国の方々と同じぐらい長い名前を答えるべきだとおっしゃるのなら、私は()()()()()()()()()()()()()()()でも答えなくてはなりません。

 ですが、あなたが()()()()()()長い名前を答えるべきだと考える根拠は、陛下のご威光が()()()()()()()()完璧なものであるからだと……矛盾していますね。

 あなたは、陛下のご威光が矛盾したもので、本当はありもしないものをでっちあげただけだと、そうおっしゃるのですね。分かりました。」

「ちっ、ちが……!」

「では次の質問に移りましょう!

 どちらの身分が上ですか? 階級の名称や種類が共通しているとは思えませんが、少なくとも私には祖国の統治者になる権利があります。あなたはどうですか?」

「私は陛下のご威光を批判など……!」

「質問に答えて下さい。

 あなたに国家の統治者になる権利はあるのですか?」

「私は決して批判など……!」

「あるのか! ないのか! どっちですか? 答えて下さい!」

「ありません……ッ!」

「では、私があなたに無礼討ちされるいわれは、あるのですか!? どうですか!?」

「あ、ありません……ッ!」

「よろしい。

 この国では随分と教育の行き届いた人物が王城に出入りしているようですね。」


 青ざめていた奴が、涙やら鼻水やら騒々しい顔になってきた。

 と、そこで王様が制するように手を挙げて口を開いた。


「弁が立つのはよく分かった。

 そのぐらいで許してやってくれないかね?」

「陛下がそうおっしゃるなら。」


 俺は再び平伏する。

 顔を立ててやるから、貸し1つだぞ、っと。


「では、本題に入ろう。

 そこの無教養な無礼者を含めて、この場に集まっている貴族たちは、みな大都市の領主、あるいはその代理人として派遣された者たちだ。

 五味殿には、その各都市から出るゴミの処理を頼みたい。もちろん我が王都も含めて。」

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