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ゴミ30 達人、達人の能力を知る

 この世界には存在進化という現象があるらしい。

 俺の種族「達人」も、「人間」から「素人」「灰人(グレート)」「玄人」「職人」「名人」を経て「達人」になるという面倒な手順を踏むもので、最後に「達人」が現れたのは2000年前だという。


「でもさ、『達人』が凄くレアなのは分かったけど、存在進化して何か変わるのか?」

「当たり前だ。

 まず、単純に強くなる。魔物が存在進化すると強くなるのと同じだ。」


 ゴブリンが、ホブゴブリン、ゴブリンソルジャー、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングと進化するんだそうだ。上位種族なら強いというのは、何となく想像できる。

 それが人間でも起きるのか。


「……でも、俺、強くなった実感ないけど?」


 チンピラに殴られたときも、特に攻撃が遅く感じるとかいう事はなかったし。

 殴られても平気だったが、あれはゴミ拾いのスキルで作業服がチート化したせいだしな。

 大工のところで木材にも挑戦したが、持ち上がらなかった。


「まだ『達人』になってから日が浅いのではないか?」

「ああ、3ヶ月ぐらい前だ。」

「存在進化した直後は、体が新しい種族のものに作り変えられて馴染むまで、しばらく時間がかかる。達人がどれほどの時間を必要とするか分からないが、上位種族になるほど馴染むまでの時間は長くなると言われている。

 ただ、主に極めた道に関しての能力から早く馴染んでいくという話だ。3ヶ月なら、そろそろ何か変化を感じたりしないか? そもそも存在進化した直後でもある程度は違いがあるはずだが。」

「……ゴミなら重くても持ち上げられるが。」

「ゴミ?」


 木材、ゴミになったと判断されたものは簡単に持ち上がったんだよな。まさか達人という種族の能力が、ゴミ限定で発動するとか、そんなバカなことがあるのか? 持ち上げる対象によって筋力が変わるなんて、どんな仕組みなんだよ。

 ……あ、でも、川の水を持ち上げたのは? 掴めたのは火ばさみがチート化したせいだとしても、持ち上げるには凄い重さだったはずだ。しかも川の水は決してゴミではなかった。光ってなかったし、普通に考えてもゴミじゃない。やっぱり種族特性でパワーアップしてるのか? でも、だったら、どうしてゴミじゃない木材が持ち上がらないんだろう? 馴染んでないからだとしても、川の水と木材の間に何の違いが……?

 価値の高さ、か? 無価値(ゴミ)に近いほど簡単に持ち上がるとか? あー、でも、そう考えると、基準はともかく、持ち上げる対象によって筋力が変わるなんて、どんな仕組みなんだよって事だよな。う~ん……分からん。

 そういえば、スニーカーがチート化して走るのが速くなったと思っていたけど、もしかすると、あれも種族のせいかもしれないわけか。足音が消えたのはスニーカーのチートで間違いないだろうけど、走るのが速くなるというのは微妙なところだ。


「俺のスキル、『ゴミ拾い』なんだ。

 種族もそのせいだと思うが。他に熟練したものなんてないし。」

「ゴミ拾いで『達人』……? そ、そんな事があるのか……?」

「どんな芸でも、突き詰めれば一道に達するもんだぞ?」


 地球なら、プロゲーマーにはなれなくても、実況者として動画配信はできるわけだし。

 何なら「落語家」なんて、要するに「喋るだけ」の一芸を究めている人たちだ。話芸なんて言うぐらいだしな。喋るだけというのは立派な芸になり得る。


「……そうなのか。」


 アローがうろたえている。

 そんなバカな、と言いたいのをこらえている感じが丸わかりだ。


「王様に呼ばれて王都へ行く途中なんだがな。」

「そうなのか?」

「そうなんだ。

 でも『達人』になったからじゃないぞ? ゴミに関する仕事ぶりが知られて呼ばれたんだ。

 たぶん、新しくゴミ処理の仕事を発注される。」

「国王が呼ぶほどの……なるほど。ゴミ拾いでも『達人』になるんだな。」

「あ、そうだ。

 王様に呼ばれて王都に行く途中だが、アローにあげる弓は家に置いてあるんだ。すまないが、王様の用事を先に済ませてから帰ることになるからな。」

「ああ、それは構わない。」


 アローは咳払いした。


「それで、達人の能力を話している途中だったな。」

「ああ。まずは単純に強くなると。それ以外には?」

「進化元になった種族について、理解できるようになる。

 たとえば『素人』に進化すると、人間・エルフ・ドワーフ・獣人などの種族をすべて理解できるようになる。同じ事ができるようになるわけではないが、指導はできるようになるぞ。

 浩尉は『達人』だから、『名人』以下の種族すべてについてだな。弓矢の扱いも究めれば『素人』から順に進化していける。弓の使い方と、使う弓の種類が間違っているという話、今なら全面的に信じられる。浩尉自身に弓の経験がなくても、『達人』なら『名人』レベルまで理解できる。私はまだ『エルフ』だから、浩尉から見たら『素人』未満の腕前ということだな。」


 やはり、理解できるというのは種族特性だったか。

 そして、指導はできても実践できないというのも予想通りだ。

 言葉を覚えるのが早かったのも、そのせいか……? たぶん、そうだろうな。教わって2ヶ月で普通に話せるとか、どんな天才だよっつー話だよな。


「それなら、アローに強くなってもらえばいいな。

 俺には戦闘経験はないんだ。今後も戦うつもりはない。

 けど、ゴミ処理のために街の外に出て活動しないといけない。アローを俺の身辺警護に雇いたい。無期限でが希望だが、1ヶ月ごとに更新していくほうがいいか?」

「私を……雇うと?」


 アローは目を見開いた。

 冒険者たちからあんな酷評されていたぐらいだから、それがアローの評価として一般的なのだろう。誰も彼女の価値に気づかなかったというのは不思議だが、この世界での弓矢の扱いがそういうものだという固定観念があるのなら、そして「狙撃手」とうい概念がないのだとしたら、それも仕方がないだろう。

 射出武器として弓矢の進化形である拳銃は、実際には10m離れたらそうそう当たらないらしい。弓矢は反動が少ないからもう少し遠くまで当たるのかもしれないが、弾丸より矢のほうが遅いから逆にもっと当たりにくいのかもしれない。

 いずれにせよ、アローが冒険者パーティーを追放された時の様子を見る限りでは、この世界の弓矢の扱いはせいぜい拳銃のようなものらしい。つまり、射出武器ではあるが接近専用ということだ。ロングボウを使ってもライフルぐらいのものだろう。100m先の静止目標に当たるかどうかといったところじゃないだろうか。

 狙撃銃を作れれば、アローにとって世界が変わるだろう。1km先とか2km先とかの目標を狙えるとしたら、アローの価値はさらに高くなる。


「そうだ。そっちの実験もしないと。」


 ちなみに、他人のステータスを鑑定するような魔法やスキルは存在しないそうだ。存在するけど隠しているだけ、という可能性もあるかもしれないが。いずれにせよ、鑑定してもらうというわけにはいかない。従って、ゴミ拾いスキルの効果や達人という種族の性能については、自分で確かめていくしかない。

第2章の完結まで書き終わりました。

8月31日 2章の最終話

9月1日 キャラクター紹介

9月2日 第3章開始

という予定になっています。

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