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ゴミ29 達人、達人の秘密を知る

 冒険者アローが仲間になった。弓使いのエルフだ。エルフは魔法と弓が得意な種族だが、アローは魔法が使えず、弓矢も動く標的には当たらない。

 弓矢は単に使い方の適性が問題だが、魔法を使えない理由は体質で、体から離して魔法を使えないらしい。ならば自分自身に作用する魔法はどうなのかと尋ねたら、エルフが使う魔法「精霊魔法」には、肉体を強化する魔法がないらしい。人間が使う「属性魔法」にはそういう魔法があるものの、強化率は1.2倍。正直しょぼい。

 だが……待てよ?


「……精霊魔法は、精霊に頼んで魔法を使って貰うんだよな?」

「ああ。」

「属性魔法と同じ事をしてほしいと頼んだら、どうなるんだ?」

「頼むための文言が分からない。

 精霊語で頼まないと話が通じないからな。」

「精霊語は覚えていないと?」

「呪文の詠唱として定型文を覚えているだけだ。

 それだって精霊にちゃんと通じているかどうか怪しい。たぶん発音の良し悪しで通じやすさが違うんだろう。同じ精霊魔法を使っても威力に個人差がある。」

「なるほど……。」


 俺がこっちの言葉で「ありがとう(ケンダァ)」を覚えたばかりの頃とそう違わないわけだ。


「なら、属性魔法を覚えて自力で強化するのは?」

「属性魔法は覚えていないから、なんとも言えないが……自分の魔力を使うわけだし、頑張ればできるのではないか? 個人差はあるのだろう?」

「いや、俺に聞かれても知らんが。」

「お前は人間だろう? その歳で知らないのか?」

「そんな呆れたように言われてもな……。

 まず俺の種族名は『達人』だし、そもそも異世界から来たんだから実質1歳未満だ。」

「なっ……!? 達人!? ていうか、異世界?」


 アローは、やたらと驚いた。

 主に「達人」という種族名について。異世界については「何それ?」状態だ。


「そんなに驚くことか?」


 転移したらもう種族名が達人だったから、何に驚いているのか分からない。

 正直この「達人」という種族がどういう種族なのかも分からない。


「存在進化は知っているな?」

「いや、知らん。何だ、それ?」

「……たとえばゴブリンが存在進化するとホブゴブリンになる。ホブゴブリンから存在進化するとゴブリンソルジャーやゴブリンアーチャーなどになり、さらにゴブリンジェネラルからゴブリンキングに進化していく。」

「ん~……つまり、上位の種族に変化すると?」


 RPGの転職みたいなものか? 戦士と魔術師でレベルを上げると魔法戦士になれる、みたいな?


「……え? 俺、人間やめたって事か?」

「狭い意味では、そうだな。」

「マジか……。

 でも『狭い意味では』ってことは『広い意味では』どうなんだ?」

「まず『人類』という言葉の意味からだろうな。

 たとえば私はエルフだ。広い意味でも狭い意味でも、人間ではない。しかし『人類』ではある。

 獣人もそうだ。犬・猫・猿・熊など様々な特徴をもつ獣人がいるが、彼らも『人類』だが『人間』ではない。

 犬の特徴をもつ獣人は犬人族、猫の特徴をもつ獣人は猫人族というが、ひっくるめて獣人ともいう。

 人間の場合は、『獣人』に相当する『人間』と、犬人族や猫人族に相当する『人間』と、両方とも同じ言葉が使われる。学者なんかがあえて区別するために、後者を『凡人』とか『只人』とか呼ぶこともあるが、一般的ではない。」

「つまり『達人』というのは、『凡人』から存在進化して『達人』になったから、広い意味では『人間』だと。」

「そうだ。」


 1つの言葉に広義と狭義がある。珍しい事ではない。

 しかし、存在進化か。それに、獣人もいると。ファンタジーだな。


「でも、それの何が驚くような事なんだ?」

「ゴブリンがゴブリンキングになるには、さっき言った通り、何度も存在進化を繰り返さないといけない。達人もそうなんだ。」

「そうなのか?」

「たとえば、ひたすら善行を積んだ人は『人間』から『善人』を経て『聖人』になる。

 逆に、盗賊とかの悪行を積み続けた人は『人間』から『悪人』を経て『極悪人』になる。

 どっちも2回の存在進化だ。」


 2という数字を強調するように、アローは指を2本立てて差し出してきた。


「しかし『達人』になるには、『人間』から『素人』『灰人(グレート)』『玄人』『職人』『名人』を経て、ようやく『達人』になる。存在進化が6回必要なんだ。」


 アローは指を6本立てる。


「教会のトップは教皇だが、種族は『善人』で、『聖人』はもう何百年も出ていないらしい。

 凶悪犯罪者として知られる連中も『悪人』止まりだ。『極悪人』になった者は過去に1人しかいないと言われている。

 存在進化は、1回するだけでも大変なことなんだ。

 ドワーフは鍛冶が得意で、寿命も人間の5倍ぐらいだが、『灰人(グレート)』になったら凄いと言われていて、『玄人』になるドワーフはもう何百年も出ていない。」


 ドワーフもいるのか。まったくファンタジーだな。しかし寿命が人間の5倍とか……それでも存在進化は2回が限度なのか。人間の10倍の寿命をもつエルフなら『玄人』まで狙えるのだろうか?

 いや、それはともかく……。


「待て。

 ドワーフでも『灰人(グレート)』にはなれるのか? 元が『人間』じゃないのに?」

「複数の種族の進化先が同じという事は、他にもある。

 たとえばゴブリンソルジャー・ゴブリンアーチャー・ゴブリンメイジなどは、すべて『ゴブリンジェネラル』に進化する。

 ドワーフもエルフも獣人も同じ人類だから、1つの道を究めようとすれば、まずは『素人』に進化するぞ。」


 地球の進化系統樹は常に枝分かれを繰り返し、途中で複数の枝が1本にまとまる事はない。それが、この世界では起きると。ファンタジーだな。

 とはいえ、多くの動物が持つ「目」の機能は、元をたどると植物の「明るさを感じる機能」から突如として動物にコピーされたらしい。「ダ*ウィ*が*た!」で言ってたから間違いない。地球でも、枝が合体することはなくても、要素がコピーされることはあるわけだ。


「そうなのか。

 ……て事は、もしかして俺って凄い?」

「最後に『達人』が現れたのは、2000年前だと言われている。」


 超レアじゃん。

ここから4日ほど話が進まず、検証とか説明とかの回になります。

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