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ゴミ23 達人、護身を考える

 さて今日からゴミ処理業の始まりだ。

 まずは回収業者と合流し、西の平原に出向く。

 道中で、集められたゴミをゴミ袋に収納して片付けた。

 西の平原に到着すると、今度は地面に埋まっているゴミを同じく収納していく。そのためには地面を掘り返す必要があるので、回収業者に魔法を使って地面を掘ってもらう。


「ピットフォール!」


 広く浅く、地面の土が取り除かれた。

 その下から現れる、埋め立てられたゴミ(焼却済み)。


「では、よろしくお願いします。」


 と回収業者はさっさと帰って行った。

 俺は平原に1人残って、黙々とゴミを回収する。





 昼まで続けて、今日の作業はこれで終わりとした。

 午後からは街の中のゴミを拾おう。いつも通り市場から始めて……。


「おや?」


 いつぞや川沿いで見かけた魔物がいる。犬だか狼だか分からないフォルムで、ゴジラの背中みたいに鱗のようなものが生えているやつだ。


「よし、逃げよう。」


 俺は即座に逃げ出した。

 スニーカーがチート化していて、やたら速く走れる上に、足音がしない。ゴミ拾いの道具しかチート化しないと思うのだが、スニーカーがゴミ拾いの道具として認識されているのは、俺もちょっと不思議だ。軍手と同じく、靴は足を守るものとして「ゴミ拾いの道具」という判定になっているのだろうか。服がチート化していることから考えても、たぶんそんなような事だろう。

 ともかく、逃げ出すときには便利なチートだ。こっそり素早く逃げられる。





 街まで戻って、昼食をとり、午後から街の中のゴミ拾いを始めた。

 それにしても、西の平原でゴミ処理を請け負った以上、魔物に遭遇するのは当然だったな。何か護身を考えておかないと。

 とりあえず、防御力には不安はない。作業服や軍手は防御チートが作用していることは確認済みだ。しかし、攻撃が通じないからといって魔物や動物が大人しく諦めてくれるかといったら、たぶんそんな事はないだろう。

 有効な攻撃手段が必要だ。少なくとも追い払える程度には。しかし当然だが、武器はゴミ拾いの道具ではないから、チート化しない。つまり、普通に使うしかないのだ。破壊不能の火ばさみがあるから、これを棍棒代わりに使えば、剣とかは必要ない。しかし剣道とかの経験はないから、火ばさみだけで戦えるとは思えない。

 小石を拾って投げれば、遠距離攻撃もとりあえずはできる。火ばさみで掴めば少々大きい石でも拾えるから、攻撃力はある。ただし、まともに狙えないだろう。一応、中学生のときには野球部だったから、手で投げるぶんにはある程度まともに飛ぶが、投げる力を強化するようなチートはないから、攻撃力はたかがしれているだろう。

 となると、強力な遠距離攻撃……弓か何かが必要だ。





 というわけで、ゴミ拾いを終えて武器屋にやってきた。

 時刻は夕方。出かけていた冒険者たちも戻ってきて、街は賑わう時間だ。武器屋にもメンテナンスを依頼する冒険者が集まっている。


「とりあえずは、簡単なやつから始めるか。」


 弱い力で引ける小さい弓を買った。

 弓道やアーチェリーの経験はないから、練習が必要だ。





 街を出て、街の東側――川の上流へ。引っ越して早々に、再びのキャンプ地である。

 ここに少しだけ木が生えているから、それを的にしよう。街の防壁に向かって矢を放てば、発射した矢がどっかいっちゃったという事も防ぎやすい。もちろん矢は回収して再利用する。

 とりあえず5mの距離から10本ずつ撃ってみるか。


「とうっ。……よし!」


 1本目、命中。

 2本目、命中。

 3本目、命中。

 …………。

 ……………………。

 ………………………………。

 10本全部命中した。

 次は10mの距離から。

 ……3本外れた。

 次は15mから。

 ……5本外れた。

 次は20mから。

 ……2本しか当たらなかった。

 次は25mから。

 ……1本も当たらなかった。


「とりあえず、あれだな。才能ないな。」


 うん、知ってた。

 とはいえ護身のためだ。命が掛かっているのだから、練習はするけども。





 1時間ぐらい練習して、やみくもに狙ってもダメだと気づいた。

 銃の照準器みたいに、何か明確な基準を決めて狙ったほうがいい。とりあえず、左右の誤差を減らすために、ターゲットが弓の陰に半分隠れるようにして狙ってみる。

 そう決めて狙うようにしたら、そこからは割と当たるようになった。

 次に上下の誤差を減らすため、矢をつがえる位置を決めることにした。まず弓の弦に印を付けて、必ずそこで矢をつがえるようにする。そして弓本体というのか、棒の部分に、これまた印をつけた。これで印に合わせて矢をつがえ、印に合わせて狙いをつければ、上下の誤差も減るはずだ。


「よーし! よしよしよし!」


 命中精度が格段によくなった。やっぱり照準器は偉大だ。たとえ粗末な手作りでも。

 調子に乗って訓練のレベルを上げてみよう。サンドイッチマンをやったときの看板に、ロープを追加して振り子になるようにする。それを木の枝に吊して揺らし、狙ってみる。


「……マジか。全然あたらねぇ。」


 驚くべき外れまくりだ。振り子なんて所詮は往復運動。タイミングは一定なんだから、簡単に狙えそうなものだが……全く当たらない。タイミングがズレているのだ。そしてそれを修正することが難しい。今度は「見て」狙うことができない。

 だいたいこのあたりに来たら、このあたりを狙って発射する――という事になる。予測射撃というやつだが、どのぐらいズラせば当たるのか、照準器になるような基準がないために勘で狙うしかなくなってしまう。つまり照準器を手作りする前の状態に逆戻りなのだ。

 やれやれ、弓って奥が深いな……。

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