ゴミ229 達人、警備兵団本部に突入する
12月27日、ニーゲッタ。
警備兵団の本部、その所長室に「植える者」がいるらしい。
本部の中には、警備兵団の皆さんが「植える者」の支配によって強制的に「悪人」に存在進化させられて駐在していらっしゃると。
クソが。
「食べる者」とか「遊ぶ者」とかもたいがいだったが、「植える者」も度し難いな。
「とりあえず制圧っと。」
俺はロープを飛ばして警備兵団の皆さんを縛り上げた。
ロープは「破壊不能」なので、きちんと縛れば脱出できない。
1階は市役所や警察署みたいに壁のない広い部屋がいくつかあって、周囲がよく見える。ロープは縦横無尽に飛び回り、瞬く間に警備兵団を縛り上げた。この間取りは、一般人を相手にするための窓口として機能しているからだろう。いや、機能していた、か。
縛られた警備兵団の皆さんは、それでももがいて叫んで、大変騒々しい。
所長室を目指して2階へ上がると、1階の騒ぎを聞きつけた警備兵団の皆さんが部屋から出てきた。今度は学校みたいに廊下と部屋がきちんと分けられている。
「任せろ。」
狭い廊下に大勢が出て来たので、密集しておりロープを飛ばすには少しスペースが足りない。
だがアローが矢を放つと、その矢は散弾みたいに分裂しながら、すべての兵士に一撃ずつ加えて、電撃でしびれさせていた。
「殺してないよな?」
「もちろんだ。麻痺する用の電撃を使っている。」
スタンガンのそれと同じ。高電圧・低電流ということだ。
強烈な痛みとしびれをもたらすが、命に別状はない。もちろん、電流で細胞が焼けてやけどを負うということもない。
「この分だと私の出番はなさそうですな。」
「『植える者』を譲りましょうか?」
「ふむ……たしか『植える者』は『魔族』でしたな。同じ存在進化4回同士、修行の成果を見せるにはいい相手でしょうな。」
いまさら存在進化1回の「悪人」など相手になるわけもなく、くっちゃべりながら余裕で進んでいく。
そして扉の上に「所長室」と書いてあるのを見つけた。
「お邪魔しまーす。」
ガチャッと扉を開けたその先に、男が1人いた。
「あんたが『植える者』か?」
「そういうお前は、五味浩尉だな?」
言うが早いか、ドバっとあふれるように「植える者」から湧き出した無数の小型生物――
「うわ!」
「きっしょ!」
俺、虫って苦手なんだよなー。クワガタとかカブトムシとかは平気だけど、芋虫とかミミズとかムカデとかはダメなんだ。なのに、「植える者」から湧き出したそれは、何かの幼虫みたいなのがウジャウジャと塊になって動いている。おええええ!
アローも虫はダメらしく、ドン引きしている。
「寄生虫……! 『植える者』だからといって、植えないと使えないわけではないという事ですかな。」
なんという僥倖! オーレさんは平気そうだ。
「ではオーレさん、先ほど言ったとおり、お任せします。」
「うむ。任されましたぞ。
Sランク冒険者、職人、オーレ・ツエー・ブーン、推して参る!」
推参! と名乗り出た直後、すでにオーレさんの攻撃は終わっていた。
ウジャウジャと湧き出していた大量の虫が、まとめて吹き飛ばされ、向こうの壁へ叩きつけられて圧死していた。
そしてバラバラに切り刻まれた「植える者」が、無数の肉片になって床に落ちる。
「ざっとこんなものですな。」
と刀を鞘に納めるオーレさんの向こうで、バラバラの肉片になった「植える者」がモゾモゾと動いて元通りに結合していく。
「治った!?」
「というか、あいつの体そのものが大量の虫でできている……! きっしょ!」
土から作ったゴーレムは、土さえあれば欠損部分を修復できる。よくある設定だ。もっとも、この世界ではゴーレムは見かけないけども。ゴーレムが一般的に見かけるほどなら、ゴッドアでの馬だけ死ぬ病気のときも、わざわざ車を開発することはなかっただろう。
閑話休題。
ゴーレムが土を吸収して自己修復するのと同じことを、「植える者」は虫でやっているらしい。きっしょ!
「まあ、何回でも切り伏せるだけですぞ。」
言うが早いか、オーレさんは「植える者」を再びバラバラにした。さっきよりも細かく。
だが、それでも「植える者」は治っていく。
「無駄だ。」
治りながら、「植える者」が言う。
「この体は、虫で作った偽物……いわば分身に過ぎない。
何度殺されても、虫を召喚して修復できる。」
クックックッ、と笑う「植える者」に……俺は、ため息をついた。
「なんだ、そんな事か。」
「なに?」
対処法は簡単だ。
「オーレさん、もう1度バラバラにしてやってください。
アロー、その直後に召喚を無効化しろ。」
「了解ですぞ。」
言うが早いか、オーレさんがまた「植える者」をバラバラにする。
分身だけあってステータスが低いのか、あるいはオーレさんの剣術がステータスを無視するほど強いせいか、「植える者」は抵抗もできない。
そしてバラバラになった「植える者」がまた元に戻ろうとする間に、アローが近づく。
「これに近づくのかぁ~……。」
嫌そうな顔をしながらも、アローは近づく。
近づくだけですべての魔法は魔力を吸い取られて効果を失う。
もちろん召喚魔法もだ。
虫を補充できなくなった「植える者」は、もう動かなかった。
「あっさりだったな。浩尉の指揮のたまものか。」
「それもありましょうが、いくら何でも手ごたえがなさすぎですな。」
アローが俺を称賛し、オーレさんが敵の弱さを訝る。
「確かに、おなじ存在進化4回同士なのに、あまりに一方的だったな。」
まだ終わっていない……?




