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ゴミ226 達人、武装する

 12月26日、チョーオーカー。

 2000年前の達人・七味唐子さんを頼って特訓した俺たちに、七味唐子さんが武具を差し出した。


「これらの武具は、私の能力で作りました。

 まずは剣です。これはオーレさんに。」


 差し出されたのは日本刀。

 ただし、受け取ったオーレさんが抜いてみると、その刀身は木製だった。


「決して折れず曲がらず、ミスリルやドラゴンの牙よりも魔力をよく通し、オリハルコンをもたやすく切断できるように……と、そう望んで作った植物です。望んで振れば、刀身に流した魔力を斬撃として飛ばすこともできます。

 根も葉もありませんが、これは植物。月に1回ぐらいは水に浸して日光を浴びせてください。この刀は、あくまで植物。生きています。枯れてしまったら、その性能は失われると覚えておいてください。」


 七味唐子さんは何度も植物だと強調して伝えた。手入れを怠ると枯死してしまうのは、俺たちもよく知っている。この訓練中、うっかり鉢植えに水をやるのを忘れていたのだ。結果、今まで爆裂の矢として使っていた鉢植えが枯死してしまった。

 オーレさんは刀を鞘に納め、両手で掲げるようにして頭を下げた。刀礼だ。


「かたじけなく。」


 答えたオーレさんに1つうなずき、七味唐子さんは次に弓を取り出す。


「これはアローさんに。」


 それはシンプルなショートボウだった。

 受け取ったアローが、弓の強さを確かめようと矢をつがえずに引き絞る――と、弓から瞬時に矢が生み出された。まるで枝が生えるようにして、弓から矢が生えたのだ。そして熟れた果実が枝から落ちるように、矢は弓から切り離されていた。引き絞るだけで矢が自動的に装填されるという事だ。


「見た通り、そういう弓です。引き絞るときに望んだとおりに、属性魔法を発揮したり、分裂したり、爆発したり、威力が上がったりします。ただし、強い効果を望めば、その分だけ魔力を吸い取られ、引き絞るのにも強い力が必要になります。

 それから、少しだけ発射後に目標を自動追尾する能力があります。大きく狙いを外して撃つと当たりませんが、多少なら補正してくれるでしょう。

 ただし、これも生きた植物です。決して水やりを忘れないように。水分が失われると、枯死するほどでなくても、矢を作り出せなくなります。100や200の発射で水分が足りなくなるような事はありませんが、決して無限に矢を生み出すものではないという事を忘れないでください。」


 つまり、この弓を使えば、魔道具弓と同じことができる。しかも部品交換が不要だ。自力で魔法を使えないアローにとっては、垂涎の武器というわけだ。何より、動く目標には当たらないという弱点を克服できる。

 アローは弓矢を腰だめに構えて、奇麗に一礼した。


「ありがとう。

 今度は枯らさないように気を付ける。」


 次に七味唐子さんは、俺に向かって手袋を差し出した。


「もちろん、これも植物です。」


 言われて受け取った手袋は、ズシッと重かった。

 まるで鉄でできているような――いや、待て……「達人」の俺が「重たい」と感じるような重量って、いったいどれだけだ? 鉄どころじゃない。


「この手袋は、数を増やしたり、重さを増したりできます。

 特訓の間に見ていて分かった事ですが、五味さんは武器を使うよりも素手で戦うほうが強いようですね。そしてスキルを使った戦いにパワーが足りなくて困っているようでした。なので、この手袋はそれを補います。」


 やはり。七味唐子さんは俺たちの弱点を見抜いて、それを補う武器を用意してくれたのだ。

 オーレさんに渡した刀は、オーレさんが遠距離攻撃の手段に乏しい――市販の魔道具に頼っていて、種族に見合う威力がないことを補うための能力を持っているわけだ。

 アローに渡した弓は、アローの魔法能力を補い、矢をつがえる時間を短縮して連射能力を高める。

 そして俺が受け取った手袋も、今まさに七味唐子さんが説明した通りだ。


 威力=速度×速度×重さ


 俺は特訓中に「自動操縦」で手袋を操り、手数を増やした。手袋に鉄塊を握らせて、そのまま殴ったのだ。スピードはあってもパワーはない「自動操縦」だが、鉄塊の重さを加えれば、スピードを生かして威力を出せる。しかも特訓の結果、俺は「自動操縦」によるスピードを、自分自身で動くときのステータスに匹敵するレベルにまで引き上げることができた。相変わらずパワーはからっきしだが。

 七味唐子さんが用意してくれた手袋は、そのパワーを補い、鉄塊を握らせるよりもっと重くて威力が出るというわけだ。さらにもっと重さを増すこともできる――ならば重さによって「達人」のパワーに匹敵するような威力も出せるかもしれない。


「ありがとうございます。」


 俺は手袋を握りしめ、七味唐子さんに頭を下げた。


「直接戦っても『達人』らしからぬ貧弱なステータスしかない私には、こんな事しかできません。

 でも、人々の平和を脅かす敵を放っておくわけにはいきませんから。」


 七味唐子さんは、さらに3つのブレスレットを差し出した。


「これらは防具です。

 必要なときには生長して身を守り、不要になれば落ち葉のように枯れてブレスレットに戻ります。」


 俺たちはブレスレットを受け取り、装備した。

 試しに使ってみようと思ったのは3人とも同じだったようで、直後にブレスレットが生長し、体に絡みつくように防具になった。剣士のオーレさんはいかにも鎧といったデザインで、前哨狙撃兵のアローはより軽装で動きやすそうなデザインに、そして俺はヒジとヒザから先だけが防具に包まれた。俺が一番軽装だが、素手で殴りこむかスキルで遠距離攻撃するかというスタイルなのだから、動きを制限するような防具はむしろ邪魔だという事だろう。


「最後に、これを。」


 手のひらに乗りそうな、木でできた人形――それが自分で動いている。

 受け取ろうと手を差し出すと、木の人形は俺の手に飛び移り、腕を歩いて肩の上へ腰かけた。


「私の分身のようなものです。この子が見聞きしたものは、私にも伝わります。

 スキルで生み出した植物ですから、私自身よりも戦えるはず……『汚す者』のような能力が相手でなければ、ですが……。」


 2000年前、実際に「汚す者」と戦った身としては心配なのだろう。

 だが、不安を振り払うように首を振ると、七味唐子さんはまっすぐに俺たちを見た。


「どうかご無事で。」


 俺たちは、次の20都市に向かって出発した。

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