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ゴミ22 達人、引っ越す

 さて、ゴミの最終処分という新しい仕事を得て、収入のめどが立った。

 今までも大工の手伝いで収入はあったが、大工が扱う資材はどれもゴミではないから、俺のスキルが反応しなかった。となれば俺はただの人となる。大工としての知識も経験もない素人が、筋力すらも満足に鍛えていないというのだから、支払われる給金も相応に低い。

 事実、今日まで俺はテント生活を続けている。給金は食費に消えていく。野菜や調味料を買って終わりだ。釣った魚と買った野菜で食いつないでいる状態だ。ちなみに、初めての給金で火打ち石を買った。弓錐式発火法よりも簡単に火が付けられるようになって、非常に助かっている。

 今度からは、新しい仕事を得て、まともな収入を期待できるようになったから、これでようやく人間らしい生活ができるだろう。

 まずは基本となる衣食住の充実だ。

 といっても、衣類はタオルで拭けばピカピカになるし、破壊不能チートが働いていて少しも劣化しない。おまけに作業服は防御チートが働いていて、安全のためには手放せない。つまり衣類の替えは必要ないので衣服は買わなくていい。

 食事のバリエーションは増えるだろう。肉を買う余裕が出るし、外食することも可能になるだろう。自炊のレパートリーはそんなに多くないから、非常に楽しみだ。とりあえず虱潰しに試して、いい店を探すところからだな。本当に楽しみだ。

 そして最も問題になるのは住居である。やはり「まともな生活」といえば、住所が定まっていることが求められるだろう。とりあえずどんな物件があるのか、不動産屋へいってみる事にした。


「ご予算の範囲ですと、このあたりが最も良い物件になりますね。

 ちなみに、こちらは平均的なものです。

 安く抑えたいという事でしたら、このような物件もありますが。」


 と、10件ほどの資料を見せてくれた。

 まず「最も良い物件」として紹介されたのは、中古の一軒家だ。間取りも充実していて、便所や風呂が備わっている。さすがに庭付きとはいかないが、住み心地はよさそうだ。ただし値段が高い。

 次に「平均的なもの」として紹介されたのは、アパートだった。それなりの面積があって、便所も備わっているが、風呂はない。風呂に入りたければ風呂屋へ行けということだ。

 最後に「安く抑えたければ」と紹介されたのは、テラスハウス――日本風に言えば長屋だ。面積はアパートより狭く、玄関から奥へ伸びるように細長い間取りになっている。そして便所も風呂もない。じゃあ、どこで用を足すのかというと、敷地内に共用の便所がある。

 あとは希望の暮らしと予算で相談する――と、その前に、俺にはもう1つ問題がある。


「賃貸契約に連帯保証人は必要ですか?」

「そうですね。多くの物件には必要になります。

 ただ、こちらのようなお安い物件を中心に、保証人なしで借りられるものもございます。」


 そう、俺には連帯保証人になってくれるような人がいない。


「保証人なしで借りられる範囲では、どんな物件がありますか?」

「そうですね……保証人なしで、となると、一番いい物件でもこのあたりになりますが。」


 と差し出されたのは、テラスハウスの資料だった。

 やはり、そうなるか。

 風呂なし、便所なしで、部屋も狭い。安かろう悪かろうの物件だ。とはいえ、テント生活に比べれば天国とも言える。


「では、いくつか実際に見せて頂きたいのですが。」





 月末に初めてゴミ処理の報酬を受け取って、その金でテラスハウスを契約した。翌月からようやく、まともな暮らしのスタートだ。

 しかし、分かってはいたが、狭い。テントに比べれば広いが、家だ部屋だと思うと、つい日本で住んでいた家を思い出してしまう。田舎暮らしの庭付き一軒家だったからな。雲泥の差だ。ああ、でも県人寮の部屋よりは少しだけ広いかも? 一応キッチンがあるし。間取りとしては「1K」だ。県人寮が「K」がないただの「1」だったのと比べると、やや広い。


「はぁ……。」


 いつかは戸建てに住みたいものだ。隣の住人を気にして、うるさくしないように気を遣って生活するというのは、どうにも窮屈でたまらない。そういう意味ではテント生活のほうが解放感があった。


「……まあ、流されたり襲われたりしないで済むだけ進歩か。」


 とりあえず、ぐっすり寝よう。

 ああ、そうだ……寝るといえば寝具が必要だ。買いに行こう。

 何もかもゴミ袋の中に収納してあるから、引っ越し作業がない。とても楽だ。


「とりあえず掃除するか。」


 室内にはホコリがたまっていた。安物の物件だからオーナーも手入れをサボっているのだろう。まさに安かろう悪かろうである。

 ところで……掃除というのは、つまりゴミを取り除くこと。掃除=ゴミ拾いだよな? 川の水をつまみ上げるように、部屋のホコリをまとめてつまみ上げるというわけには……いかないか?

 ……。

 …………。

 ……………………そうか。ダメなのか。


「……はぁ……。」


 残念だ。

 普通に地道に掃除するしかない。とりあえず雑巾がないからタオルを使おう。

 フキフキ……。


「おお! そうか、そういう事か!」


 火ばさみでホコリをまとめてつまみ上げる事はできなかったが、タオルで拭いたら見違えるようにピカピカになった。そういえば服の汚れも体の汚れもタオルで拭き取っているのだから、部屋の汚れだって同じだ。状況に合わせて道具を選ばないとダメだな。

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