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ゴミ21 達人、面会する

 あれから手続きを踏んで、今日はいよいよ領主との面会の日だ。

 城ほどではないが立派な館、控えめに言って豪邸だ。門から玄関までが50mぐらいあって、芝生の庭が広がっている。中央に噴水があって、そこから十字に石畳の歩道が整備されている。観葉植物や花が植えられており、整えられた人工的な美しさ――幾何学模様的な美観があった。おそらく専門の庭師による手入れがなされているのだろう。

 屋内に入ると、これまたどこを見ても「豪華」という言葉しか出てこない。玄関ホールは体育館みたいに広く、天井も5mじゃきかないぐらい高い。フカフカのカーペットが敷いてあり、よく分からない彫刻やら絵画やらが飾ってある。壁や柱の装飾さえも、見るからに高級そうだ。

 ちょっと迷いそうなぐらい広い屋敷の中を案内されるままに進んでいくと、やがて1つの扉の前に到着する。案内してくれた執事の人がドアをノックして、中から返事が聞こえてきた。


「入れ。」


 執事の人は黙ってドアを開き、うやうやしく頭を下げる。

 さあ、どうぞ、と言わんばかりの仕草だ。


「失礼します。」


 ちょっと気圧されながら一言断って、俺と神父様は部屋に入った。

 その部屋の中もまた高級感に溢れている。あえて近い雰囲気のものを探そうと思ったら、そう、学校の校長室だ。正面の壁に大きめの窓があり、その手前に重厚な机。そのさらに手前に低いテーブルを挟む形でソファが置かれ、ソファの背後、左右の壁際にはガラスの戸をはめ込んだ棚が置いてある。焦げ茶色の木でできた調度品が多く、全体的に重厚で高級な印象だ。床に敷かれたカーペットも、玄関ホールのものより落ち着いた色合いである。

 重厚な机の向こうで、「社長椅子」とでも呼べそうな革張りの椅子に座っている壮年の男。彼が領主だろう。


「本日はお忙しい中、お時間を頂きましてありがとうございます。

 私が面会を希望した五味浩尉と申します。

 こちらは隣村の神父様で、今日の話を補助してもらうために同席をお願いしました。」


 俺に続いて、神父様が名乗る。

 領主が重々しくうなずき、名乗りながら椅子から立ち上がった。

 ちなみに2人とも名前が長すぎて覚えられない。2人だけではない。大工も商人も、この街の人たちは、みんな名前が長すぎる。その理由は、この街の――というか、おそらくこの国の人たち全員がそうだろうが、名前の構造にある。彼らの名前は、「自分の名前+父親の名前+母親の名前+父方の祖父の名前+父方の祖母の名前+母方の祖父の名前+母方の祖母の名前」というのが基本構造になっている。名前が出自を表わしているため、そこそこ大きい街でも3代続けて住み続けていたら、名乗るだけで多くの人に「ああ、あの人の子供か」とか「あの人の孫か」と分かって貰えるのである。

 とりわけ領主は、この長ったらしい基本構造の他に、ミドルネームとか洗礼名とか称号とか祖父母よりさらに先祖の名前とかがゴチャゴチャと入っていそうな感じの、とてつもなく長い長い名前だった。寿限無(じゅげむ)やピカソのフルネームみたいな感じの長さだ。ピカソのほうは本人さえも自分の名前が覚えられなかったという話があるが、その点彼らは大したものだ。


「まあ、腰掛けてくれたまえ。」


 と俺たちに座るように勧めながら、領主様もソファへ移ってくる。

 メイドがやってきて、お茶を出してくれた。


「それで……ゴミの処理に関する話だったな。」

「はい。今の方法では、すでに問題が起きています。」


 そう告げて、俺は神父様を見る。

 神父様はうなずいて、言葉を引き継いだ。


「西の平原でゴミを焼却・埋め立てしていますが、そこから出た毒素が地中を伝わって川の水に入り込み、それが運ばれて下流の村に被害が出ています。

 具体的には、作物があまり育たないとか、村人がよく腹を壊すとか。赤ん坊と年寄りの生存率も悪く……。」

「待ってくれ。それは本当にゴミのせいなのか?

 食糧事情や衛生環境が影響しているのではないのか?」


 領主様が疑問を呈する。それは当然のことだ。

 1つの結果に対して複数の原因があるというのは、よくある事だ。そして、小さな原因は無視できる程度の影響しかない事もある。


「すでに街の住人は『西の平原の肉を食うと腹を壊す』と噂しており、西の平原でとれた肉は売れなくなっています。」

「私もゴミが原因だとは思わず、色々と試していました。

 ですが、何をしても効果がなく……しかも、これをご覧下さい。」


 神父様は、村から持ってきた水と土と作物を取り出した。

 そして解毒の魔法をかける。


「デトキファイ。」


 水と土と作物から黒いガスのようなものが出て、消えた。


「なんと……!」


 領主様が驚く。そして、うーんと考え込んでしまった。


「ご覧の通り、解毒の魔法が効果を発揮しています。

 つまりは毒が混じっているという証拠で……ああ、もちろん、これらは私が村から持ってきたものです。」


 うむ……と重々しい様子で考え込む領主様。

 今度は俺が口を開く番だ。


「水を飲むときや食事をとる時に、いちいち解毒魔法をかけて回るのは現実的ではありません。

 ゴミの処分方法を変えなくては、下流の村は被害を受け続けます。

 そこで提案なのですが、私がゴミを引き取ろうと思います。もちろん報酬は頂きますが。」

「ふむ……? 君に任せると、どうなるのかね?」

「引き取ってこちらで処分します。

 処分方法としては、燃やしたり埋めたりするのではなく、魔法の鞄に収納して死蔵します。ですので毒素が広がる心配はありません。

 さらに、将来的には、収納したゴミを種類別に分類し、再利用する予定です。たとえば金属のゴミだけを取り出して、溶かしてまとめてしまえば、再び金属製品に加工できます。金属の質は悪くなると思いますが、ドアに使う蝶番とか、看板を吊す留め具とか、その程度のものには利用できるはずです。資源を再利用することで鉱山からの採掘量を減らしても需要に応じられるようになり、鉱山の寿命が延びます。」


 魔法の鞄をゴミ捨て場として使うことに驚かれたが、ゴミしか入らない魔法の鞄なのだと説明し、実演してみせることでようやく納得してもらった。

 結論を言えば、契約は成立した。俺は今後、この街のゴミをすべて引き取る。今までの回収業者には、集めたゴミを平原に放置してもらう事になる。燃やしたり埋めたりしないでもらうのだ。そしてさらに、俺はすでに埋め立てられたゴミも掘り起こして回収する。そうしないと下流の村の健康被害は解決しない。

 当然すでに埋めてしまったゴミの量は膨大で、全部掘り起こして回収するとなると、年単位の仕事になってくる。新しく捨てられるゴミもすべて回収しなければならないので、街が滅びでもしない限り、これは一生の仕事になるだろう。大工の手伝いではあまり活躍できず給料も安かったが、これでゴミ拾いスキルを武器にしてまともに生計を立てることができるようになった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これ主人公が死んだ場合、集めたゴミがその場でぶちまかれるんですよね? もし主人公がこのまま異世界で人生を全うしたら、大変なことになりそうですね。
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