ゴミ206 達人、ザンドリフに行く
9月20日、ザンドリフ。
18日にリモーラからザンドリフへ移動。位置的には、リモーラから東へ20㎞ぐらいだが、そこには湾があるので、海岸沿いにぐるっと回り込んで進む。55㎞ぐらい。徒歩12時間ほどだ。休まず10㎞/hで進めるゴミ馬車なら5時間半だ。そのまま領主にアポをとって、宿屋に1泊した。
ニアベイで手に入れた小舟を使って湾を横切る手もあるが、それはやめた。ディバイドの領主にも止められた通り、危険だ。水上では急停止できないし、大型船の近くでは小舟が大きく揺れるような波が起きる。こっちが転覆するぐらいならいいが、ぶつかったら、俺たちは無事でも、相手の船がどうなるか分からない。
19日はやることがないので観光した。大きな花畑のある公園で、アイスクリームの屋台が出ていたので買ってみた。よく分からないが何かのフルーツが混ぜてあるらしく、ウマかった。ちなみに、屋台の商人は氷魔法が使えなかった。冷凍魔道具を猫耳商会で買ったらしい。
そして20日、約束の日になったので、俺たちは領主に面会した。
挨拶と自己紹介を済ませ、さっそく本題に入る。
「では、ゴミ処理場へご案内しましょう。
20都市のみに限定して、他の都市からはゴミを回収しないという話でしたな?」
「はい。ですが、単に全国を巡るだけの時間が足りないという理由ですので、たとえば他の都市から20都市へゴミへ運んできた場合には、それも回収します。」
「なるほど。
いえ、私が言いたいことは、ゴミ処理場がザンドリフだけで19か所あるという事なのです。」
19……多いな。
そんなに大量のゴミが出るのだろうか? 確かに人口は多いが……いや、小規模な施設で少量ずつ処分しているのかもしれない。1か所に集めて大規模な魔法で一気に処理するより、分散して小規模な魔法で処理したほうが、担当者が交代するときにも交代要員を見つけやすいだろう。ゴミ処理が好きな特別に強い魔法使い、なんていう酔狂な人材を探す必要がなくなる。そこそこの給料で働いてくれる、そこそこの腕前の魔法使いで十分だ。
そう考えると、1か所で処理している都市のほうが非効率だ。今の担当者が引退するときになったら苦労するのだろう。いや、もう俺が代わりにやっていれば交代要員はいらないわけだが。それだって俺がいつまで生きられるか分からないしな……。同じ達人の七味唐子さんは2000年前からずっと生きているが、俺も同じかは分からないし、同じだとしても、いつ死ぬか分からない。ま、その先のことは猫耳商会のリサイクル事業に期待するか。
「順番に案内をお願いできますか?」
「ええ。そのつもりでいます。長丁場になりますので、お覚悟を。」
というわけで、ゴミ処理場へ。
腰のゴミ袋からゴミ箱を1つ取り出し、「自動操縦」「自動収集」のコンボで処理場のゴミを収納していく。
「自動収集」はゴミ箱から半径1㎞の範囲内にあるゴミを一瞬で収納する。圧倒的な早さで、処理場からゴミが消えていく。とりわけ、このザンドリフでは、19か所もゴミ処理場がある分、1か所あたりのゴミ処理場の大きさはそれほどでもない。今ある分のゴミは、ぜんぶ今日中に片付いてしまうだろう。
そうして俺たちは、19か所のゴミ処理場を順番に巡っていった。
そして、俺はゴミの中に不審物を見つけた。
収納されたゴミは、「素材鑑定」で鑑定される。「自動分別」で分解されたゴミが「正体不明の謎の素材」を出すこともあるが、それは俺の知識にない物質というだけのこと。「素材鑑定」は「自動分別」で分解する前だろうとも、「どのような素材でできているか」を鑑定する。
そして「素材鑑定」によると、とあるウイルスが見つかった。ヒルテンで捕まえた校長が持っていた生物兵器と同じものだ。
「……ああ……そういう……。」
理解した。
ヒルテンであの校長が魔族の信奉者みたいになっていたのは、そういう事か。
「どうしたんだ?」
アローが尋ねる。
「リベンジマッチの2回目ってことだ。
ノースナインで倒した導師みたいな能力者がいるらしい。」




