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ゴミ16 閑話 大工もとい教師の男

言葉が通じない感じを表現するために、意味の分かりにくいカタコトを使っています。

分かりにくいとは思いますが、たぶん今回だけなので、辞書を片手に英語を和訳していた中学生時代とかを思い出しながら、眉間にしわを寄せつつ首をかしげながら我慢して読んで頂けると幸いです。

 向こう1ヶ月ぐらいはメシと酒ぐらいおごらないと、俺の立つ瀬がない。

 あわや骨折、悪くすれば死ぬかもしれない場面を助けてもらった俺は、ゴミ拾いのおっさんを探して感謝を伝えようと決めた。

 助けられた当日もメシをおごるからと伝えたんだが、俺たちは大工。仕事を途中で放り出すわけにもいかないので、その日は夕方まで働いた。だから行きつけの酒場を教えて、そこへ来てくれるように頼んだのだが、彼は指定した酒場には来てくれなかった。あとで聞いたら、そのときは何を言われたのか理解できなかったのだそうだ。

 どこか遠い国から来たのだろう。彼はひどく言葉が苦手だった。市場で聞いて覚えたというわずかばかりの言葉しか通じない。おかげで意思の疎通には苦労した。助けられた当日にもその事はある程度察していたから、俺は彼に言葉を教えることにした。

 この国で生まれ育った者に換算すると、彼の言語能力は1歳児ぐらいだ。




 1ヶ月後には、彼の言語能力は2歳児ぐらいになった。

 2歳児といったら「ワンワン、おっきねぇ」などという具合に、2語で話せるようになる。もちろん彼は中年なので、ワンワンなどという幼児言葉ではなく、犬なら犬と普通の言葉を教えた。

 彼は中年だから2歳児とは比較にならない思考力・理解力があるし、しかも意欲的だが、それにしても驚くべき早さで上達している。


「だいぶ、話す、できる、なった。ありがとう。

 これで、仕事、探す、できる、ます。」


 ざっとこんな具合だ。

 ……え? 仕事探すの?


「仕事が欲しいなら、俺のとこで働けばいいよ。」


 柱を片手で持ち上げるあのパワー。

 大工としては素人でも、あのパワーは頼りになる。





 だが、そうウマくはいかなかった。

 俺を助けてくれたあのときは片手で柱を持ち上げたのに、仕事として現場へ連れて行ってみたら、柱が持ち上がらないのだ。彼も不思議そうにしていた。


「なんで……ああ、ゴミ、ちがう、から?」


 などと訳の分からない事を言い、


「小銭、貸して、ほしい。銭貨1枚。すぐ返す。」


 とか言うので、何をするつもりなのか興味が湧いて、銭貨1枚を貸してやった。

 彼はそれを、いつも持っている薄い袋に入れた。

 大きな薄い袋に、銭貨1枚が入る。

 別に不思議なことは何もない。


「やっぱり。」


 彼は何やら納得したようだ。


「なにが『やっぱり』なんだ?」

「ああ、助かった。ありがとう。」


 銭貨1枚を返された。

 それから彼は、木の削りカスを拾った。


「見て。」


 彼が削りカスを袋に入れると、削りカスは消えてしまった。


「え? あ……え? まさか……魔法の鞄なのか……!?」


 あんな超高級品を持っているのか!? なんで!? いや、なんで持っているかは問題じゃない。持っているのに、なんで浮浪者みたいな生活なんだ? 荷物持ちとして商人でも冒険者でも貴族でも、どこにでも雇って貰えそうなものだ。浮浪者になって他国まで遠く流れてくる理由なんかないだろ。


「似てる、けど、ちょっと違う。

 手、離すと、中身、全部、飛び出す。今の、確認、ゴミ、だけ、入る、分かった。」

「ゴミだけ入るって……?」


 だから削りカスは入ったのに、お金は入らなかったと……?

 なんだ? 微妙に……いや、すごく残念な感じじゃないか……?


「俺の、スキル、『ゴミ拾い』。

 重さ、無視して、持ち上げる、ゴミ、だけ。

 あのとき、柱、持ち上げた。なんで? あの柱、もうゴミ、思った、から。倒れる、傷つく、使い物、ならない。」


 なるほど。よく分からない理屈だが、あのときはそっと降ろしてくれたから、柱も無事だった。

 ……待てよ? それじゃあ、あのときの俺もゴミとして扱われていたわけか? だって俺の重さを無視して持ち上げていたよな? まあ、骨折なんかしていたら大工としては働けないが……それにしても、怪我人になるかもしれないというだけでゴミ扱いはひどくねぇか!?


「たぶん、あんたの重さ、無視、できた、なんで? 柱の重さ、釣り合っていた、から。」

「え?」

「俺、重さ、無視する。でも、重さ、なくならない。

 まだ、傷、ない、柱、ゴミだった、なんで? あんたたち、大工、『あの柱、もうダメ』、思った、から。割と、上、受け止めた、から、柱の重さ、あんたの重さ、釣り合った、バランス、とれた。

 もっと、下、受け止めたら、加速する。あんた、地面、ぶつかった。」


 倒れ始めたところで柱が光って、地面に置いたら光らなくなったから、たぶんそういう事だろう、などと言っているが、意味が分からない。なんだよ、柱が光るって? しかも、別に光ってなかったぞ?

 まあ、それはどうでもいい。

 しかし、ぞっとする話だ。要するに、俺が助かったのは恐ろしく運が良かったというだけの事じゃないか。ちょっと違う部分を受け止めていたら、俺はむしろ普通に落ちるより大怪我だったかもしれないと……こえーよ!

ブクマとか評価とかしてくれた方々、どうもありがとう。(*・ω・)*_ _)ペコリ


先日、作中まえがきでお知らせした通り、1章完結までは書き終わっています。

昨日、2章の大筋ができあがって、書き始めました。

カタカタ・・・\_ヘ(´ω`) ウヘヘ♪

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― 新着の感想 ―
[気になる点] う~ん・・それだったら川の水もゴミじゃないから掴めないと思うのよ。
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