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ゴミ15 達人、教師を得る

 逃げ帰って街のすぐ外、いつものキャンプ地へ。

 今夜もここで寝るとしよう。

 まずは火をおこし、フライパンに水をくんで、明日の飲み水を作る。

 時間も遅くなってきたので、今度はフライパンの水が沸騰するのを待っている間に、テントを立ててしまおう。

 テントを立て終わった頃には、フライパンの水も沸騰している。煮沸消毒には5分間の沸騰が必要だから、このままあと5分待つ。

 その間に、服を脱いで体を拭き、衣類も拭いて綺麗にする。冬になる前にこの方法を見つけておいて良かった。さもなければ真冬にも裸になって濡れタオルで体を拭くことになっていただろう。濡れタオルで体を拭いても肌は濡れないが、触ればタオルが濡れているのは分かるので、ひんやりするのだ。真冬の川の水でそんなことをすれば、凍るような冷たさだろう。風邪を引くかもしれない。

 次にフライパンを火からおろして、火の後始末をつける。川の水を火ばさみでつまんで持ってくればいいだけだ。火ばさみから離すと、川の水はバケツでぶちまけたように落ちて火を消してくれる。

 テントの中に小石を並べて五徳を作り、そこにフライパンを安置して、できるだけ離れた場所で横になる。段ボールとビニール袋をかぶって、就寝だ。





 顔に濡れたものが当たって目が覚めた。

 見ればテントの穴から水が落ちてくる。雨だ。


「なるほど、こうなるのか。」


 ちょっと穴があいただけのテントを捨てるなんてもったいないと思ったが、これじゃあ使い物にならないな。むしろ、このテントを捨てた奴は、雨が降りそうな時にもキャンプをするガチ勢だったという事に驚いている。俺ならそんな時にまでキャンプをやろうと思わない。

 時刻は午前4時から5時ぐらいだろうか。空が明るくなり始め、大地はまだ夜の暗さに包まれて黒く塗りつぶしたようにしか見えない。起床するにはまだちょっと早すぎる時間だが、テントの中に水がたまってしまうと後始末が大変だ。撤収しよう。

 最近のテントは、内部と外部の二層式になっていて、おかげで雨が降ってもテントの中まで水が入ってこないようになっている上に、設置するのも簡単だ。本当ならテントに穴があいても、内外のテントどちらかが無事なら雨漏りしないはずである。残念ながらこのテントは雨漏りしてしまうほど見事に穴が2つとも貫通しているが。次からはフライシートの穴がインナーテントとズレるように設営するか。


「おっと……これはこれは……。」


 テントを撤収するためにテントから出ると、川が増水していた。もう少し遅ければ、テントもろとも水に飲まれていたかもしれない。川辺にテントを張るのも危険ということか。上流だけ大雨が降ったら、気づかないうちに流されるな。今夜からもう少し川から離して設営するか。

 フライパンの水を水筒に入れて、テントも片付け、撤収完了。街へ入るか。





「……マジかー……。」


 そりゃそうだ。

 こんな早い時間だもんな。

 街は外壁に囲まれていて、魔物の襲撃に耐えられる防御力がある。出入り口には門があって、門番が見張りをかねて立っている。

 なのだが、昼間は開いている門も、夜の間は閉まっている。そして今も。まだ門を開ける時間じゃないという事だ。


「しょうがないな。とりあえず雨宿りぐらいはできるか。」


 外壁の厚みに比べて、門の厚みは小さい。だから門に身を寄せれば、外壁の厚みの半分ぐらいの屋根を得られる。





 門が開いて、俺は街の中へ。門番にはちょっと変な目で見られた。開店前に店に並ぶ客じゃあるまいし、門が開く前に街の前に並ぶなんて。待っている間に魔物に襲われたらどうするのか。その場合、当然門は開けてくれない。街の中に魔物が入り込んだら大変だから。

 まあ、このあたりは小動物みたいな大人しくて弱い魔物しかいないから、よほどそんな事にはならないだろう。

 さて今日もいつも通りにゴミ拾いを始めよう。まずは市場からだ。





「おい、あんた。ゴミ拾いの。」


 市場でゴミ拾いをしていると、声を掛けられた。

 振り向くと、見覚えのある顔だった。50歳台のおっさんである。


「ドーシタ?」

「あんたを探してたんだ。

 俺は、#$%あんたに助けられた$&だよ。」

「ああ……。」


 あのときの大工か。#$%は一昨日、$&は大工という単語だろうな。

 道理で見覚えがあるはずだ。


「それで……」


 おっと、日本語じゃダメだ。


「ドーシタ?」

「おつりを返そう。

 あんたの#$が安ければ、食事をあげるだろうと思う。」


 ちょっと意味が分からないな。

 「おつりを返す」じゃなくて、たぶん「お礼をする」的な意味だろう。

 「#$が安ければ」も意味が分からないが、「都合が良ければ」ぐらいの意味か? とすると、全体の意味は「あんたさえ良ければ、メシでもおごろうと思うんだが」みたいな感じか。


「ホントカ?」

「ああ、本当だ。

 それに、%$がまだ苦手みたいだし、#$が安ければ教えるだろうか?」


 大工は口の前で手をパッパッと開いたり閉じたりする。仕草の意味は「話す」とかそんな事だろう。という事は、「%$がまだ苦手」というのは「言葉(話すこと)がまだ苦手」という意味か。

 つまり俺に言葉を教えてくれると!? おお! なんていい人だ!


「アリガト。」


 合掌して本気で拝んでおく。神様・仏様・大工様だ。

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