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ゴミ13 達人、実験する

 広場で拾ったゴミは、唐揚げの屋台で買い物した客がポイ捨てした紙袋だった。

 紙袋。これが重要だ。より正確に言うなら「袋」という事が重要だ。さらには、内部に空の容器が入っている。これも重要だ。


「スキルの検証ができる……!」


 かねてからの疑問が解決できる。

 つまり、この世界で新しくゴミ袋やゴミ箱を手に入れたら、俺の「技能:ゴミ拾いLV3」はどこまで効果を発揮するのか? ということだ。

 とりあえず両方とも光って見えるからLV1の効果は出ている。

 紙袋に、ゴミを入れてみよう。


「おお……!」


 紙袋をゴミ袋として使おうと思ったとたんに、内部の空容器が消えた。紙袋がチート化して「絶対に収納する」効果がついたらしい。つまり「技能:ゴミ拾いLV2」の効果が出ているわけだ。


「ならば、次に……。」


 紙袋を破ろうとしてみる。破れないようなら、「技能:ゴミ拾いLV3」の効果が出ているとみていいだろう。つまり破壊不能だ。

 紙袋の端を両手でつまんで、前後に引っ張ってみる。爪を立てて切り口をハッキリさせると破りやすいはずだった。……だが、破れない。いくら力を込めても無駄だった。


「やった……!」


 これは素晴らしい発見だ。

 もしもゴミ袋や火ばさみを失っても、この世界で新しく手に入れればいいという事になる。究極的には、2日目に絡まれたチンピラよりヤバい相手に絡まれた場合にも、道具を囮にして逃げればいいという事になる。

 そして、もっと言えば、たとえ木の枝だろうと、それを俺が「火ばさみの代わりに使う」と思えば、それは掃除道具になるはずだ。実際に使ってみた実績が必要かもしれないが、つまり破壊不能のチート道具を作れるという事である。

 ゴミ拾いに関係しなければチート化しないのだろうが、だとしてもこれは強力なアドバンテージだ。たとえば「もう武器になるものを持っていない」と思わせて、実はゴミを拾って武器にできる、みたいな。

 ……いや、待て。俺は何と戦うつもりなんだ? この世界は現実。ゲームじゃないんだ。無茶はしない。戦わないで済むなら戦わない。生き延びるのが第一目標。そして、できれば何かいい目を見るのが第二目標かな。だが無双してハーレムを作る的なアレは必要ない。女が欲しければ風俗街へ行けばいいのだ。こっちの世界だって、探せば二輪車・三輪車・大輪車を楽しめる店はあるだろう。

 まあ、それをやるには大金が必要だが。ああ、カネが欲しい。


「さて。」


 紙袋ならOKという事は分かった。

 次は空容器だ。袋ではなく容器。つまり、ゴミ袋ではなくゴミ箱。これはどうなのか? どこまでがゴミ箱として認識されるのかという問題もある。容器なら何でもいけるのか、ある程度の深さがないとダメなのか、過去の例として他の人にもゴミ箱として使われた事がないといけないのか?


「実験材料として使うのは、こちらの小石ィ!」


 無駄にテンション上げていこう。できれば爆発のエフェクトとか欲しいな。落雷でもいいよ。

 ちなみに地面の小石は光って見えない。小石は地面を構成する一部という扱いなのか、ゴミとして光らないのだ。ただし瓦礫なら光る。前に助けた大工の男。あのときに見た。木の削りカスとか、基礎工事のときに出てきて取り除かれた岩(敷地の端っこでうずたかく積まれていた)とか、そういうのはゴミとして光るのだ。そうじゃない、地面に落ちているだけの小石は光らない。ただ、拾ってみると「地面の一部」じゃなくなるせいか、とたんに光るんだよな。たぶん、うずたかく積まれていた岩も、地面に埋まっている間は光らなかったのだろう。

 ま、それはともかく。拾った小石を空容器に入れてみよう。


「消えたァ! やったー!」


 これで容器なら何でもいけそうだという事が分かった。

 では次に、木の枝を実験してみよう。火ばさみの代わりに使えるか? いや、何ならゴミ袋の代わりに使えないか? 木の枝なんて元々が火ばさみじゃない。箸のように使う技術があってこそ成り立つが、ものは単なる2本の棒だ。火ばさみの代わりに使うという「思い込み」が、ただの棒を火ばさみたらしめるわけだ。

 であれば、ただの棒を袋だと「思い込む」ことで、ゴミ袋のように魔法の鞄的な効果を付けられないだろうか? もし可能なら、挟むと同時に収納できる。それはとても便利だ。何なら棒は1本だけでも火ばさみだと「思い込む」ことで、棒で触れたら収納するとか、棒で触れたらくっついて拾えるとか、そういうデタラメな事が起きるかもしれない。


「レッツ・トライ!」


 まずは今までに拾ったゴミの中から、棒として使えるものを2つ取り出す。

 次に、それを使って川の水を掴んでみる。火ばさみなら掴めたのだから、同じ事ができたら成功だ。


「おお! 大成功!」


 川の水が持ち上がった。川の流れが空中へ持ち上げられ、うどんをつまんだ時のように重力を無視して流れている。

 よし、火ばさみとして使える事はわかった。

 ならば次に、ゴミ袋として使えるか? この世界に来てから最初に拾ったゴミ――小さい空き瓶を取り出し、木の棒で拾ってみる。


「収納! ……収納ッ! ……収納しろ! ……入れ! ……ダメか。」


 ダメだった。

 やっぱり道具本来の性能しかチート化しないようだ。ということは、魔法の鞄的なチート効果がつくためには、少なくとも容器として使える形状でなければならない。

 ……となると、タオルはどうなんだ? 風呂敷の代わりに物を包んでまとめる事は不可能じゃない。そしてもちろん風呂敷は日本古来からの伝統的な「容器」だ。


「レッツ・トライ!」


 まずはタオルを広げて、その上に空っぽの小瓶を乗せる。このまま包めば――


「……ダメか。」


 包んでも小瓶は消えなかった。

 ということは、雑誌を紐で縛ってまとめるような形式では「容器」と判断されないわけか。

 まあ、ともかく、これでむしろ安心できる。タオルで収納ができたら、頭に巻いている間に頭が収納されたり、首に巻いている間に首が収納されたりして、うっかり死んでしまうという事はないわけだ。うん。良かった良かった。

 ちなみに、棒1本だけではチート化しなかった。残念。

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