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ゴミ117 閑話 ???

 2度目の水害を()()()()ことで、アイルの軍需産業は大きなダメージを受けた。

 奴はまた3日で瓦礫や泥を除去してしまったが、領主の資金は先の助成金で大きく減少しており、今度は助成金を出せない。街の住人が生活や産業を立て直すには、今度こそ時間がかかるはずだ。

 心が折れて自殺してしまう者が増えたのはちょっと痛いが、仕方のない犠牲だ。


「とりあえず、これで時間は稼げたか……。あとは――」


 しかし、廃棄物処理特務大使――奴は弓矢工場と手を組んで、何やら作り始めたようだ。

 どうやら水害が「何者(わたし)かの仕業」という事に気づいたらしい。やはり2度目の水害を起こすのはリスキーだったか……。

 それでも、この国の軍需産業の進歩を押さえ込むためには必要なことだった。

 だというのに、奴は外部に応援を求める様子もなく、工場と手を組んで何かやっているようだ。何をやっているのか? 当然、私を倒すための算段をつけているのだろう。それを弓矢工場と一緒になってやっている意味は、要するに新しい武器を作っているという事に違いない。

 新しい武器……とんでもない事だ。私の身が危険になるだけでなく、軍需産業の進歩を抑えるという目的に照らしても、無視できるものではない。


「奴だけが問題だ。何とかしなければ……。」


 最も簡単な方法は、3度目の水害を起こすことだ。こちらの手の内をさらさずに済むし、もしかすると水害を起こす以外に能のない相手だと思ってくれるかもしれない。

 何度やっても奴はすぐに復旧させてしまうだろうが、何度だって潰してやればいい。


「とはいえ……水害ばかりに頼るのは問題だな。」


 あまり何度も繰り返すと、アイルの街そのものがつぶれてしまう危険もある。軍需産業の進歩を抑えるという目的のためには、このアイルの街に軍需産業が集中している状態が望ましい。ここで一元管理できれば、進歩を抑えるために適度に水害を起こすだけで事足りるのだ。

 だが、あまりに何度も水害を起こすと、アイルは水害が多い街だから安定して操業を続けられないと判断され、軍需産業がよそに移ってしまう。悪くすれば各地に分散することになる。そうなったら、あちこちを適度に叩いて回らなくてはならなくなる。それは非常に面倒だ。

 そういう意味で、自殺者が増えたことは痛い。一部の住人は、心が折れている。自殺までしなくても、もうアイルではやっていけないと、アイルを出ていく者もいる。ごく一部だが、産業まで出て行ってしまうことになるから、一元管理という意味では痛手だ。


「何とか奴だけを排除できればいいが……。」


 正直、それは難しいだろう。なんといっても、種族が達人だ。存在進化6回分のステータスは馬鹿にならない。川の水を持ち上げるというから警戒していたが、私が操る水は持ち上げられないようで、そこだけは安心材料だが、かといって奴を排除するほどの攻撃力があるかといわれると、ちょっと自信がない。奴は「達人」にしてはあまりステータスの高さを見せていないが、隠しているだけ、必要以上にステータスに頼っていないだけ、という可能性もある。

 それに対して、私はまだ存在進化3回の「魔人」だ。「人間」から「悪人」「極悪人」を経て、その次に「魔人」になる。存在進化の回数に比例してステータスは高いが、「達人」と比べると雲泥の差――もちろん私が「泥」のほうだ。油断はできない。


「……やはり難しいな。」


 ならば、からめ手――奴が手を組んでいる弓矢工場を襲うか? 街全体を襲撃するのと比べれば、工場1つを襲撃するほうが威力を集中できる。ちょっと頑丈に作られている程度の建物なんて、根こそぎ押し流して破壊してしまえばいい。

 水害がただの災害ではないことはすでに露見しているようだから、収束攻撃を仕掛けてもさして新しい手の内がバレるわけではない。

 ただし、まだそれと知らない連中にまで水害の正体を教えることになる。軍需産業が集まっているこの街で、共通の敵が出現したらどうなるか……街中の産業が一丸となって私を討伐しようと研究開発を進めるだろう。すなわち、軍需産業の進歩を抑えるという目的に反する。


「やるとしたら、こっそりだな……。」


 あるいは、水と関係ない方法で襲撃し、水害とは関連がないような痕跡にするか。

 ……そうだな。無理に私の能力を使って襲わなくてもいい。こっそり近づいて、工場に放火でもすればいいだろう。

 水と一体化できる私は、水が通れるだけの隙間があれば、どこでも通れる。ほんの小さな水滴程度、警戒する者はおろか、気づく者さえいないだろう。

 実際には、もう少し大きな水流……そう、最低でもコップ1杯程度の水量が必要だ。あとは火打石か。水流で押し流して運べばいいから、私の接近も放火も逃走も、めったなことでは気づかれないだろう。しかも火打石というやつは、濡れてもちゃんと火花が飛ぶ。

 あとは、燃やす物だ。ちゃんと乾燥していないと燃えない。特に火打石の火花というやつは、麻の繊維を細かくほぐしたようなものとか、ポケットの奥にたまる埃とか、そういう非常に細かい繊維でないと、火がついてくれない。現地調達するとしたら、枯葉をもみほぐしてバラバラに砕いたものがいいか。水害で街中が濡れているから、乾燥するまでまたしばらく待つしかないだろう。焚き付けに必要な程度の小さな可燃物なら、1日あれば十分に乾くはずだが、念のため3日ほど待ちたいところだ。工場はまだ水分を含んでいるかもしれないが、いったん燃え始めてしまえば、あとは燃えるはずだ。

 よし、この作戦でいこう。見ていろよ、五味浩尉め……!

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