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ゴミ112 達人、ボランティアを計画する

 領主の屋敷に向かうのは後回しにして、次に向かったのは猫耳商会だ。

 ここも被災していて、商品も書類も流されてしまっていた。なので、工場と同じ手順で片付けを手伝って、話を聞いて貰える状態にする。


「ありがとうございました。おかげで、商品さえあれば明日にでも営業再開できそうです。」

「その商品の話にも少し関係するかもわかりませんが……工場のほうもだいぶ水害にやられていまして。片付けないと操業できない状態なので、猫耳商会にも商品を納入できないと思うのですが。」

「ええ。おっしゃる通りですね。」

「それで工場を優先して片付けようと思うのですが……自宅が使えなくなった人にとっても、工場に住み込みでやれば何とか生活できると思いますし。」

「そうですね。いずれにせよ、避難所は必要になるでしょう。

 経済の再生と避難生活を両立できるなら、復旧・復興も早いかと思います。」

「その通りです。

 ですが、そのためには片付けるための道具が必要です。幸いにも、このアイルは工業都市で、流されたとはいえ納品前の製品が大量にあるはず。スコップとか何かの容器とか、片付けに使えるものも作っているはずで、有用なものは私が使いたいので買い取るつもりです。

 スキルを使って道具を使用するので、同時にいくつでも操ることができ、従って買い取る数は無制限です。多ければ多いほどいい。」

「それは、工場としても助かると思います。損失の補填になるでしょうし。」


 完全な状態ではないから割引で、という流れになるだろうが、それでも損失の一部は補填できるだろう。工場側からすれば、この話を断っても、流された製品はゴミとして捨てるしかないのだから、乗ってくるはずだ。まあ、断られたらゴミとして回収したものを勝手に使うだけだが。

 要するに、完全に善意(ボランティア)だ。俺からの助成金と言ってもいい。なにしろ断ってくれたほうが、俺としては無料(タダ)で道具が手に入るのだから。


「そうですね。

 ただ、私の資金は無限ではありません。無制限に買い取って、支払いができないのでは困ります。

 なので、資金の管理を任せている猫耳商会に、仲介をお願いしたいと思いまして。」

「仲介……ですか?」

「仲介手数料を取ってもらっても構いません。

 縁もゆかりもない工場を助けて、世話になっている猫耳商会を助けないというのでは薄情な話ですし。」

「いえ、そんな……いいのですか?」


 猫耳商会の支店長は、申し訳なさそうにしながらも、内心のウハウハが隠しきれない様子だ。

 商品を根こそぎ失って営業できないところへ、仲介業という仕事が降ってきたのだから当然だろう。しかも工場はたくさんあって、仲介の手間は多くかかる。その1つ1つに仲介手数料を取れば、1件あたりの値段が安くても、総額はそれなりになる。

 従って、この話はスムーズに進んだ。俺としては煩雑な金銭管理や書類仕事をしなくて済む。住居から先に何とかするという通常の手順を無視する理由もできたし、これで領主との話し合いもスムーズに進むだろう。





 というわけで、領主の館である。


「部下から報告は受けています。すでに工場を1つ、商店を1つ、片付け終わったとか。

 それらは効率的にアイル全体を片付けるための、小規模な実験だったと考えてよろしいですかな?」


 アポを取りにいったのだが、領主はすぐに会ってくれた。


「そうですね。」

「ならばすぐにでも、ご協力をお願いしたい。

 何しろ、ありとあらゆるものが水害にやられて、何もかも機能が麻痺してしまっているのです。

 このままでは、アイルは無人の荒野になってしまう。」

「お任せ下さい。

 それで、実際の作業計画なのですが、こういう場合は被災者の住居から何とかするのが常ではあるのですが、今回は工場から先に片付けていこうと思います。」


 実際の片付け作業において通常の制限をいくつも無視できる俺は、住居から手をつけるよりも工場から手をつけるほうが効率的だ。何しろ道具を獲得できて、作業ペースが上がる見込みなのだから。

 しかも、小規模ながら資金面での支援もおこなう。

 これらを説明すると、領主は泣きそうな顔で首を振った。


「断る理由がありません。すべてご随意に。

 私のほうは、住民への説明と、金銭的な支援を拡充する方向で動かせて貰います。」


 領主から快い返事を貰って、俺はさっそく作業を進めることにした。

 自動操縦(ゴミ拾いLV5)は、俺が眠っている間も、与えた命令を実行し続ける。夜通し片付けが進んで、翌4月1日の朝には工場地帯がほぼ清掃完了まで済んでいた。そして1日の夕方までにはアイル全体の道路が片付き、4月2日には住宅地が、4月3日には公共施設が、順次片付いて水害前の元の姿を取り戻していった。

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