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ゴミ111 達人、綺麗にする

 工場長はひったくるように「それ」を取った。

 さっきから探していた「開発中の試作品」とやらが、この「弓の握り部分」らしい。これに魔力回路用の塗料が使われているという事は……。


「発射した矢に魔法が付与されるとか、そういうやつか?」


 何の気なしに言うと、その瞬間、工場長も従業員たちもピタリと動きを止めた。

 工場長に至っては、だんだん冷や汗だか脂汗だか分からないものが噴き出している。

 図星だったらしい。


「そうなのか? 面白い弓だな。」


 アローが興味を示す。

 七味唐子さんに貰った鉢植えの、爆発する矢もだいぶ面白いと思うけどね。ただ、爆発以外の魔法効果が乗るなら、効果と状況次第ではアローにとって戦術の幅が広がるかもしれない。


「よし、すぐに操業再開できるようにしよう。

 操業できれば開発できる。開発できれば発売できる。アローの弓を強化できるぞ。」


 分解してグリップだけ見せれば、同じ形状で魔道具を作ってくれるだろう。


「おお。それはいいな。」


 ここの弓は木製だが、この周囲には金属加工工場も多い。領地全体の泥を除去するためにもスコップを増やさないといけないし、スコップ工場だってあるだろうから、工場地帯から片付けていくのはいい考えかもしれない。


「分かりました。そちら様の弓は作りますので、発売までは内密にお願いします。」


 工場長が引きつった笑顔で揉み手をしながら言ってきた。

 しまった。これじゃあ口止め料を要求したみたいじゃないか。

 ……まあ、しょうがないか。やらかしたものは、しょうがない。次から気をつけよう。


「とりあえず、泥はもうすぐ除去できるので、あとは汚れを落とすだけですね。」


 まあ、その汚れも取りきれなかった泥なんだが。


「そうですね。おかげさまで……こんなに早く片付くとは思いませんでした。

 しかし、周囲はまだまだ散らかったままですから、残った泥を洗い流すための水も確保できないでしょう。井戸にも泥が流れ込んでしまったでしょうし、除去できてもしばらくは水が濁ったままになります。

 すぐ近くに川もありますが、水が濁っているばかりか、海水が混じっているはずです。」

「海水が?」


 アローが首をかしげる。

 だが俺はすぐにピンときた。津波による川の逆流だ。


「そうですか。水害は海から来ましたか。」


 地震の揺れを感じないほど遠くで地震が起き、それによる津波がここまで到達する……あり得ない話ではない。ただ、揺れを感じない距離で、川が逆流したり地上1mまで浸水したりするような津波が起きるのかどうかは、ちょっと疑問だが。日本でも滅多に聞かない条件だ。

 とりあえず、情報として覚えておこう。


「ですが、まあ、何とかなると思いますよ。

 川はどこですか?」


 泥を収納し終わった道具たちを集合させ、腰のゴミ袋に収納する。


「向かいの工場の裏手です。ご案内しましょう。」


 工場長が案内してくれる。泥と瓦礫で進みにくいが、距離的には50mほどの近場だった。


「それじゃあ、まずは水を用意しましょう。」


 容器たちを再び出動させ、川の中へ突っ込ませる。

 そのまま川の水をどんどん収納していく。これを自動分別(ゴミ拾いLV4)にかけて水だけ取り出せば、真水どころか純水だ。

 そうだ。泥もこの方法で集めれば、スコップを使うまでもない。どうせ破壊不能(ゴミ拾いLV3)だし、容器でガーッとすくっていけばいいんだ。そのまま収納できるはずだから、手っ取り早い。

 1000リットルぐらい収納すれば十分だろう。工場長と一緒に弓矢工場に引き返して、樽などの水漏れしない容器を取り出し、同じく桶やたわしなどを出して……どれもゴミだから、だいぶボロいが。


「さて、従業員の皆さん。すみませんが、水は操れないので、出したものを使って清掃作業をお願いします。どれもゴミ同然にボロボロですが、そこはご容赦を。」


 というわけで、清掃作業を頼んだ。

 俺とアローも参加する。ただし水は操れなくてもたわしは操れる。水を入れた桶を抱えて運びながら、たわしを自動操縦(ゴミ拾いLV5)で動かせば、通常の数倍は早く清掃できる。

 そうしていると、洗い流した泥が水といっしょに地面を流れていく。一見して平らなように見える地面だが、実は少しだけ傾斜している。その地面は土がむき出しだ。コンクリートを流し込んで水平器で図って造った場所というわけではないから、大なり小なり凹凸があるのは当然だ。

 俺は、その水が流れていく先を見た。排水溝がある場所へと流れていくが、その排水溝には泥が詰まっていて、水が流れ込む先がない。結果、水たまりができていく。


「ここか。」


 欲しかった情報は「水がどこへ流れるか」という事だけだ。

 それさえ分かれば、スコップで地面を掘ってもいいし、ゴミ袋で排水溝の泥を除去してもいい。今回は後者でいこう。泥を除去した排水溝に、水が勢いよく流れ込み、泥を一緒に押し流す。

 俺は、その流れ込んだ泥と水をゴミ袋に収納した。こうすると、自動分別(ゴミ拾いLV4)によって再び水だけを取り出せる。その水を使って、また洗い流せるわけだ。

 それから1時間ほどで清掃は完了した。

 まだ使える加工道具なんかは、一旦収納してから取り出すことで、自動分別(ゴミ拾いLV4)によって汚れを落とす。ただ、この方法では書類を綺麗にする事はできない。紙だけ、インクだけ、泥だけ、という取り出し方はできるが、泥だけ分別して「紙に文字が書いてある状態」で取り出すことはできないのだ。紙とインクは別々に分類される。再生紙として漂白済みの状態にはできるが、汚れだけ分別して必要な情報は残したまま取り出すのは無理だ。

 ちなみにインクだけ取り出しても、このインクはインクとして再利用できない。なぜなら乾いてしまっているからだ。


「ありがとうございました。おかげで明日からでも操業を再開できそうです。

 近隣の工場に恨まれないか心配なぐらいですよ。」

「いえいえ、こちらこそ勉強になりました。調査にご協力いただいて、ありがとうございました。」


 工場も綺麗になったところで、俺の調査は終了だ。

 従業員たちに見送られて、次の場所へ向かうことにした。

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