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ゴミ110 達人、泥と格闘する

 川の水と一口に言っても、清流から泥水まで色々だ。

 泥水でも川の水なら持ち上がるのは、オーレさんと出会ったときに実証済みである。当時はAランク冒険者だった剣豪オーレさんは、雨で増水した川が、橋より上まで来ていたために渡れなくて困っていた。オーレさんとは、そのあとダイハーンで別れて、無事にSランク冒険者になったらしい。

 オーレさんの事はともかく、泥水でも持ち上がるなら、泥でも持ち上がりそうなものだ。この場にある泥と泥水の泥との違いといったら、流れているか止まっているかというぐらいか。


「……そういう事か?」


 確かめるには、水たまりを持ち上げてみればいい。

 泥の中にできた水たまりを火ばさみで掴もうとして……失敗した。掴めない。


「うん。そういう事だな。」

「どういう事だ?」


 アローが首をかしげる。


「流れていると『1個』だが、止まっていると『1個』にならないようだ。」


 水筒から水をこぼしてみる。

 その水が落ちていく途中を、火ばさみで掴んで横へ引っ張ると、水の流れが重力を無視して曲がった。しかし掴んでいても流れるのが止まるわけではない。水筒から水をこぼすのをやめると、水の流れは曲がったまま地面へ落ちていき、水たまりになる。あとは掴もうとしても掴めなかった。

 なぜこんな境界線なのか分からないが、そうなっているのだから仕方ない。川は1本2本と数えられても、水たまりは1個2個と数えられないという事か? 水かさが増えたり減ったりすれば個数が変わるからという事だろうか。それでいくと、近くに2本流れている川が増水・氾濫して1本になってしまったら、どういう扱いに……まとめて「1本」扱いになるのだろうか?

 まあ、考えても仕方ない。

 俺たちがのんきに検証している間にも、従業員たちはせっせと宝探しを進めている。


「もうあとは泥に埋もれて書類なんか読めないだろう。

 しかし、開発中の試作品だけは何としても探し出すんだ!」


 工場長が指示して、従業員たちが泥の中をかき回している。徹底的にやるなら泥を除去しながら探すのがいいだろうが、除去する先がない。泥だから積み上げても流れてしまうし、排水溝なんかはすでに埋まっていて、捨てる場所がない。


「とにかく泥を何とかしないとな。

 掴めないなら……すくうか。」


 泥の除去なら、スコップが有効だろう。まずは回収しているゴミからスコップを取り出す。俺がゴミ処理を引き受ける前に他のゴミと一緒に燃やされて埋められた中にも、先端の金属製のさじ部分だけが残っている。木製の柄はほとんど燃え落ちて失われているが、まあ、捨てられた段階で柄は折れるか外れるかしているはずだ。どちらにしても、自動操縦(ゴミ拾いLV5)で動かせば、さじ部分だけでも問題なく使える。

 スコップを動かしながら、他にも使えるものがないかと試してみた。たとえば雪かき用の大きいスコップとか、園芸用の小さいスコップとか、スコップの代わりに使えそうなただの板きれとか。結論から言うと、それら全て失敗だった。

 雪かき用のスコップは、大きいから大量に泥をすくえるかと思いきや、軽量化のために穴があいているせいでボタボタ落ちてしまう。それに元々が押しのける目的の形状なので、すくってゴミ容器に入れるという動作では柄が地面につかえて邪魔になったり、横からこぼれ落ちたりして、ろくに使えなかった。

 園芸用のスコップは単純に小さすぎる。数を動かせばいけるかもと思ったが、非効率だった。細かい部分の泥を除去するには使えるかもしれないが、今はまだ出番じゃない。

 ただの板きれは、すくい上げるのが無理だった。四方からこぼれてしまう。泥がもっと乾いて固まれば使えるかもしれない。

 そんなわけで、スコップがいかに有能かを思い知りながら作業を進めていくと、収納したゴミの中から自動分別(ゴミ拾いLV4)に珍しい反応があった。特殊な塗料だ。


「これは……魔道具か?」



 魔力回路を描くのに使う塗料だ。他の魔道具のゴミからも、たまに回収できる。ただ、その塗料が特殊だったのは、塗料の中に金属の粉末が混じっていることだ。魔力の伝導効率が高いのか、摩耗や故障が起きにくいのか知らないが、自動分別(ゴミ拾いLV4)による判定では他の魔力回路用の塗料とは別に分けられている。いきなり新しいカテゴリができたから気づいたのだ。


「どれですか!?」


 工場長が血相を変えて飛んできた。


「これだ。」


 塗料から遡って、それが使われている物体を取り出してみると、それは弓のちょうど手で握る部分のようだった。矢を乗せるためにL字型に削られていて、ロングボウやショートボウと比べると遙かに太い。まるでデザートイーグルとかの大型拳銃のグリップである。この太さのまま弓全体を作ったら、ものすごい強弓になるだろうが、上下にあるべきしなる部分がない。


「それだー!」

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