ゴミ108 達人、アイルに到着する
「何だ……? これは……?」
3月31日。工業都市アイルに到着した俺たちは、街の所々に大量の瓦礫が置かれているのを見た。壁の一部、柱の一部、植物片がいっぱい付いている家具など。道路にも小さな木片なんかが落ちているし、そこらじゅうが泥だらけだ。まるで大きい台風に直撃されて浸水とか倒壊とかがいくつも発生したような、いわゆる被災地に見える。
「いい天気……だったよな?」
「ああ……。」
俺の問いかけに、アローが言葉を詰まらせながら答える。アローもこの光景にはだいぶ驚いているようだ。
ヒルテンからアイルへ。その間、いい天気だった。
ヒルテンを出発した俺たちは、次に工業都市アイルを目指した。ヒルテンから海岸沿いに西へ進んだ所にあるが、徒歩だと5日かかる距離だ。しかし今の俺たちは車があるおかげで2日で行ける。地球の自動車と比べると、平均10km/hというノロノロ運転だが、それでも歩くより断然早い。
ちなみに、途中で宿泊したのはラキヒルという街だ。製鉄業が盛んで、鉄鉱石から鉄を作っている工場がいくつもある。その製品の一部が、アイルに運ばれて鉄製品に加工される。両方とも海に面している上に距離が近いから、お互いに理想的だ。
で、その間ずっといい天気だったから、竜巻被害が起きるような暴風や、水害が起きるような大雨はなかった。地震もだ。
「……浸水の痕跡まである。水害が起きたのか。」
「浸水の痕跡?」
「あれを見ろ。」
俺は工場っぽい建物を指さした。
その壁は、地面から1mほどの所で色が変わっていた。下が少し暗い色になっている。しかも流されてきたとおぼしき草の破片がいくつも付着していた。
日本にいた頃にはテレビのニュースでたびたび見た光景だ。
「1mほど浸水した証拠だ。」
「なるほど。言われてみれば……。」
その工場では、従業員とおぼしき人たちが片付けに追われている。
俺はちょっと考えてから、領主の屋敷へ向かうのを後回しにしようと決めた。
「この工場の片付けを手伝おう。」
「え? 領主に会って領地全体を一気に片付けるんじゃないのか?」
「それも必要だが、今までとは違ったゴミ処理が必要になるはずだ。だから、大規模にやる前に、そのモニタリング調査に利用させて貰うんだよ。」
水害が起きると、今まで使っていたものが大量にゴミになってしまう。入り込んだ泥の除去も必要だし、何もかも濡れて使い物にならず一気に大量にゴミが出て、その処理が追いつかなくなるという問題も起きる。それらに対処する方法を、この工場の片付けを手伝う間に実験させてもらう。
俺は従業員に声を掛け、工場長と話をつけた。
「社外秘の書類とか開発中の試作品とかもあって難しいが……。」
と工場長は悩んだが、どうにもならない状況を重く見て、結局は手伝うことを承知してくれた。
「ちなみに何を作ってる工場なんですか?」
「弓矢だよ。近隣の領主様たちにも納めてるんだが、この分だと納期に間に合わないな……。」
工場長は深いため息をついた。




