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ゴミ10 達人、生産的な仕事に憧れる

 今日も今日とてゴミ拾い。

 市場で言葉の勉強をしながら、商人たちに果物や野菜をもらって、平民用の住宅地へ。スラム街ほどゴミだらけではないが、人が生活している以上、それなりにゴミは出る。ほとんどは行政が指定する方法で捨てられるが、中には意図せず落ちてしまって回収できなかったゴミや、あるいは横着をする者もいるわけだ。

 市場と違って住宅地は広く、1日で全部を回りきることはできない。人の通行量もそれほど多くないので、ゴミが出るペースも遅い。おまけに今日みたいに風が吹く日は、ゴミが散らかってしまう。落ち葉の掃除なんか始めたら、いつまでも終わらない日だ。そういうわけで、住宅地は7区画に分けて1週間で1周することにしている。つまり、今日向かう先は、1週間ぶりというわけだ。


「さすがに1週間ぶりだと、そこそこゴミがあるな。」


 この世界に来てから1ヶ月ほどだから、同じ区画へ来るのはこれで4度目……いや、4周まわって今週で5度目か。だんだん慣れてきたが、まだ同じ感想が口をついて出る。


「お。あれは……。」


 1週間前に更地だった場所に、家の骨組みができあがっている。


「だいぶ建ってきたな。」


 誰の家になるのか分からないが、家が建っていく光景というのはいいものだ。家に限らず、何かができあがっていくのを見るのは楽しい。生産的な光景だ。ゴミ拾いは、マイナスの状態をゼロに戻すだけで、何もプラスになってないからな。何かを作る、プラスを生み出していく仕事や光景というのは尊敬できるし、見ていて楽しい。やはり作ってこそ人間ではないかという気持ちがしてくる。言ってみればゴミ拾いも、人間がゴミを作ってくれるから成り立つわけで。……非常に悲しい成り立ちだな。


「ん? ……おお……。ああやって持ち上げるのか。」


 壁になるだろう部分の柱が組み上がって、その上に屋根になるだろう部分の柱が乗せられていく。日本だったらクレーンで吊り上げるのだろうが、この世界にクレーンはない。そのため大工たちは、手作業で木材を運び上げていた。足場を組んで建物を囲い、その足場を使って縦に並んだ大工たちが、柱を1本ずつバケツリレーのように上へ送っていく。

 長くて重たい柱ほど、その長さゆえに1度に大勢で持ち上げることもできるので、人力での運搬が可能なようだ。

 ……と、その時、突風が吹いた。地上にいた俺は目を細める程度だったが――


「#$%!?」


 一番高いところにいた大工は、ちょうど上がってきた柱を受け取ろうとして、やや身を乗り出しているところだった。そこを背中から突風に吹き付けられて、バランスを崩す。落ちるまいと、上がってきた柱にしがみついたものの、その柱は固定されているわけではない。上端で人間1人分の重さが加わって外へ飛び出したものだから、柱を上へ送っていた大工たちも、腕力だけでは支えきれず、手を離してしまうことになった。

 あとはもう、棒が倒れるのと同じだ。10mほどの柱の上端に大工を1人くっつけたまま、柱がゆっくり倒れていく。


「#$%&&&&&!」


 だんだん傾く柱。ゆっくり近づいてくる地面。大工が悲鳴を上げた。

 俺は走り出した。この1ヶ月ほど続いた粗食生活のおかげで、90kg以上あった体重も70kg台まで落ちている。一方で毎日歩き回ってゴミ拾いを続けてきたから、筋力は維持していた。つまり、久しぶりに走ってみると、非常に体が軽い。


「おりゃあ! キャッチ!」


 見学のために元々近づいていたのもあって、普通に間に合った。

 火ばさみで柱を掴み、ひょいと拾う。そう、ひょいと、だ。気合いを入れて「おりゃあ!」とか叫んだわりに、ほとんど空き缶を拾う程度の力しか使っていない。ゴミ拾いLV2の効果で「絶対に拾う」的な効果が出ているのだろう。

 そして、普通なら火ばさみが耐えられる重さではないのだが、ゴミ拾いLV3の効果で柱と人間の重さに耐えている。川の水を持ち上げたときには、上から吊す感じで持ち上げたから、引っ張り強度が高い金属製の火ばさみなら物理的に耐えられる可能性もあったが、今回は斜め上へ向かって差し出す形で使っている。どう考えても、物理的にはひしゃげるはずだ。


「アンド・リリース。」


 そっと地面へおろす。

 柱も大工も傷つけないように、そっとだ。

 無傷で助かった大工が、ぽかんとしている。


 わっ……!


 他の大工たちが先に歓声を上げた。

 仲間が助かって喜ぶのはいいが、飛び出してきて俺の背中をバンバン叩くのはちょっと勘弁してほしい。別に痛くはないが。作業服の防御力はすごいのだ。ただし1ヶ月も洗濯しないで着続けているから、ホコリもすごい。布団を叩いてもこんなに出ないだろ、というぐらいホコリが立つ。

 明日は休んで、洗濯しようかな……。予備の衣類がないから、乾くまで裸で過ごすことになるが。

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