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第2話 ポルターガイスト実験

 昔は良くテレビ番組の特集などでも心霊系の番組は度々見かけたものだ。

映画とかでもホラー系のモノは結構見てきた。

その知識が当てはまるかは謎だが、幽霊にはポルターガイストなる力が使えたはずだ。

勝手に扉が開いたり、物が落ちたり、椅子が動いたり。

凄いものだと人間が宙に浮いたりとか。

つまり、触れられなくても物体に干渉する力があるのなら、俺の出来る事も格段に増えるというもの。


 何でそんな事を思い付いたか、と言えばとにかく暇なのだ。

周りを見れば彷徨いてるのはおぞましいモンスター達ばかり。

たまにやってくる人々も俺になんて目もくれない。

ていうか気付いてない。

彼等をストーキングもとい見守りをするのにもいい加減飽きてきた。

死んじゃう人達も珍しくないし、人の死ぬところなんて出来るなら見たくはない。

死ぬ淵で涙ながらに「だれか、助けて……」と呟く姿は流石に見ていて悲しくなる。

その裏で何でこの人達の言葉通じてるんだろ、とか冷静に疑問を浮かばせてる俺もいたけれど。


 そこでもしも何かしら物を動かせたら俺の存在も伝えられるし、上手くすれば人々の役にも立てるかもしれない、と思った訳だ。

あのモンスター共と戦うのは正直怖いが、目の前で人間が傷つき死んでいくのを見るのはやはりいい気はしない。

別にだからといって激しくモンスター達に殺意を抱く訳でもないし、同胞の仇をとってやる、とか熱い情熱もないけれど。

その辺りは割と生前よりも気持ちの波というものは平坦になってる気がする。

そんな日々を続けていればより感情が麻痺してしまいそうで、無感動幽霊になる前にどうにかせにゃいかんな、と思った訳だ。

ゴタゴタと色々言ったけど、ようは暇なので何かしたい。それだけだ。

という事で早速やってみよう。





 目の前に手のひらサイズの石が落ちています。

横を通り過ぎた緑の連中は放っておきましょう。

さてさて、どうやったら動かせるのか。

取り敢えず小石に手をかざす。


 動け……動け……。


 うごけーうごけー……。


 ふんっ!ほっ!たぁッ!


 お前ならやれる、きっと出来る、必ず出来る、多分出来る!





 ……動かない。

当てにならない体内時計で一日ぐらい頑張った。

でも動かなかった。

当たり前か。

何やってんだ俺は……。

マジシャンですら人や物を浮かせられるというのに、俺ときたらこんな小石すら動かせない。

情けない……。

こっちはタネも仕掛けもないけれど。


 腕組みして小石を睨む。

念力的な力とかさ、出ないのかな。

もう何度目かわからないが、再び手をかざす。


『ハンドパワー、浮くがよい』


——念動力スキルを習得しました。


 突然頭に鳴り響くメッセージ。

そしてフワリと浮かび上がる小石。

まず鳴り響いたその声に驚いてかざした手を下げてしまったら直ぐに小石は地面を転がってしまった。

でも、確かに浮いた。

小石が……小石が浮いた!

なんかこの洞窟にきて初めて嬉しい事があった気がする。

俺の感情はまだ死んでいなかったようだ。


 もう一度やってみよう。もしかしたら幻覚って事もある。


 小石に手をかざす。

ハンドパ——……もう浮いてるわ。

ハンドパワー関係ないわ。

浮くがよい、とかまた呟きそうだったわ。


 フワリと浮いた小石は俺の意思に沿って動かせた。

それはもうノロノロユラユラと鈍い動きだがともかくモノを動かせたのは大発見。

やればできるじゃん、俺。





 それから俺は色んなものを念動力とやらで動かしてみた。


 とりあえず至る所で石を集めて積み上げる訓練を行った。

微妙な力加減や位置調整を訓練する為だ。

お陰であちらこちらに積み上がった石が出来上がっている。

知らない人が見たら此処は賽の河原かと思うだろう。

またしてもこの洞窟が地獄に一歩近付いてしまった。見た目的な意味で。

緑の人達はそんな積み上がった石を見て頭を傾げ、蹴飛ばしていた。

ムカついたので投石すると飛び上がって逃げていったが。

ついでに「投擲スキルを会得しました」という脳内メッセージもついてきた。

これなんなの、ホント。


 その後細かな動作が出来たらどれくらい重いものが動かせるのか、という実験に移った。

初めは小石くらいの重さしか動かせなかったが、頭に鳴り響く「念動力スキルが上昇しました」という声を数回聞いたら落ちてる鉄の剣も浮かび上がった。

しかし、重いものはより動かすのが難しい。

それでも念動力スキル上昇告知を更に二回くらい聞いたら大きめの両手斧も自在に操れるようになった。


 それらを振り回してたら、“剣術スキル”と“槍術スキル“に“斧術スキル“も習得してしまった。

そしてようやく確信する。

この声は俺の技術力上昇を知らせてくれてるという事を。

しかもその声を聞く度に飛躍的に剣や槍などの武器の扱いが上達するのだ。

舞い踊る剣や槍や斧を見て緑の人達は得物を投げ捨てて逃げ出していく。

お陰で沢山武器が落ちてるので練習にはもってこいだ。

眠る事もない上に疲労もないこの身体。

俺は曲芸師のようにあらゆる武器を振るい続けた。

次に転生したらサーカスにでも出るかな。

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