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優華とみどりと変人と  作者: ばたじょ
7/10

第5章 ロストメモリー 後編

どうも、ばたじょです!

今回は第5章・後編ということですが、前編ほど字数は多くない、というか普通に少ないです。

前回の後書きか前書きで言ったように、字数が多すぎたため二部構成にしたというだけの話です。


それでは、あなたに楽しいひとときを…。いってらっしゃい!(この言い回し久しぶりな気がします)


「むぅー…」


タイムカプセルを回収し終えてから現在時刻は夕方の7時、優華の家では自営業の喫茶店も閉店し家族三人揃って夕飯時である。

食卓には三人分の夕飯が用意されていて、席には優華と健介の二人が座っている。妹の風華はというと"今しかできない戦いがそこにあるので手が離せない"とのことであった。特に珍しい光景でもないため二人は気にせず夕飯を食べ始める。

優華は夕飯のカレーライスをスプーンですくいながら学校から帰宅時のことを考える。

出来事をまとめると、何らかの理由で今日まで忘れていた自分の母親との思い出を謎の現象によって思い出すことができた。優華は事実を確認するために父親である健介に確認したのだが、そんなことは知らないの一点張りであった。


(あの感じは意地を張っていたり嘘をついているようには見えないのよね…)


結局その日、有力な情報を得ることが出来なかったため優華は意気消沈してカレーライスをスプーンで混ぜ混ぜしているのであった。


「どうした優華?今日のカレー、味付け変か?」

「ううん、カレーはいつも通り美味しいわ」

「そうか…じゃあ明日のカレーは優華ちゃんの好きな秋刀魚の塩焼きとこんにゃくステーキを入れてやろう!」

「……………」

「いやそこは何でも好きな物を入れれば良いわけじゃないでしょ!ってツッコミを入れるところだろ!はっはっは!」

「パパ?」

「なんだ娘よ!遠慮なく聞いてこい!」

「本当の本当にママは私を産んでから数日で亡くなったの?」

「またその話か、何度もそうだと言っているだろう」

「じゃ、じゃあさ!ママの写真とか無いの?私を抱っこしてるやつとか…後は私が生まれる前の二人の写真とか!」

「優華」


そこでようやく健介も真剣な顔つきになる。持っているスプーンを手元に置いて優華と向き合う。


「優華が生まれて母さんはすぐに亡くなったよ…何せ体が弱かったからな…たしかに母さんの顔を知らないお前が詮索したくなる気持ちはわかるが母さんに関する写真は残っていないんだ!すまん!」


そう言うと健介は食べかけのカレーが入った食器を片付けると、そそくさと自分の部屋へと戻っていく。


「あ、ちょっと!…これで手掛かりはゼロね…」


優華は夕飯を中断し、机に突っ伏す。


(パパなら絶対に何か知ってると思ったのになぁ、いや一番悲しいのはパパだからあまり詮索するのも良くないか…)


「う〜ん…だぁぁぁもう!」


母親に関する情報が手詰まりになり、優華は両手で机を叩く。

部屋には優華だけが取り残され、しばしの静寂が訪れる。


(何で私だけこんなに悩んでるのか不思議だわ…明日は授業代行もあるし、今は切り替えないとね)


気持ちを入れ替え優華は夕飯を再開しようとするのと同時に店も問いリビングの扉が勢いよく開け放たれる。


「猫神風華大佐!ただいまカレーライスの匂いに釣られて馳せ参じましたー!」

「ん?ああ風華ね」


リビングに入ってきたのは優華の義理の妹・猫神風華である。風華はアニメのキャラクターらしき衣装を身に着けながら、無駄に派手な動きを取り入れて皿にカレーライスを盛っていく。


「む?スクランブル!スクランブル!こちら一番隊風華大佐である!報告、カレーライスに夢中で我が姉の存在に気がつかなかった模様!どうぞ!」

「食べる時くらい普通にしなさい!どうぞ!」


静寂に包まれた部屋は一瞬で賑やかな空間に生まれ変わる。


(良い意味でも悪い意味でもそういうところが直子に似てるのよね…)


風華は絶賛アニメや漫画の世界に没入している時期のため、自作でコスプレを作成したりそれを身につけてアクションポーズをしたりと…いわゆるオタクだ。

またそういう関連物にしか興味がないため流行りのファッションだのメイクだのには全く目もくれず、街中に行くと大抵デパートのキッズコーナーや近所のおもちゃ屋の方へと気持ちが揺らいでしまう。

まぁ風華がアニメオタクになった原因は主に優華なのだがそれはまた別の話で語るとする。


「もう、相変わらず固いねお姉はー!」

「あんたほどはっちゃけられるのも逆に凄いわよ、時々羨ましいと思うくらい」

「なぬ⁈じゃあ来月のコスプレイベント一緒に出ようよ!」

「丁重にお断りさせて頂きます」

「えー!絶対楽しいよ⁉︎それに私たちだけじゃなくて他の子も誘えばいいじゃない!」

「まるで複数人で怒られれば怖くないみたいな理論ね…」

「ぶぅー!お姉のケチ!」

「はいはいケチで結構」


風華は優華に舌を出してあかんべをすると席に着きカレーをガツガツ頬張る。


「ほほおへ、ほへへは、ひっはいはひお」

「飲み込んでからにしなさい」

「ゴクン!ところでお姉は何を悩んでたのさー?」

「なんでもない、風華に言っても仕方ない…そういえば風華はママを見たことないわよね?」

「ないよ、見れたとしても遺影とか…それでも不思議とこの家って仏壇とか用意しない決まりなんでしょ?」

「仏壇…そうよ仏壇!でかしたわ風華!」

「へ?まぁお姉が満足したならいいか、じゃそのかわり来月のコスプレイベントーー」

「出てあげる!」


風華に投げ捨てるように返事をして優華はリビングを飛び出す。


(こちとら実の母親が亡くなってるのよ⁉︎仏壇の一つくらいあるはず!)


優華は健介の部屋以外、入れる部屋をくまなく探していく。そして物置の中を漁っている時、奥の方で不自然に開けられたスペースを見つける。


「これってもしかして…!」


優華は懐中電灯でその不自然なスペースを照らしてみる。

多少埃被りが見られるものの、火の消えたロウソクや見覚えのあるセーフティゴーグルが置かれていて中心には写真立てが虚しく倒れている。


(このゴーグル⁉︎あとはこの写真に写っている人を確認するだけね!)


「そこで何をしている?」

「パ、パパ⁉︎…ってうわっ⁉︎」


後ろから突如声をかけられ、優華は懐中電灯を持っていない方の手を滑らせ、物置は雪崩と化する。


「おいおい大丈夫か⁉︎」


健介は慌てて雪崩の山を退かしていき生き埋め状態の優華をサルベージする。


「怪我はしていないか?」

「うん大丈夫よ、ありがとうパパ」

「はぁ、良かったよ」


物置の中にいたせいで全身埃だらけの優華を手で払ってやる。


「さて、それはそうとお前は何をしていたんだ?」

「ギクッ」


(何かごまかせる方法は…くっ、やるしかないわね!)


すると優華は恥じらいの表情をして両手で指を絡ませて上目遣いをする。


「言わなくちゃ…だめ?」

「こりゃ重症だな、頭でも打ったか?」

「な、なな…!」


優華は冷静にツッコミをされ余計に恥ずかしくなる。


「あと後ろに隠しているものはなんだ?」

「後ろ?ひゅ、ひゅ〜」

「口笛、吹けてないぞ?」


(いや違う、隠す必要はないわ!むしろ見せた方が何か話してくれるかも⁉︎)


「実はですね〜物置で興味深い写真を見つけましてですね」

「写真?まず物置にそんなものは閉まった覚えはないが…?」

「そうなの?じゃあ一緒に見てみようよ」


(咄嗟に隠したから正直私も誰の写真かわからないのよね…)


「始めに言っておくけど覚悟しておいた方が良いわよ?」

「なんだそりゃ?勿体ぶるな、さあ!どんとこい!」

「よし!いくわよ!」


叫ぶと同時に優華は写真をひっくり返してみせる。


「やっぱり…!」

「――――」


その写真には男性と女性のツーショットが写っていた。片方は今よりも若い猫神健介、腕を組んで少し照れくさそうに微笑んでいる。そしてその隣には―――


「ママ!」


そこには猫神輝と思わしき人物が健介の肩に腕を乗せ、こちらに笑顔を向けている。


(パパって以外にこんな表情もするのね)


「ほら!見てよパパ!紛れもなくママでしょ⁉︎ママの写真あったんだね⁉︎」

「この人は…いやこいつは…」


健介の方に振り返って初めて気付く。その顔は蒼白で顔中は滝のように汗が流れている。


(これってさっき私に起きた現象がパパにも起きたってこと⁉︎)


「パパ⁉︎今何か見えたの⁉︎」

「輝…」


ただし、優華の時とは違って健介の瞳は虚ろでその姿から生気が感じられない。まるで心臓が動いているから仕方なく身体がついていくようにも思える。


「お前がいなかったら俺はこの先何のために生きれば良いんだ…」

「いきなり何を言い出すかと思えば…しっかりしてよ!」

「輝…輝…輝…」


健介は輝の名前をぼやきながら優華の顔に目もくれずに自分の部屋へと消えていった。


(あんなパパの姿初めて見た…)


いつも優華にちょっかいを出してくる明るく元気な父が、別人のように変わり果ててしまい、優華はどうすることもできない。


「どうしよう、私のせいだ…」


すぐに健介のいる部屋へ向かおうとするも、足が地面に張り付くように言うことを聞いてくれない。


(本当私って一人じゃ何もできない…それにメンタルも子どもみたいに弱いわね)


考える度に自分に対してマイナスの方向に気持ちが沈んでいく。

そんな時、ある情景が頭に浮かぶ。


"優華ちゃんは悪くない、悪くないよ"


それは親友・直子に言われた言葉。どんな時でも優華の気持ちを受け止めてくれる存在。

自分が困っている時にはいつも直子の姿があった。


「直子…私どうすればいいのかわからないよ…」


その時、カキーンと野球ボールをバットで打ち返したような音が外から響き渡る。


「こんな時間に何事かしら…?」


優華は音の正体を確認するために玄関から外へ向かう。

玄関扉を開けると、四月の微かに冷たい夜風が優華の顔を仰ぐように吹いていた。

外は暗く住宅街や歩道にそびえ立つ街灯の明かりがぼんやりと夜を照らす。


「音はそんなに遠くなかったような…ん?」


音の出所を辺りを確認すると、あることに気がつく。


「あの星、何かおかしくない…?」


優華が注目したのは街中を見下ろす星空。ただし一つだけ明らかにおかしい星が視認できる。

その星は緑色に光り輝きながら徐々に大きくなっているように感じる。


「星が膨張してる…いや違う、こっちに向かってる⁉︎」


緑色の星は流れ星のように優華のところへ一直線。


「ちょっと、むりむり!そんな死に方ごめんよ!」


優華が別方向に避難しようとすると、今度は優華の左方向から何者かが自動車の如く恐ろしいスピードで走ってくる姿が見える。

その人影は、数メートルの位置から更に走る速度を上げ、途中片手を前に突き出す形で優華の真上へと飛び上がる。その手には野球で使われるグローブがはめられていて、落下する緑色の流星を見事にキャッチする。そしてそのままジャンプした方向へと土埃を回せながら滑る形で着地する。


「生きてる…⁉︎だ、大丈夫ですか⁉︎」


顔が確認できる位置まで駆けつけると、それは優華がよく見知った人物であることがわかった。


「直子⁉︎あんたこんなところで何をしてるの⁉︎」


その人影の正体は、優華と同じ高校に通うクラスメイトであり親友でもある存在、温厚直子であった。

直子はキャッチした緑色の物体を地面に置くとユニフォームに付着した砂を手で払い落とす。


「やーやー!どうもこんばんわ〜!元気してる〜?」

「そういう直子は元気そうでなによりね、というかこんな夜中に何してんのよ?」

「ん〜?見てわからない?野球だよ〜」

「なるほど、だからユニフォームにグローブなのね…あれ?」


そこで優華はふと疑問に思い直子に問いかける。


「キャッチしたのは直子だし…じゃあさっきボールを打ったのは誰?家の中まで聞こえたわよ」

「打ったのも私だよ〜、本当はママに付き合ってもらおうと思っていたんだけど断られちゃって〜」


(この子、自分で打った後にそのまま走ってキャッチしたの⁉︎)


「あんた、その才能をもっと良い方向に活かすべきだと思うわよ?」

「才能だなんてまたまた〜、こんなの高く打ち上げれば誰でもキャッチできるんだよ〜?」


真面目に聞いても納得できる気がしないので、優華は話題を変える。


「あとその緑色のボールは?」

「ボール?違う違う、みどりちゃんだよ〜」

「はぁ⁉︎」


優華が驚くのと同時に、地面に静止していたみどりちゃんは相変わらずの無表情で起き上がる。


「バッター…アウト」

「うん!そうだね!でも自分で打ったボールを自分でキャッチしちゃったよね⁉︎」

「補足すると、投げたのも私だよ〜」

「一人茶番劇かい!」

「一人じゃないよ!みどりちゃんもいるよ〜!」

「…ファインプレー」

「無得点お疲れ様!」


常人では実践不可能な一人野球に圧倒される優華である。


「そういう優華ちゃんは何か浮かない顔をしているように見えるけど〜?」

「うん、ちょっとね…パパと今少し揉めてるというか…ね」

「揉め事ってもしかしてさっきの優華ちゃんママの話?」

「そう、まぁ揉め事というよりも私が一方的にパパのことを傷つけちゃったみたい…」

「そう…良ければそのお話、聞かせてくれる?」


自分一人では解決の糸口が見えないと判断した優華は先程家で起きたことを全て話した。


「――ということがあったの」

「ふむふむ、なるほど」


直子はしばらく顎に手を当て考える素振りをすると口を開く。


「客観的な意見をするけど、それはいずれ起こり得ることだったと思うかな〜」

「でもおかげでパパは何を言っても反応してくれなくて、ずっとママの名前を呟いてるのよ」

「そうなんだ…」


二人で話し合っている側で、足元にいたみどりちゃんは優華の家の玄関扉の前に立つ。その姿はまるで扉から家の中を透視しているようにも見える。


「みどりちゃん、入りたいの?」

「………コクン」

「まぁいいか、良ければ直子も上がってちょうだい」

「えへへ〜、久しぶりの優華ちゃん家だ〜」

「そんな前だったかしらね」


そう言って優華は玄関扉を開けると、待っていたかのようにみどりちゃんが短い足でよちよちと廊下に向かって一直線に走っていく。


「あー!待って!そっちは物置で散らかってるの!」

「物置ってさっきの話に出てきたやつ〜?」

「そういうこと!ついさっき雪崩が起きたばかりだし、あんな小さい子が行ったら危ないわ!」


慌てて優華たちもみどりちゃんを追いかける。

廊下の方へ走って行くと、雪崩が起きて色々なものが散乱している物置の目の前にみどりちゃんは佇んでいた。

よく見ると、みどりちゃんの髪の毛が緑色に発光していた。


「これはどういうこと…?直子、解説」

「はいはい〜、えーっと今のヘアピンの色は…緑色に光ってる⁉︎」

「連動してるのかしら?とにかくいつもと違うということには間違いないようね」


みどりちゃんは髪の毛を光らせながら優華たちに振り向くと、短い言葉で何かを伝えてくる。


「…探せ」

「探せ?一体何を?」

「大丈夫だよ〜、ようはこの雪崩を漁ってみどりちゃんがそれだ!って言うものを探し当てれば良いんだよね〜?」

「…コクン」

「その読解力はなんなのよもう…」


こうして二人は物置を整理しつつ漁ることにした。


「これは使うものなの〜?」

「その鍋は取っ手が外れてるから使えないわね」

「これは〜?」

「それはねー」


という感じに、物置整理は思いのほかサクサクと順調に進んでいった。

そしてその中からいくつか関連がありそうなものだけをピックアップしたものが以下の通りである。

中身が一枚も入っていない写真ホルダー・黒ずんだセーフティゴーグル・謎の機械細工である。


「このホルダーには一枚も写真が入っていないんだね〜」

「でもタイトルは書いてある…不気味だわ」


ホルダーの表紙には年度とその下に3〜6と書いてあることがわかる。


「この数字は一体何を表しているの…?」

「むむ?…これって…」

「ん?何か見つけた?」

「いや、大したことないかなぁ〜」

「そう?なら次にいくわよ」

「ホルダーは置いといてっと、ゴーグルだね〜」

「これは工事現場とかで使われるものね、たぶんママの遺品よ」

「あの突然見えたっていうやつに出てきた人〜?」

「そうよ、あれは紛れもなくママのはず」


すると側にいたみどりちゃんがゴーグルに向かって思いがけない一言を放つ。


「……あきら」

「そうね…って何⁉︎今なんて言った⁉︎」

「……知らん」

「そこをなんとか!頼むわ!」

「チッ………あきら」

「そんなに嫌だったの⁉︎でもたしかに聞いたわ!」


優華はみどりちゃんを抱えて問いかける。


「あんたもしかしてママのこと何か知ってる⁉︎」

「……さあな」


素っ気ない返事をするとみどりちゃんはそれっきり何も言わなかった。


「くっ、仕方ないわね…じゃ最後いくわよ!」

「あいよ!最後の品はこちらだぜ〜!」


直子が物置から見つけた機械細工を床に置いてみせる。


「これは何の機械かしら?」

「うーん、見たことないけど…あ!押したらなんか開いたよ〜」

「適当に押さないの!」

「適当じゃないよ!これは試行錯誤だよ〜!」

「つまり、手探り状態でわからないから適当にいじったんでしょ!」


ツッコミを入れながらも蓋らしきものが開いた機械細工を観察する。


「強いて言うならカセットデッキみたいだね〜」

「でもハブがはまりそうな箇所が四つあるから…普通のカセットテープでは無理そうね」

「メーカーも記載されてないし、ますますわからないね〜」

「昔でもこんな機械はなかったと思うわ」

「おっと後ろに何か書いてあるよ〜?」

「なになに…"全ては一本桜"って書いてあるわ」

「一本桜といえば私たちの学校の正門にあったね〜」


この三つのアイテムは何かしらの鍵を握っているような気はするが、何も打開策が導き出せない。

二人で唸りながら思考していると、後ろの方から健介がゆっくりと歩み寄ってくる。

先程揉めたこともあり、優華は少し直子に隠れるように立ち回る。一方直子はいつも通りの調子で健介に話しかける。


「優華ちゃんパパお久しぶりだね〜」

「なんだ、誰かと思えば直子ちゃんじゃないか!いつのまに家に上がっていたんだ?」


(あれ?さっきの暗いパパはどこへ行ったのかしら…?)


優華の言う通り先程まで廃人のように無気力だったとは思えないくらい、何事もなかったかのように振舞っている。


「優華、友達が来てるなら教えてくれなきゃわからないぞ?それにこんな遅くの時間に何事だ?」

「あー、それは…」


(元に戻ったのは良いけど、言い訳が何も思いつかないわよ!)


「実は優華ちゃんパパに折り入って相談に来たんだよ〜」

「相談?俺にか?」


まさかの直子がフォローに回るという現状に優華は驚くが、ダメ元で任せることにする。


「うんうん実はね〜、明日の学校で優華ちゃんと私が先生をするんだ〜」

「先生?それはあれか、直子ちゃんや優華が模擬授業をするということか?」

「そうそう〜!でね、良ければなんだけどその模擬授業に優華ちゃんパパも来てみない〜?」

「ええっ⁉︎」

「ほう、でも明日は普通に仕事なんだが…」

「休みの日とかはあるの〜?」

「一応祝日とか、あとは日曜日だな」

「それじゃたまには息抜きしないとね〜!」


そう言うと直子はどこから取り出したのか白い画用紙に黒の油性マジックで"今日はお休み"と書いてその紙を店の入り口に貼る。


「おいおい!まだ決まったわけじゃ――」

「優華ちゃんパパ!」

「な、なんだ急に改まって」

「さっき休みの日は日曜日と祝日って言ってたよね?」

「ああ、それがどうかしたか?」

「その調子だと、最後に優華ちゃんの授業参観に来たのは結構前なんじゃないの?」

「…言われてみれば優華が中学一年の時以来だな」

「優華ちゃんは父親一人で育ててくれたことに感謝してるんだよ、だけどね」

「うむ」

「優華ちゃんは寂しがっているんだよ!」

「…そうなのか?」

「感謝してる点だけ本当よ」

「まぁなんだかんだで体育祭や合唱コンクールには毎年来てるしな」

「そうね、ありがとう」

「気にするな」

「だがしかーし!」


直子は壁を強く叩き注目を集め、話を続ける。


「明日の模擬授業を見に行かなくてはならない理由が…いや、使命が!YOUにはあるはずだ!」

「使命…?」

「おっとここから先は優華ちゃんには秘密だぜ?ささっ優華ちゃんパパはこっちこっち〜」

「なんだなんだ⁉︎」


直子は優華に会話が聞こえない距離まで健介の腕を引っ張っていく。


「直子に任せたのは私なわけだし、手短にね」

「お任せあ〜れ〜!」


二人の姿は視認できるが詳しくはわからない。

しばらく直子が話した後にポケットから一枚のなにかを健介に見せている。それを見た健介は驚愕の表情を浮かべている。


「…秘密と言われると知りたくなるこの現象はなんなのかしらね」


そして数分経過した頃に二人は優華のところへ戻ってくる。


「気が変わった、明日は店は休んで優華ちゃんの勇姿を見届けることにするよ」

「な、来れるの⁉︎というか今更だけど直子!パパが来る必要はあるの⁉︎」

「もちろんあるよ〜?それに例の優華ちゃんのお悩みももしかしたらこれで解決できるかもしれないよ〜?」

「…それなら仕方ないけど、その理由は今話せないの?」

「うーん控えとく、ごめんね〜」

「いいや、直子に考えがあるのなら私はそこにかけるわ」


(色々わからないことだらけだけど、少しずつ進展はしてるのよね…?)


母親に関する記憶を取り戻すことは願っているがそのために尽力することで優華の目には健介が苦しんでるように見えてしまうのであった。


どうも、こんばんは!ばたじょです!

第5章いかがでしょうか?私の第5章への感想といえば、スマートフォンのキーパッドで第5章と打つときに検索候補が毎度のこと大吾だのダイゴだのを真っ先に進めてくることに若干の苛立ちを覚えたことですねー。


サブタイトルのロストメモリーは直訳すると"失われた記憶''です。勿論このサブタイトルに繋がるようにプロローグの段階からコツコツと伏線のような何かを積み重ねてきたのです。奥義・塵も積もれば山となる!まぁ、伏線の塵が積もりすぎて話のオチがバレてしまわないように気をつけたいと思う私でした。ただの感想文!


それでは第5章・後編はここまで!お次は第6章でお会いしましょう!ばいばーい!



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