小さな患者
「それで…今日は、どのような問題児が入院するんだ?」
「あー…それがぁ…」
報告者が、何かに戸惑っていた。
「なんだ?一体どうした?」
どこか言いにくそうにしながらも、報告者が口を開いた。
「10歳のクソガキなんすよねぇ…」
「じゅ…10歳だと?」
それは、前代未聞だった。
過去の最年少でも15は超えていたのにも関わらず、入院患者は10歳だと言うのだ。
何かの手違いか?
ここは、問題児の中でも更に問題を抱え、どうしようもない人間が入る場所だ。
ただの精神病なら、他の病院に移ればいい。
なら、なぜここに、10歳の患者が入院する?
一体、何をしてきたと言うのか?
「…それで、何をしたんだ。その10歳の少年…。」
「具体的な事はわからないんですけど…同級生を殺したと疑われてるらしいです。」
「疑われている?つまり、あくまで疑惑があるだけだと?」
「そうなんすよね。だから、まぁ、何もないとは思うんですけど、なんか、10人くらい殺したんじゃないかって噂です。まぁ、噂なので勿論証拠もなく、罰せられてません。君悪がった教員達が押し付けたようで…」
「うーむ…まぁ、噂だ。あの年で、そんなことができるとは思えない。早い所追い出すとしよう。」
10歳の少年による10人の殺人。
ほぼ、不可能だ。
可能だとしても、証拠が無いというのは無理に近い。
はぁ。と溜息をつき、緊張を解す。
「その患者が、もうすぐ、ここに着くので、よろしくお願いしま〜す」
「あぁ、わかった」
危険人物かと思ったが、そうでもない。
どうせ、子供だ。
その考えが、後の私を苦しめた。