第9話 遭遇
ちょっといつもより長くなっちゃいました()
森を走り始めて5分ほど進み、煙はもう目と鼻の先である。
俺は町があるのだと思っていたが、外れのようだ。
だんだんと視界に入る木々が少なくなり、拓けたところに出る。
その中央に煙を出している物体……煙を出しているのはどうやら黒い石のようだ。
今にも壊れるんじゃないかという勢いで煙がふきだし続けている。
「誰もいないな……」
これはおそらく人の手によるものだろう。
自分で煙を起こす動物など聞いたことないし、かといって森に生息する類の魔物にはできないだろう。
生前の記憶では森の中には虫か動物、植物タイプの魔物が多かった。
ありとあらゆる世界の要素を持つと言われるこの世界だ……あながち間違いではないだろう。
俺は周囲を警戒しながら、ゆっくりと石に近づいていく。
特に気配は感じられないままだ。
一歩ずつ進み……そして、手を伸ばせば触れるような距離まで難なく到達。
一体これはなんなのだろうか。
ぴと。触って見るとかなり濡れている。この煙はどうやら水蒸気のようだ。だが……
べとべとする。かなりべたべたになってしまった。鼻を突き刺すような刺激臭がした。
その場を離れようとしたとき、それは動いた。
「……え?」
ゴリッゴリっと石がこすれる音がする。そのまま石はこちらに向いた。
―目が合った。
ぱちぱちと鋭い眼光を持つそれの、前のやや下あたりが割れる。
割れた事で、まるで口のようなものがでできて……口?
ふと見てみると、赤い光がだんだん光度を増している。
それを見た瞬間、俺は逃げ出した。
本能が告げている。あの光り方は、爆弾だ。
20mほど走った俺は、一度足を止め振り向き、様子を伺う。
みるみると赤くなっていき――ガッハッハ…と言う声が聞こえた。
それと同時にやはりそれは弾けとんだ。
すさまじい衝撃音が耳を叩く。欠片が飛散して来たが、近くにあった木の裏に隠れてやり過ごす。
音がやんだので顔だけ出して確認する。
無残な光景だ。中心付近にあった草花は全滅している。
木々に延焼していないか確認していると、ふとガチャガチャと金属音が聞こえた。それも多数。
「何があったんだ、これは!」
威厳のある声が響く。そりゃ、あれだけでかい音がすれば気づく人もいるか。
敵意のあるものの可能性があるため、俺はこっそり様子を伺う。
「隊長、どうやらこれが爆発した模様です!」
そういって近くにいた若い兵士が破片を一つつまみあげる。
それを見た隊長の顔が驚愕に染まり、すぐさま叫んだ。
「いかん!!!速く投げ捨てろ!」
兵士は条件反射と言うべきか、返事をする前に投げ捨てた。
――俺のほうめがけて。
いや、俺は死角に隠れているから適当に投げたんだろう。
幸いというべきかそれは俺にぶつかるほどの勢いはなく、俺の正面に転がった。
その瞬間視界が白く染まった。再び爆発したのだ。
「!!」
予想だにしていなかった攻撃を受け、俺は木もろとも空中に吹き飛ばされた。
あー、見つかったな、こりゃ・・・
「おい、人が吹き飛ばされているじゃないか!!」
「も、申し訳ありません!!人がいるなどとは露知らず……!」
俺は受身を取り、着地する。
ただ、勢いを殺しきれず地面を滑って木に背をぶつけた。
すぐさま先ほど俺を攻撃した(故意ではないが)兵士がかけ寄ってくる。
「本当に申し訳ありません!!お怪我はありませんか!?」
「ああ、そこまで重症じゃない。せいぜい手をやけどした程度だ」
咄嗟に顔をかばったため利き手にやけどしてしまった。
剣は握れないだろう。
「俺の部下がとんだ失礼をしてしまった。心から謝罪しよう」
そういって隊長と呼ばれていた男が謝罪し、頭を下げる。
「いや、そんなに気にしなくてもホント大丈夫ですよ」
男は顔をあげる。
「君は、見たところ短剣しか武器がないようだな。その手では剣は握れまい。せめてものお詫びとして、村まで護衛しよう」
おお、これはありがたい。
森は比較的魔物が多く出る。これには地理的な都合があったのだがこの世界でもおそらく同じだろう。
そうだ、ついでに一つ確認させてもらうか。
「ぜひお願いします。それと、あの石はなんだったんですか?」
「あれは森に生息する魔物の一種。名はボムロックという。気に障ると大爆発するといわれる。一見危険極まりない魔物だがな、あいつは温厚な魔物だから殴っても蹴っても罵倒してもほとんど爆発しないんだ。うちの配下で確認済みだ」
話によるとガッチガチに守りを固めたメンバーで思いつく限り怒りを買いそうなことをいろいろやったらしいが、何をしても爆発しなかったそうだ。
「絶命したあとの破片は特にやばくてな。触るだけでそこらの爆弾と遜色ない火力で爆発する。さっきお前さんに当たったのがそれだ」
うーん。魔物だったんだな、あれ。
煙が出てたのは、獲物を寄せるためなのか?いやでも基本爆発しないんだよな?
「そいつって、煙だすんですか?他の魔物食べたりは?」
「煙をみたのか?はっはっは!それは煙じゃない、汗だぞ。あいつは粘着質のある、揮発性の高い汗をかくんだぜ。強大な魔力を感じると汗を流す……そう……だ」
途中で隊長も気づいたようだ。
強大な魔力を感じると汗を流すアレが、汗を流していたってことは……?
「早く帰りましょう!」
「そうだな!全員、村へダーーーッッシュ!!」
嫌な予感がするなか、その考えを振り払うように俺達は一目散に走り出した。
ボムロックの姿は、黒いば○だん○わをイメージしてもらえると・・・w
さて、強大な魔力の正体は?