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眠りの庭の夢幻姫  作者: みかげ
2章 異世界冒険編
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第8話 目覚め

久しぶりの更新です。

いろんな意味で大きく話が進みます!

においがした。

自然の香りと言うか、土のような……土?


恐る恐る目を開けると、まぶしい日差しが目をさす。

今までのやりとりが、夢みたいな感覚がする。

俺は確か、意識の中でサヨと会話していた。

そしてだんだんと声が聞こえなくなって……


「てことは、ここが……ウロボロスによる世界?」


「正解だぜ」


独り言のつもりが、答えが返ってきた。

寒気を感じる、この声は……

俺はおそる恐る振り返る。

そこには、忘れられもしない俺を殺した張本人、破壊者が立っていた。


「俺の魔剣ウロボロスにお前の魂を食わせて、俺の世界に招待してやった」


ふむ、サヨが教えてくれたとおりらしいな。

どうやら、その辺は隠すつもりはないらしい。

しかし……


「魂なんて食われていたら俺は死んでいるだろう?だまされるものか」


俺は剣を抜刀……しようとして気づいた。愛剣がない手元にない事に。

腰にあるのは短剣だけ、しかも戦闘向きではなかった。

ないよりマシだろうと思い、短剣を抜き放ち構える。


「やっぱ信じねぇか……教えてやる。お前は死んだ。今のお前は厳密にはお前じゃねぇ」


「俺が俺じゃない?随分とばかげた事を言ってくれるな」


おそらく、俺をだまそうとしているのだろう。

自分が自分でなくなるなど、サヨは言っていなかったしな。

だますメリットは分からないが……


「フン。まぁ、宿か湖にでも行けばいずれ分かるこった。嫌でも信じる事になるだろうぜ」


……宿か湖?

どういう意味だ?これも俺をたぶらかす為の策略か。

少なくとも今はそれはどうでもいい。抑えておくべき情報は奴の名前だ。


「俺の名前はアルティ。……お前は何者だ?破壊者(アバドン)、は二つ名だろう?」

俺のセリフを聞き奴は顔をしかめる。

そして名乗る。

「……俺はベルティラ。破壊者が二つ名という事どこで聞きやがった?」


俺は用意していた答えを口にする。


「さあな。ただのカンだ」


奴は何か納得したかのように顔をあげ、舌を打つ。


「……ッチ。夢幻姫(ヒュプノーシス)のしわさに違いねぇな……」


夢幻姫?聞いた事のない名前だ。

流れ的に、サヨの事なのだろうか。

それは心の片隅にメモしておこう。後で聞けばいい話だ。


「まあいいさ。おい、こいつを受け取れ」


そう言い残して奴は小さな皮袋を投げてくる。


中には金貨が5枚―驚くことに、生前の世界と同じ通貨が使われているようだ。枚数は少ないが、かなりの大金だった。


「これはなんだ?」


「金だぜ」

かなり簡潔な答えだ。


「ちがう、そうじゃない」


「……まさか、額がわからねぇのか?お前の世界の共通通貨だろうが」


「それくらいは分かる。そうじゃなくて、なぜこの通貨がここにあるのかって事だ」


世界が違うのだ。世界が違うのに通貨が一緒なんて事は……ないよな?


「ああ、そういうことか。生きてた世界と同じ通貨が使えるどころか、ありとあらゆる世界の通貨が使えるぜ。なんせウロボロスは幾つもの世界の住民を寄せ集めてんだからな。生前の世界から渡るとき、身につけてたものは基本的に一緒に世界を渡る……服とかな」


気がかりだな。俺の魔剣は、その基本的に当てはまらなかったと言うことか。


「魔剣は、なぜ持ち込まれてないんだ?」


「……魔剣は持ち主を選ぶのを知っているだろう。選ばれた奴しか使えねぇ」


「俺は魔剣ブラックアイリスに選ばれていて、使うこともできていたんだが?」


「さっき言ったろ。お前はもうお前じゃねぇってな。……選ばれたのはお前じゃねぇよ」


「……話にならないな。おいおいなんとかなるだろう」


奴は大きくため息をつく。まるで呆れて言葉も出ないといった様子だ。


「お気楽なこったな。……話を戻すぜ。その金がなぜあるのか、だったな。まあいってしまえば、お前のオトモダチが、渡してやって欲しいって懇願してきてな。わざわざ持ってきてやったんだ、泣いて感謝しやがれ」


「そうか。お前しばらく黙ってろ。もう、お前の声は耳障りだ」


「……随分つれねぇなぁ。……まあいいさ。俺は忙しいからな。退散させてもらうぜ」


奴の回りに瞬時に魔法陣が展開された。


奴は俺を哀れむような目で見た。


「じゃあな。上手くやれよ、異能者(イレギュラー)


「!?」


奴はそう言い残してその場から消え去った。


俺が、異能者?

……質の悪い冗談だ。俺は、アルティ。魔剣に選ばれた事以外は何の変哲もない冒険者だ。


「とりあえず……ブラックアイリスを探すか。この金があればしばらくは生活できそうだしな」


北東の方に、煙があがっているのが見えた。村か何かがあるのだろう。

まずはそちらへ向かってみる事にしよう。


―俺の友人。こんな大金を隠し持ってたのは、おそらく……いや、まちがいなくハイアだな。

短い付き合いでしかないのに俺の身を案じてくれた彼女に感謝しつつ、俺は走り出した。


ここではっきりしたアバドンの名前。

新たに出てきた二つ名。

次回、お楽しみにー

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