第7話 意思疎通
今回から、2章です
俺は暗闇の中にたたずんでいた。
あ、なんかこれデジャヴだ……
しばらく前、俺は同じような経験をしている。
つまり、俺はまだ死にきってはいないのだろう。
であるなら、あの少女……そういえば名前を知らないな。
目が覚めたら彼女を見つけ、何があったのか聞くのが手っ取り早いだろう。
『奇遇だな。私も君の事を考えていたところだ。おかげでつなげる事が出来た』
「!?」
突然彼女の声が響く。
どうせ周りを見ても誰もいない。おそらく繋がったというのは、思念のリンクのようなものだろう。
『その通りだ。君の脳にテレパシーをしている。そして君の予想通り、君は死んではいない』
テレパシーまでできるのか…と、まあそれはいい。
とりあえず確認すべき事を聞く事にした。
魔物をけしかけられたのだから若干癪だが、いがみ合っても仕方がないし。
「……で、今どうなっているんだ。てか、その前にあんたの名前を教えてくれよ」
『名乗っていなかったな。これは失礼をした。私は泣……おっと、それはちがうな。……サヨとでも覚えてくれ』
「サヨ……、よし覚えた。それで、状況はどうなっているんだ?」
『単刀直入に言おう。非常によくない状態だ。具体的な内容を話すには……』
彼女は少々言いずらそうに目をそらす。
『わ、私がいう事を、本当のことだと受け止めて欲しい。決して、『頭のおかしな中二病』などではない!』
なんだ?
普段クールで大人びたしゃべり方をする彼女が、若干何か抑えがたい怒りをはらむ口調になった。
……何かあったのだろうか?
「あ、ああ。そこは信じるよ。疑ってても仕方ないし」
『ならばよし。では続けよう』
そうして彼女は淡々と語っていく。
俺が死んだあとの事。そして、俺が知らない、世界をまたにかける存在の話を。――
………………
…………
……
――私は、一番手と君の戦いを見ている最中、私の世界に歪みが発生し始めた事に気づいた。
君達はまだ決着には遠い戦況だったから、私は歪みの対処を先に行うことにした。
しかし不思議な事に何度やっても結界修復術式は成功しなかった。
結果、私の世界の結界は、侵入者を許してしまったんだ。
その侵入者は、破壊者と呼ばれる男だ。
破壊者はいろんな世界に次元転移して、何らかの法則にしたがって標的を選出し、その命を奪うんだ。例の真紅の魔剣、ウロボロスでね。
ウロボロスで命を奪われると、その魂はウロボロスによって囚われてしまう。
彼は、私のように固有結界の持ち主だ。
この結界を持つ者は死した魂を、
状況次第では連れてくることができる。
しない、という選択を取ることも可能で、意識していない場合は無条件でこちら、つまり基本的にそのまま対象の魂は消滅する事になる。
奴のウロボロスの場合はその剣で命を奪った者の魂を引きずり込むと言われている。
信じがたいかもしれないが、ここまで事実だ。
さて、君の質問に答えるとしよう。君がどうなるか、仲間がどうなるのか……
まぁ、予想はできているだろう。
つまり、私の世界にいた全員は、同じ世界に飛ばされる――
……
…………
………………
『――というわけだ。』
「なるほど。あいつの魔剣の効果で、あいつの管理する固有結界に、俺達全員飛ばされるわけか」
『つまり、そういうことだ』
「ところでおま……、サヨは、あのあとどうなったんだ?あの世界の管理者……みたいなもんだろ?」
俺は瞬殺されたが、直前までサヨの姿は見ていない。
あのあと、何があったのか知る由もなかったのだ。
『あのあとか?私がしまt……いや、特に何事もなく穏便に帰ってもらった』
「あ、え……そ、そうか、なら、よかった」
明らかにやばい事したような気がするぞ。
底が見えないよな、この人……
俺は破壊者に、ちょっとだけ同情をした。
特殊な読みは初出にルビを振りますが、二回目以降は振りません。