第6話. 消滅
遅くなりましたー!
気が向いた時にたまに書いてる感じなので(≧□≦;)
一番手が再び地面を蹴り、肉薄する。
最初の突進より速かったが……愛剣を手にした今では、俺の方が速い。
俺の愛剣、魔剣ブラックアイリスは使用者の空間把握能力、知覚能力を引き上げてくれる。
そのため、強く集中すれば攻撃を見切る事が出来る。応用すれば、動き出す前に回避に移る事さえ出来るのだ。
俺は相手の体勢、重心などを観察しながら、軽くバックステップする。
刹那、寸前まで俺の首があった空を剣が虚しく横切る。
「フォォオオ!!」
避けられたのが悔しいのか、一番手は憤りを混ぜた声色でけたたましく叫びながら、
矢継ぎ早に剣を振り始めた。
俺はその悉くを弾いて防ぎ、時に突きを織り交ぜて攻撃をする。
一発、もう一発と当てるうちに、一番手の動きが鈍ってきている。
どうやらきちんとダメージが蓄積されているようで、勢い任せの、雑な攻撃になっていた。
(どうやらもう一押しのようだな。………ん?)
剣を乱雑に振っていた一番手が、突然わずかに飛びのいた。
上段に、垂直に剣を構え―
「―――っ!?」
掲げられた剣が緑色の光を纏い、今までとは段違いの速さで振り下ろされた。
かろうじて見切る事が出来、すんでのところで回避した。本当にギリギリだった。
(あぶないな……隠し技があったのか)
今度は左へ水平に構え、水色に発光する。
先ほどと同系統の攻撃がくると判断し、左へ大きくジャンプ。
ほんのわずかに足先を掠めた気がしたが、致命傷は避けられた。
「直撃したらやばそうだな……痛っ」
大きく回避した反動で、最初に攻撃を受けた左肩が痛む。
思わず顔をしかめる。
「!」
緑色の光が見えたため、俺は咄嗟に前に転がる。
さっきまで俺が座っていた場所に剣が突き刺さり、地面がえぐれた。
「何っつー火力だ……てか、連続で使えるのかよ、そんな大技を」
俺は悪態をつきつつ回避に専念する。初見でひるんでしまったが、冷静になれば対処できない速さじゃない。まぁ速くなった事は変わらないけどな。
ふと、俺は妙案を思いついた。
イメージが重要なこの世界だ、もしかしたら真似できるのでは?
「こうやって……ふっ!」
横に構えて、剣に意識を集中し、先ほどの光景をイメージとして強く想像する。
想像したとおりに、意識に任せて剣を振るってみた。
俺の剣は、水色に発光しながら、相手の胴にクリーンヒットする。
「ヴォオオアア!!」
よし、できる!連発は……
俺は剣を切り返しながら同じイメージを投影する。
すると面白い事に再び水色に発光し、俺の剣が吸い込まれていく。
―幾度も繰り返すうちにわかった事がある。
発光する色は斬り方ごとに固定のようだ。
上から振りかぶると緑、水平に振りかぶると水色、突きのイメージは青のようだ。
一番手はすでに満身創痍であり、その攻撃はもはや脅威ではなくなっていた。
止めを刺すため俺は突きを繰り出す。――しかし、届かなかった。
「!?」
上から黒い何かが落ちてきて、防いだのだ。よくみると、人のようだ。
吸い込まれそうな漆黒のフーデットケープ。赤くて長い前髪。深紅色の布でおおわれていてその目は見えない。
その手に握られるのは真紅色の片手直剣。
そいつは俺を一瞥すると同時に姿が消えた。
「ヴォォグ!?」
一番手が突然悲鳴をあげた。背骨、胸骨を貫くように、真紅の剣が突き立っている。
「ヴォオオァァァァアアアアアア!!!」
ところどころノイズが混じったいびつな悲鳴をあげたとたん……一番手は赤い破片になった。
「……勝手に抜け出されたら困るンだよ。つーわけだ、お前達全員、いただくぜ」
「一体なにを……っ!」
するつもりだ、と聞くまもなく姿を消し、オブジェの方で待機していた魔物が全て、ほぼ同時に消滅した。
「次は、お前らだ!」
「キャァァァァ!」
「うわぁぁぁ!」
ハイアを初めとして、動けなくされていた仲間達が、次々と赤い破片となって消滅した。
「アハハハハァア!大漁だ、こりゃぁいいぜ」
そいつは、狂ったように笑いながら真紅の剣を掲げてそう呟く。
ゆっくりとこちらへ振り返り、耳障りな声で話しかけてくる。
「そう恐ぇ顔すンなよ……壊したくなるからよ。安心しろ、お前もすぐに往くんだよ」
なぜかはわからないが、こいつと対峙すると背筋が冷たくなる。
あまりにも自然に、恐怖を覚えている……?
「お前は、一体……?」
「そうだなぁ…冥土の土産に、生涯忘れらんねぇようになる呪いの名前をくれてやろう。俺は―」
そう呟きまた消えた。
不意に、体が熱いのか、冷たいのかわからなくなる。
なぜだ。なぜ俺の胸から真紅の剣が……ああそうか。勝ち目なんてないのか……
不意に耳元で囁かれる。いつまでも耳に残るような声で。
『破壊者だ』
直後、俺の体が消滅した。
第一章は以上です!
次回から、別の章に入ります。