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眠りの庭の夢幻姫  作者: みかげ
1章 邂逅
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第2話 訪れ

明らかに命を落としたはず_だった。

しかしどういうことか、考える事が出来た。つまり、まだ意思があることになる。

これが俗に言う魂だけの存在、ということだろうか。


俺は今、暗闇の中にたたずんでいる。

このまま、魂だけの状態が続くのだろうか。もしそうだとしたら退屈すぎる。


いったいどれだけの時間が経ったのか、それすらも分からないし、感じない_。


「どうなるんだよ、俺……」


「おい」


不安に駆られているなか、突如声が聞こえてきた。


「!?」


しかしもちろんこの場には自分以外誰もいない。

なんということだ。ついに幻聴まで聞こえるようになってしまったのか。


「おい、目を覚ませ!」


突如体に振動を感じ、俺は意識を呼び戻される。


「う……」


「お、起きたか!体、痛いところはないか?」


目を開けてまず目に入ったのは、体格のいい男……確か、飛行船で見かけたやつだ。

そこまで考えて、俺は朦朧としていた意識を切り替える。


「大丈夫だ。ところで他のみんなはどこだ?それに、ここは一体なんなんだ……?」


「俺以外には三人の無事を確認した。他のみんなを探すため、手分けして捜索している」


どうやら、四人が無事なようだ。俺を加えて五人。乗客はたしか、八人いた。


「うぉぉぉおいガートン!!残りの三人見つかったよーーーー!!」


「怪我はないみたいです!三人とも意識もはっきりとしています!」


ハイアと、もう一人小柄な少女が報告をしにきた。

どうやらこの男の名前はガートンらしい。


「お疲れさん、ハイア、メイラ」


「いやーびっくりしたよー!空がヴワァン!!て開いて、ドサ!っておちてっむぐっ!」


早口でまくし立てるメイラという少女の口をハイアが塞ぎ、言い換える。


「えっと……空に時空の切れ目みたいなものが出来てですね、そのなかから落ちてきたんですよ、三人とも」


そこまでいったところでメイラを解放する。


「ぶはっ!いきなりなにするのさ!」


メイラは涙目になりつつ怒りの声を上げる。


「あなたが説明すると、分かりにくいから。ごめんね」


「時空の切れ目か……となると、ここは元いた世界とは別の世界って可能性があるよな?」


時空に関する書物を父の書斎で読んだ事がある。

百年ほど前に発生したラグナロクは「魔物の大量発生」で、そのときも時空切断が発生したという記録が載っていた。その切れ目は魔界につながっていたという。


魔界とは限らないが、ここが別世界なのは間違いないだろう。


「そのとおりだ。ずいぶんと頭が切れるやつもいるものだな」


「「「!」」」


声の主は、聞き覚えのない声だった。

振り返ると、そびえ立つ奇妙なオブジェ……その上に、一人の少女が座っていた。


(いったいいつからそこに?……さっき見たときは誰もいなかったはず)


紫色の長い髪は蝶の髪留めでまとめられ、腰のあたりまで届いている。


「本当なのか?いきなり出てきて異世界だとか言われたところで、そんな簡単に信じられんぞ」


ガートンの言う事はもっともだ。だれだって「ここは異世界ですよ」などといわれても「そうですか」とはならないだろう。

……身をもって、経験しない限りは。


「それもそうか。そうだな……ではこうしようか」


そういって彼女は指を構え、高らかに指笛を吹き鳴らした。

どこまでも響いてゆきそうな甲高い音色。


「貴様、なにを……っ!」


彼女の指笛が木霊したあと、俺は周囲でうごめくただならぬ気配を感じていた。

(なんだこの……なにかとんでもないものが近づいているような感覚は?)


「何?この気配……」


どうやら、ハイアもこの気配を感じ取ったようだ。しかしガートンは気づいていないらしくあっけに取られている。


「さぁ、おでましだ」


「なんだと……」


俺は初めて目の当たりにする光景にただ驚愕した。


彼女の体は糸に引かれるような動きで、ゆっくりと……空中に浮かびあがった。


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